劇場公開日 2024年7月5日

「【”天井を突き破る。そして二人で新しい色を塗る。”今作は、母親亡き後に、12年振りに会った父娘の関係性が再構築していく過程を、センス溢れる色彩豊かな映像で描いた作品である。】」SCRAPPER スクラッパー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”天井を突き破る。そして二人で新しい色を塗る。”今作は、母親亡き後に、12年振りに会った父娘の関係性が再構築していく過程を、センス溢れる色彩豊かな映像で描いた作品である。】

2024年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

■病気で母親を失った12歳のジョージー(ローラ・キャンベル)は、母亡き後も伯父と同居していると児童相談所を欺き、親友のアリ(アリ・ウリズン)と自転車の窃盗を繰り返し日銭を稼いで独り暮らしを続けている。
 そこに、父と名乗るエミネムのように頭髪登頂部を白く染めたジェイソン(ハリス・ディキンソン)が突然現れ、強引にジョージーと同居を始める。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・序盤は12歳のジョージーのタフさが、観ていて切なくも面白い。
ー 近所の兄ちゃんと”会話”する中で”キーとなるワード”を録音しておいて、児童相談所からの電話に対応するシーン。”大丈夫だよ。””問題ないよ。””有難う。”ウーム、ジョージーやるなあ。-

・アリと自転車を窃盗する時にも、所有者が来た時には機転を利かせてキッチリ、対応する。クスクス。

■ジェイソンが突然現れた時も、半信半疑なのだが(そりゃ、そーだ。)徐々に距離を縮めていく二人の姿が、素敵である。
 駅のプラットフォームで、反対側のプラットフォームで話している男女の姿を見て、”アテレコゲーム”をする二人。可笑しい。
 ヤッパリ、父娘だからウマが合うんだろうなあ・・。

■沁みたシーン幾つか

 1.ジョージーが一人で部屋を掃除する際に、母がいた時のようにソファの位置を直すシーン。スマホに母親がソファで寛いでいる姿がキチンと入っているのである。
   そして、ジョージ―は時折スマホの中の生前の母の元気な姿を撮影した動画を見て、ひとり涙を流しているのである。
   強気で、しっかり者のジョージーだが、ヤッパリ12歳の女の子なんだよね。

 2.ジョージーが、ジェイソンと自転車窃盗をしている時に、警官に見つかり逃げるシーンからの、ジョージ―の携帯が無くなってしまい、夜になっても必死に探す姿。
   母親の元気な姿はスマホの中にしかないんだものなあ。

 3.ジェイソンが、ジョージーが住んでいるアパートの中の施錠された部屋の鍵をペンチで切って中に入ると、そこには自転車部品で作ったガラクタ自転車が天井に向けて走っている形に固定されていて、天井には”突き破る”と書いている文字が書いてある。
   母親は亡くなったら”空にいる。”と教えられていたジョージ―の母親に対する気持ちが表れているシーンなのである。

 4.ある日、ジェイソンが居なくなりジョージーは、母がジェイソンに遺したヴォイス・メールを聞くシーン。
   そして、ジェイソンを近所で見つけたジョージーは、彼から”俺は、未だ子供だったんだ・・。”と少し申し訳なさそうに、ジョージーに語るのである。
   だが、ジョージーは、彼の手を取り再び彼と家に戻り、二人で壁を黄色に塗って行くのである。

<今作は劇中に登場する、お洒落な服を着た黒人少年トリオや、ピンクの服を着た5人組の少女達がジョージーについて語るシーンも良いインパクトになっている、12年振りに会った父娘の関係性が再構築する過程をセンス溢れる映像で描いた作品なのである。>

<2024年8月17日 刈谷日劇にて観賞>

NOBU