「どうやってこうなったかは理解できないが、ともかく逞しすぎる12歳だなあと思った」SCRAPPER スクラッパー Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
どうやってこうなったかは理解できないが、ともかく逞しすぎる12歳だなあと思った
2024.7.8 字幕 アップリンク京都
2023年のイギリス映画(84分、PG12)
母を亡くした12歳の少女と、生まれてから一度も会っていない父親との再会を描くヒューマンドラマ
監督&脚本はシャーロット・リーガン
原題の『Scrapper』は「解体する人」が転じて「何かを壊して戦う人」と意味がある言葉
物語の舞台は、イギリスのライムス・アベニュー
母ヴィッキー(オリヴィア・ブレディ)を亡くしたばかりの12歳の少女ジョージー(ローラ・キャンベル)は、親族に嘘をついて、親戚と一緒に住んでいるという偽装工作を行っていた
それを知るのは友人のアリ(アリン・ウズン)だけで、彼女は近くの雑貨店の店員ジョシュ(Joshua Frater-Loughlin)に色んな言葉を喋らせて、それを音声データにまとめて、電話などを偽装していた
彼女はアリと共に路上にある自転車を盗んでは、ゼフ(Ambreen Razia)の店に持ち込んで、わずかなお金を得て生活をしていた
ある日、彼らの元に「父親」を名乗る男ジェイソン(ハリス・ディキンソン)が現れた
生まれてから一度もジョージーの元に来なかったジェイソン
ヴィッキーが死んだことを知らされて、ジョージーの元に来ることになった
親戚の電話に出て、それが間違いないことを知るジョージーだったが、育児放棄をしてきた人物を父親だと認めるのは時間を要していた
物語は、どこから見ても悪そうな大人を父親として認めるかというところが描かれていて、それでも生活のために頼らざるを得ない実情を描いていく
12歳にしては随分と手慣れた生活術だったが、彼女が1人で生きていくことを選ぶ理由は本編からは伝わってこない
親戚との関係が悪いというようなことはなく、彼女が為したいことが終わるまでは、現状を維持したいというのが本音なのだろう
それが秘密の部屋に作られていた天国に続く塔であり、彼女の自転車泥棒のもう一つの目的であることが仄めかされる
すでに天井まで届いているのだが、彼女は屋根をぶち破らない
それは、天国がないことを知っているからではなく、そこに行っても母に会えないことを理解しているからだと感じた
いずれにせよ、粗暴でわがままなジョージーは近隣住民の手に負えないのだが、アリ以外が関わりを持とうとしないのも不思議な感じがした
ジョージーが嘘をつき始めてどれくらい経っているのかはわからないのだが、おそらくは数週間も経っていないのだろう
葬式をどうしたとか、そこら辺はスルーされているので、あくまでも舞台装置としての「初対面の父との邂逅」から起こるものを仮定して描いているように思う
父もジョージーを授かったのがまだ子どもの頃だったというように、未熟な子どもが覚悟を持てずに親になりかけたのだろう
その先にあるものを夫婦が考えた結果の選択だと思うのだが、いささか意味不明に思えるのは仕方ないのかな、と感じた