「アポロ月面着陸は、リアル or フェイク?」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
アポロ月面着陸は、リアル or フェイク?
今日7月20日は、55年前の1969年に、アポロ11号が月面着陸に成功した日。その日に、この作品を鑑賞したというのも、何とも感慨深いものがある。当時、小学校3年生の自分は、日本時間の朝の5時過ぎに、その大イベントを観ようと、朝テレビの前で眠い目をこすりながら観た記憶がある。そして、その日の学校でも、先生が授業中に、そのニュース映像をみせてくれて、世界中が歓喜したのを覚えている。
この世紀のミッションが捏造かもしれないという、奇想天外な設定の本作。確かに、月面のアメリカ国旗や太陽光の角度がおかしい等、都市伝説のごとくそんな噂を耳にしたこともあった。しかし、子供心にアームストロングとオルドリンが、月面に降り立った姿をリアルタイムで観た者にとっては、フェイク映像でないと信じたい。
また当時は、米ソ冷戦時代の中で、宇宙開発事業においては、有人宇宙飛行をソ連が一歩リードしており、躍起となってアメリカもアポロ計画を進めていた時代。しかし、華やかなアポロ計画の裏では、ベトナム戦争が泥沼化し、打ち上げの失敗も続き、多額の金がかかるアポロ計画への反対意見も強まっていた。そんなアメリカの光と影が混在する時代背景が、本作の根底に流れている。
企業のPRマーケテイングであるケリーは、その腕を買われ、ニクソン大統領の側近・モ―から、NASAでアポロ計画の国家戦略としての広報活動を請け負う。宇宙開発でソ連に負けられないアメリカは、アポロ11号による月面着陸は、失敗が許されない成功必須のミッション。そこでモーは、ケリーに月面着陸のフェイク映像を撮って、それを全世界に公開するという極秘命令を告げる。
そんな中で、NASAで知り合ったアポロ計画推進の中心人物であるコールに魅かれ始めたケリーは、フェイク映像を知らないコールに対しての罪の意識に心が揺れ始める。果たして、私達が観た月面着陸の映像はリアルだったのか…、それともフェイクだったのか…?
主演には、最近はアクション映画で観ることが多くなっていたスカーレット・ヨハンソンが、美しさの中に過去を抱えたキャリアウーマンを演じ、当時のアメリカ最先端を行く女性像を映し出している。その相手役・コールには、こちらもアクションのイメージが強いマッチョマンのチャイニング・テイタムが演じている。そして、ケリーの上司のモ―役には、一癖も二癖もある顔立ちのウッディ・ハレルソンが務め、アクセントとなっている。
本作は、60年代のアメリカが色濃く反映されていて、懐かしさの中にも、月面着陸というエンタメ性とラブロマンス、そして、最後の騙し合いのオチの鮮やかさが兼ね備わった、おしゃれな古き良きアメリカ映画の面白さを感じた。個人的に、とても気に入った作品である。