教皇選挙のレビュー・感想・評価
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教皇選挙の興味深い舞台裏
これまで教皇選挙(コンクラーベ)については、新しい教皇が決まるまでバチカンで煙が上ることぐらいしか知りませんでした(無知〜汗)。
ドナルドトランプとか、ローマカトリック教会とか、現在も世界の中心的シーンに存在する組織や人物について描く映画が、まさに同じ時代に世に出てくることはすごいことだと思いますが、この作品も時々ニュースになる教皇選挙の裏側の駆け引きを描いています(実際の舞台裏はどうなのでしょうね、、、)
権力闘争に終始するかと思われた選挙の最後のどんでん返しは、LGBTQの現代ならでは。信仰って、本来権力闘争とは無縁であって欲しいよね、そうでなければいけないよね、という感想です。
すごく気になったのは、主人公のローレンス枢機卿(レイフ•ファインズ)が、「(自分は)祈ることの意味が分からなくなった」(今後はバチカンでの職を辞して田舎暮らしをするつもり)というセリフ。
聖職者が祈る意味が分からなくなったらおしまいなのでは⁈(少なくとも、どうやってもその心境では教皇にはなれないのでは?)、と感じました。
ローレンス枢機卿が祈りの意味が分からなくなった理由をすごく知りたいと思いました(これだけで一つスピンオフ作品が出来るかも)。
本作で驚いたのは、これまで見慣れた俳優さんたちが自然に聖職者の役に馴染んでいること!
特にペリーニ枢機卿を演じたスタンリー・トゥッチさん!
「プラダを着た悪魔」で演じたファッション誌のアートディレクターはまさにハマり役でしたが、神父様役が似合い過ぎました!
これが文化というものなのかな、と思いました。どんなに現代的な役を演じていても、歴史ある聖職者の役にも簡単に変われてしまう。
もしかしたら自分も、江戸時代の農家だとか、武家の妻とか衣装を着れば馴染んでしまえるのかもしれません(その時代に自分と同じような顔をしていた人もいたでしょうし)。
西欧文化圏の俳優さんが何の違和感もなく、すっと神父様になれてしまうことに驚きました!
内向きの男性社会
コンクラーベといえば、外界から隔離された中で何日もかけて行われ、煙突から昇る煙の色で結果がわかる、という程度の知識。教皇の死から枢機卿たちによる投票の様子まで、全て再現ではないだろうが、厳に秘密とされているものを覗き見るような趣向がある。
亡き教皇の部屋の封印をはじめ、枢機卿たちの法服や帽子などの臙脂色が印象的。色使いや照明などの画作りが、マイケル・ナイマンを思わせる音楽と併せて、グリーナウェイの室内劇を思い起こさせる。
物語としては、票読み、足の引っ張り合い、さらには買収、スキャンダルと、まさしく選挙ならではの裏模様を描いている。冷静に見るとつくづく奇異に思えるのは、枢機卿たちが全員男性であること。内向きの男性社会の典型としてこの舞台を選んだのだろうか。女性たちは彼らに仕えるのみで、随分封建的に見えるが、その中でイザベラ・ロッセリーニの存在が強い印象を残す。
紆余曲折を経て新しい教皇が選出されるが、最後に彼の秘密も明らかにされて、そこでブツッと映画は終わる。果たしてこの後どうなるか、というのは、観客それぞれの現実世界に置き換えて考えてみて、ということなのだろう。
宗教とは何か、教会がどうあるべきか
おじさんたちの思惑
2024年。エドワード・ベルガー監督。ローマ教皇の死去に伴い、教皇選挙(コンクラーベ)を仕切ることになった主席枢機卿を主人公に、陰謀渦巻く選挙の内幕を描く。
候補者たちのわかりやすいキャラ設置と、わかりやすいトラブルの発生。こうなるほかないという展開が続いていくが、とにかく、レイフ・ファインズの顔面をこんなに眺めた映画はなかったというくらい大写しの画面が多い。システィーナ礼拝堂をはじめとする有名建築物が舞台なので、引きの画面を作りにくいという事情があるのかもしれない(周囲の景色を入れるとCGが増えるとか)。
選挙が進むにつれて教会への不信を深めてある決意に至りつつ、その決意が最後にはひっくり返される主人公。それだけでも組織に翻弄されるおじさんの物語なのに、ひっくり返された後に最後にもうひとつの驚きが待っている。
ラスト場面。教皇庁で働いているらしき若いシスター3人が楽しそうにおしゃべりしながら歩いていくのを、主人公が自室から眺めている。おじさんたちの思惑など世界の移り変わりの前ではまったくの無力なのだ。
神託
迷える子羊共が右往左往する。
ヴァチカンの教皇が逝去し、次なる教皇を決める為の選挙が行われる。主人公はその選挙を執り仕切る人物だ。かなり独特な選出方法で、候補者を決めず一斉に投票する。自らが相応しいと思える人物の名を書く。その票数が一定数を越えれば教皇として選出される。つまりは、一定数を超えなければ延々と投票が続くのだ。
神の存在を信じる者達としては、至極真っ当な方法のようにも思う。何の小細工もしなければ、決まりようがないようなシステムだ。
神のご意志が作用しそうな選挙方法に、人間が介入してくるからややこしくなるのは当たり前だ。
選挙を通して、欲深き人の業とヴァチカンの腐敗が描かれていく。
ある枢機卿が「我々は理想に仕える者で理想ではない。ただの人間だ。」とか何とか宣う。
何の言い訳なんだろうと思う。
そんな事も含め、聖職者と言えど、欲に塗れて当たり前で強欲だし、権力は欲しいし、女だって抱きたいしと…何なら聖職者って仮面を被ってる分、タチが悪い。神の御許の営業マン達はかなり優秀だけど、大多数が悪徳営業マンなのではなかろうか。
なので、有力候補者の醜聞が次から次へと出てくる。この辺の件は、罪のない人間などいないって断言してるようだ。
スキャンダルもそうだし、陰謀だって画策する。買収して票を集めるなんて普通だし、なんなら政府と繋がってる輩もいるっぽい。
欲望が蔓延してるとんだブラック企業なのだ!
でも、それでも神は見捨てない。
選挙期間中、教会は外界から遮断されるらしい。窓の振動から会話を読み取られる事もあると、異次元の用心深さを発揮する。
自分達しかいない閉ざされ独立した空間の中で、事は進むのだけど、物語が進むにつれこのありえないくらいの厳重さは、自分達の穢れを外に漏らさない為なんじゃないだろうかと思えてくる。
そんな閉塞的な空間がある事件によって壊される。無差別テロなのかな。外からの力で障壁は破壊される。偶然に奇跡を感じる人もいると思う。
全ては必然だも言う人も。
そんなタイミングで穴が空く。
コレを機に、外部の圧力に抵抗し宗教戦争の起こる寸前だと喚き散らす最有力な候補者。
…もはやキリストの教義からかけ離れてんじゃないかと思うんだけど、地位と金を得た人間は須く悪魔と同調してくんしゃないかと思う程だ。
そんな中、声が響く。
「戦争を知ってますか?誰と戦うつもりですか?」
とても澄んだ声だった。
「戦うべきは、我が身の内にあるものではないですか?」コレが言いたかったのかと術中に嵌められた。
この人はまた謎多き人物で…生前の教皇だけが知っている枢機卿である。
登場からずっと怪しい。
が、思わせぶりな発言も多く、ここまでリアリズムに徹してる作品で、まさかの神の化身なんて事はないだろうと、そんな疑惑をもつ眼差しをしてる。
そして投票が再開されるんだけど、その時、外から風が戦ぐ。閉鎖された空間に空いた風穴から穏やかな光た共に風が入ってきてるのだ。
見上げる一同が感じた事は同じだったのだろう。
腐敗し澱んだヴァチカンには新しい風が必要だ。
次の教皇に決まったのは、謎多き枢機卿その人だった。
教皇は名を改める習慣があるようで、その名は発音しにくい名前だったのだけど「ケツアルクァトル」に似た名前だった。なんか意味があんだろなあー。
主人公が教皇になった時は「ヨハネ」と名乗るつもりだったらしい。たぶん真逆の意味を持つのだろう。
漸く落ち着いた選挙だったが、また一悶着起きる。
主人公の補佐官がやたらに有能で、この彼のポジションも何か含むものがありそうで興味深い。
次の教皇にも問題視される要素がある、との事だった。
もうここに至ってちょっと笑えてくる。
「またか…w」と。
聖人君子なんて人は存在せんのだ。
彼の秘密は両性具有って代物だった。
そうきたか、と、寧ろ感心した。
コレ以上、神に仕える身の長として相応しい物などないんじゃないかと思われる。
彼は自身の体を神からの授かりものだと言い、外的手術によって作り替えて良いようなものではないとの結論に至ったようだ。
とてもとても説得力があった。
ラストカットは窓から外を見下ろす主人公だ。
その目には扉から出てくる3人少女が見える。
混乱に混乱を極めた選挙であり、世界の趨勢をも左右するような時間であったが、変わらず日常は和やかに育まれているって事なのだろうか。
その対比で、視野が狭くなっている自分達の滑稽さが際立つって感じなのかなぁ。
全然間接的なんだけど、神の存在の表現としてはドンピシャで、なんか教典のようにも思えた作品だった。
終始流れている重いBGMも良かったなぁ。
キリスト様って寛大だなぁー
『私たちは目に見えない存在ですが、』
どこまで現実に即しているのかはわかりませんが、正直ローマ教皇庁内やコンクラーベの仕組みについて詳細に描写されているのを見ているだけでも面白い。けれどアカデミー脚本賞を受賞しただけあって、ストーリーもすごく面白かったです。
個人的な話になるのですが、私はかつてミッション系の女子校に通っており、ミッション系女子校というものは基本的にシスターたちが主導権を持ち、彼女たちによって運営されるものでした。
なのにあの宗教の総本山ではシスターはメイド程度の扱いでしかなく、何の決定権も持たないんだということにちょっとショックを受けながら見ていたんですが、そこにあのオチが来たので、あえてそういう描き方にしていたんだなと。
昨今の世界情勢的に、教会内でリベラル派と位置付けられる人たちがもがきながらも必死に理想を貫こうとする姿には心動かされました。
キリスト教福音派と呼ばれる勢力が米国政治をポピュリズムに導き、世界中が排外主義に動いている時代に、カトリックの総本山まで寛容さを失ったらまさに地獄がやってくるでしょうし。
世界が最後の一線を踏みとどまるためには、『確信』を持たないがための不安定さや不安の中を生きることを受け入れる勇気が必要なのかもしれないと感じました。
宗教的理解がある程度必要
争論点は回避する次第
観客は年輩者多い。
舞台は法王庁であの枢機卿の赤い帽子が可愛らしい。法衣、衛兵、天地創造の天井と豪華で見応えある。しかし法王をはじめ住居空間はアパート並に陳腐で対照的。
鑑賞後に思った事は逝った法皇の器の大きさ、感銘を受けた。誰も信じず、野心家を排除、管理官を手放さず、秘密裏に枢機卿を置き、死期に備え手を尽くす。
信仰心と知性と政治性の同居した法皇は偉大だっただろうな、と。
何度も投票する中で候補者の資質が顕になっていく。そんな閉鎖空間を破るように、まるで天啓の様なタイミングで爆弾が弾け、次期法皇が形を表す見事さ。
管理官レナードは前法皇の「爆弾」を胸に収めながら亀を抱き、修道女は軽やかに歩く。
man propose god dispose.天の配剤と落着
性に纏わる論点は論争の中でも回避、最後まで修道女の存在は添物的で。興行的には之が限界だからね。。。
静かな熱さのお仕事映画
おじさんキャラ続出の対策としてメモしておくと…
映画館って眠くなりますよね、よほど娯楽に振り切った作品でない限り…
心配していましたが、中盤にちょっと意識が遠のいたのみで、最後まできちんと見ることが出来ました
冒頭はローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)以外の、おじさん達の顔と名前にひたすら翻弄されます。家で視聴していたら、メモ取りたいほどです
ベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ:「プラダを着た悪魔」)
トランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)
アディエミ枢機卿は、黒人なので見分けつきやすい
デデスコ枢機卿、イタリア人の洒落たおじさん
ベニテス枢機卿は佇まいが独特なので、これも見分けつきやすい
まぁこの6人がストーリー上メインキャラクターなので、ここを押さえたら何とかなる
予告編も事前に視聴していたので、ド~ン!って来るシーン、まだ来ないなぁと思った途端来た。ホントにそう思ったら来た。それでもきっちり驚かされた
教皇が急死したことで始まる、枢機卿だけで密室に集まって、次の教皇を互選で決めるだけのストーリー
でも秘められたバチカン内部のような美術装飾と、高位の聖職の方々の生活が日々どんなことをしているのか盗み見るスリルも楽しく
紅一点のイザベラ・ロッセリーニを評価する意見が多く、私も同意します。無駄な装飾を全て落としても、彼女の誇り高さが輝いていました
口コミが良いせいか、そこそこお客さんがいました
オチもそんなにビックリするほどではないけれど、まぁ驚かされました
権力欲にまみれた姿が人間くさい
教皇選挙(コンクラーベ)の存在は知っていたが、詳細は知らない状態で鑑賞。スマホやタブレットを取り上げる等、隔離の厳しさがここまでとは思っていなかった。情報社会に対応しているのも興味深い。
個人的には無宗教だし、教会という存在全般を好きではない立場で観ると、おじさんたちの権力争いを楽しむしかない。聖職者然としながら権力欲にまみれた姿を見ると、彼らも人間だよなと感じる。そして、教会では同性愛を認めないから、枢機卿同士の愛を公にはできないという悲しさも感じる映画だった。なかなか奥深い。
決まった得票数がないと再投票となるため、投票の動機が「この人にしたい」から「あいつよりはマシ」という意識に変化していくのが面白い。そんな流れから、当初感じていたもしかしたら?と予想していた展開になっていく。それはある程度受け入れられる範囲。でも、最後は予想していなかったラストが待っていた。これは確かに驚いた。
皆、神への信仰は揺るぎないのに、教会に対しては思うところがあったりするのが妙にリアル。伏線の回収がほのかだったり、動きとしては地味だったり、登場人物の心情がわかりやすいわけではない。でも人間ドラマとしての見ごたえは十分だった。
個人的には、予告編で見た天井が爆破するシーンが劇中のリアルな出来事だったことが一番驚いた。あの流れであの爆発、彼からすると、あれは神を感じてしまう瞬間だったのだろう。
たしかに面白かったが、そこまで高い点数にはしなかった。中盤若干退屈したから。好みの問題でもある。
選挙でこんなに面白くなるの!?
衝撃、そして沈黙
LGBTQのカトリック信徒の視点から
私自身、LGBTQのカトリック信徒なのですが、その視点から見てとても面白かったです。こういう舞台設定なので当たり前なのですが、作品中盤まで、主な登場人物がほぼ高齢男性(枢機卿)のみで描かれます。その対比として、枢機卿の食事を作る人、そのための食器を確認する人は、女性のみ。聖職者は男性しかなれないという厳格なカトリックの教えは頭では理解しているものの、やはり「なぜ教皇や司祭は男性しかなれないんだろう」とスクリーンを見ながらぼんやり考えていました。でもまさか、その疑問が最後に回収されるとは予想していなかったです。
現実的には、史上最もリベラルなフランシスコ教皇でさえ、(おそらく保守派への配慮ゆえ)同性愛を公式には認めることはありませんでした。そのバチカンのトップにセクシュアルマイノリティの人物が就く──はるか未来の話かもしれませんが、映画というエンターテイメント作品ならではのストーリーとして、当事者である自分はとても勇気づけられました。
バチカン、こんな風に変わってほしい!
幾つになっても権力は魅力で魔力なのか。
めちゃ面白かった!!
それぞれの思惑と良心と信仰に揺れ動く、偉い人達(もうこの言葉が一番しっくりくる)の心理描写に、音楽がまたうまいこと乗るので、すごーくドキドキしながら観たわ。
考え方の違いで、それぞれを応援する派閥も生まれるのはどんな世界でも同じだけど、宗教家だから何一つ悪な所はないというわけじゃない。
なんかそうだよな、この人たちだって人間だよな、しかもお爺ちゃんだし今までの人生全ての考えの集大成期だもんな、そりゃもう癖強だし頑固だし思い込み激しいし人の話聞かないし、うん、そりゃそうだよな、と納得しながら観たわ。
そのお爺ちゃん達の表向き上品に進む権力争いの中、絶妙に挟み込まれる伏線がまた良い。
少しずつ感じる違和感と疑問がざーっと解かれるラストは圧巻。
(ちょっと途中から読めたけど。でもそれでも面白かったからいいの。)
後音楽が本当良かった。
重厚でドラマチックで没入感に一役買ったと思う。
予測不能のラストに感動
アカデミー脚色賞と言う事はオリジナルがあるのかなと思ったら原作小説があるんですね。
コンクラーベはダヴィンチコードシリーズの「天使と悪魔」で知りましたが僕のような無神論者とは違ってキリスト教徒にとっては大変なことなんだろうし、この映画の見方もだいぶ変わってくるのでしょう。とはいえしっかりとミステリー仕立てのエンターテイメントに仕上がっているので、挫折することなく見ることができます。
ローマ教皇ともなれば政治家どころではない清廉潔白さが求められるしどんな小さなスキャンダルもあってはならない。もしトラなんてもってのほか。でもこの選挙って立候補制ではないんですね。で、全枢機卿が集まってるはずなんだけど日本人の姿は見えなかったですね(日本にも枢機卿はいます)来てなかっただけ?
退屈な映画なのかなと思っていたらとんでもない。画面から来る圧に圧倒されて片時も目を離せない素晴らしい映画。予測不能のラストに感動させられました。
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