「「誰」と戦うのか」教皇選挙 マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
「誰」と戦うのか
教皇選挙(Conclave)
世界人口の17%
14億の信徒がいるカトリック教会の
最高位聖職者・教皇を決める選挙
バチカン市国の元首も兼任するため
まさしく「選挙」
世界各国の生前教皇から任命された
枢機卿を集め外界からシャットダウンし
2/3の票を得て決まるまで延々投票が
続けられる「根比べ」である
投票を行うシスティーナ礼拝堂の
煙突から決まらなければ黒
決まれば白の煙を出すのが
有名な風習となっている
・・をテーマにした今作
さすがに観る機会を逃したかと
まだやってるかなと思って
探したらあったので観賞
どうだったか
非常に面白かった
レイフ・ファインズの怪演は折り紙付き
とはいえ公開期間中にまさかの
リアル教皇の逝去でリアルコンクラーベが
始まってしまったのは驚きだったが
(なんでも本職の枢機卿もこの映画を
予習で観たとか)
世相と絡め閉鎖空間で起こる策謀の嵐
映画の題材に十分なものでした
心臓発作で急逝した教皇
死に目に会えなかった主席枢機卿
ローレンスは悲しみに暮れるも
教皇選挙を取り仕切ることになる
ローレンスは重責のプレッシャー
のほか日々洗練した教えを説くはずの
教会への疑念が晴れずこの役を終えたら
全ての任を降りるつもりでいた
次期教皇候補には様々な思想の者
①テデスコ(イタリア)
イタリア出身でローマ法王は
地元民が相応しいと主張
イスラムらとも戦うべきというタカ派
(庵野秀明にしか見えない)
②トランブレ(カナダ)
教皇の最期の言葉を聞き
自分が教皇にふさわしいと言われた
と主張するが別からは
選挙の買収工作疑惑の
報告書をもみ消したとの噂も
③アデイエミ(ナイジェリア)
アフリカ系教皇を目指すが
かつて自身の子を身ごもった
シスターが現れスキャンダルに
④ベリーニ(アメリカ)
ローレンスとも親しい
アメリカの今っぽい
コテコテのリベラル派で
当然庵野は大嫌いだが
人気はイマイチでやる気もない
⑤ベニテス(カブール)
戦地で人道支援の場に立ち
実は教皇から枢機卿の任命を
受けていたメキシコ系の人物
滑りこみで選挙に立候補
といった候補が挙がる
ローレンスは策謀渦巻く
選挙開始の冒頭にアドリブで
「あらかじめ"決まっている事"などない」
というニュアンスの演説で
公平な投票が行うよう
釘を刺しに行くがこれが
ローレンスも教皇の座を狙っている
と受け取られてしまう・・
面白いのは間髪入れず
毎日毎日決まるまで選挙をすること
その間にスキャンダルの暴露
裏情報の錯綜
外界ではイスラム系の爆弾テロ
真実か捏造かはわからないが
全ては淡々と繰り返される
投票の票数で流動的に変わっていく
とこの「こういうものだ」という
画面の説得力
混迷する世の中をどう導くのか
そんな教会のあるべき役割を
わきまえず枢機卿達は言いたい放題
この映画は枢機卿といえど人間
タバコもやるし酒も飲む
という部分を描写します
葉巻吸う庵野はなんか笑ってしまいます
(誇張はだいぶあるでしょうけどね映画だし)
ただまあなんだかんだ密室内の
淡々とした展開で終わっていくのかと
思っていたので
終盤のまさかの展開は( ゚д゚)
となってしまいました
映画的で実にうまい
やりすぎるくらいがいい
印象的だったのはベニテスの演説
「イスラムと戦うって誰と戦うんですか?」
世の中の争いごと大体そうじゃないですか
リベラルとタカ派
キリスト教とイスラム
きのこの山とたけのこの里
思想に駆られて人間が争う
思想ったってその人間の根源的なもんじゃなく
だいたいがただのバイアスをあたかも
今自分は目覚めたかのように錯覚し
必死に争いをさせられている
だけではないでしょうか
だから他人の誹謗中傷とか平気でやる
非難されると皆やってることだと開き直る
信教以前の問題ですね
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