劇場公開日 2025年3月20日

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「インノケンティウスの名前の意味するもの」教皇選挙 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 インノケンティウスの名前の意味するもの

2025年8月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

教皇選挙
2025年日本公開

米国公開は2024年10月25日でした
そして米国大統領選挙は2024年11月5日でした

俗世界の最高権力者の選挙に、本作の公開日程をぶつけるというところに、本作の製作意図が透けて見えていると思います
この聖界の最高権力者を選ぶ映画で、俗界の最高権力者を選ぶ時、その選択が正しいことなのかをアメリカ国民に今一度自らに問うて欲しいということだったと思います

カトリック教会のような古く長い歴史を誇るところなら、伝統から一歩も外れないことが金科玉条かと思いきや、時代や世の中の考え方の進歩に応じて教会の考え方もあわせて改革していくことが必要で重要視されています
それがあったからこそ、中世から近代、現代へと人類社会は進歩することができたのです
教皇の有力候補には、色々な人物がいます
そんな進歩に批判的なもの、教皇に相応しからぬものもいます
権力闘争ですから、これは戦争だというものもいます
やがて何度目かの投票の時に奇跡が起こります
あるいは神の怒りだったのかもしれません
狂信的イスラム教徒の自爆事件が近くで起きたのです
宗教戦争だ!と主張する有力候補
それを冷静に諌める別候補
誰も存在を知らなかった人物でした
それで、一気に選挙の形勢が変わり新教皇が決まります
新教皇は名前をどうするか問われてこう名乗ると答えます「インノケンティウス」と
その名前を聞いて、枢機卿達は驚き息を呑みます
教皇の名前はその名前で教皇がどのような教皇になろうと考えているのかの抱負を示すものだからです
その名、インノケンティウス3世は、12世紀末から13世紀初頭にかけての第176代ローマ教皇の
ことです

教皇権全盛期時代の教皇で、西欧諸国の政治に介入したことで有名です
西欧諸国に対して王権より教皇権が優位である事を示した教皇です
つまりヨハネとかの当たり障りのない教皇名とは全く違う、教会は現実政治に介入していくとの決意を示している名前だったからです

いつまでも続き終わらないウクライナ戦争、カザ紛争、イランへの12日間戦争のように 俗界では中世への逆戻りを志向するような指導者が現れて力をもちつつあります

本作は聖界でフィクションであっても人類社会がより進歩する方向に進む方向に教皇が動き、俗界に介入してでも、中世へ逆戻りする動きを押し止めて欲しいとの願いがテーマであったと思いました

現実では1月にトランプ大統領が就任し、4月には前教皇の葬儀がおこなわれました
世界各国の首脳も揃って参列しました
もちろん葬儀です黒いスーツで参列を教会から求められます
なのにトランプ大統領は青いスーツで参列しました
そして席次を最前列に変更させました
つまりカトリック教会の権威より、自身が下であるとは認めないと公然と主張したのです

現実はフィクションより強烈だったのでした

自分はキリスト教徒ではありません
しかし、天をも恐れぬ傍若無人のふるまいは、いつか神の怒りに触れるのではと思い、それが恐ろしい結果に至るのではと恐れてしまうのです

あき240