「好きだから」恋を知らない僕たちは サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
好きだから
え、ちょちょ、ちょっとまって?
なにこれ、なんだこれ。面白い、面白すぎるぞ。これ、2024年下半期ベストまであるぞ!?
どうせよくある高校生のキャピキャピ恋愛映画だろうと舐めてかかったら、意外すぎる角度からの攻撃を真っ向から食らってしまい、完全ノックアウト。まさかこんな本格的なものが見れるなんて、誰が想像した???少女漫画原作とは到底考えにくい、胸が痛くなるほどどぎつく、リアルな恋模様。高校生が見たら恋愛するの辞めようかな...と思ってもおかしくないレベル。これホントすごいな...。
酒井麻衣監督。もうこの人には絶対的な信頼が確立された。どんな恋愛でも酒井監督特有の作風に落とし込み、ありがちな展開でも唯一無二の今まで見た事のない感動と興奮を味わせてくれる。恋愛映画を見てこれまで感じてこなかった感覚。巧みな演出力から成る映像美はもちろんのこと、若手キャストの魅力を引き出すのもお手の物で、人間味が溢れながらもキラキラと輝く登場人物は見ていて本当に楽しいし、羨ましくなる。
酒井監督が見えている世界は、私たちが普段見ている世界の一歩向こう側みたいな、現実味がありつつ、ファンタジックな世界観で思わず見とれてしまうものがある。百発百中。この監督の世界に心底酔いしれる。
なんの先入観もなしに、今持っているイメージのまま映画館に足を運んで欲しいのだけど、こういう高校生のラブコメ、少女漫画原作の映画が苦手な方にもう一押しするためにこれだけは言っとくと、この映画、確かに少女漫画らしいあまーいシーンはあるものの、我々が抱く少女漫画の常識をぶち壊す、ドロドロな人間関係が描かれる作品になっている。
恋愛となると周りのことが見えず、自分の幸せばかりに目がいってしまうのは当たり前のこと。現実は少女漫画のように上手くいくはずもなく、自分の好きな人が自分を振り向いてくれるとは限らないし、振り向いてくれたとしても本当に幸せになれるとは言いきれない。6人居て6人分の考え方、価値観、恋愛観。それらがじっくりと超丁寧に描かれているため、油断していたらとんでもないことになる。
同じ光景なのに、全く違う光景。そんな、前半と後半の対比も非常に上手く、ごく自然な形で心を高めてくれる。うう...感動しちゃうじゃないか...。
若手俳優を起用したことで個々の演技で気になる点は多く、セリフ言ってる感に違和感を感じてしまったけど、先生や親など余計な言葉をかける人物は全く存在せず、極限まで登場人物を絞って、みんなに焦点を当てながら物語を進めていくスタイルは、群青劇的な作品としてのあるべき姿だと思った。
まさかだったな...今でもこの映画が面白かった事実が信じられない。年間を通してもベスト10入りするほどの大傑作。ポスターとキャストから遠ざけちゃう人は多いだろうけど、ここは1つ、勇気を振り絞って是非とも見て頂きたい。エンドロール直前の音楽も最高に胸アツだった。あそこで終わるのもいい。すごくいい。好きが溢れていた。「恋は光」に出てくる、〈恋の定義〉と併せて考えると尚、面白い。
恐らく、毎年40本以上見ているであろう恋愛映画。ここに来て、こんな新鮮で未知な気持ちになれると思わなかった。酒井麻衣監督、最っ高!次回作で初のオリジナル脚本「チャチャ」が楽しみすぎるぜ...🤤