「狭くて広い視野を持つ傑作にしてエンタメ映画」教皇選挙 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
狭くて広い視野を持つ傑作にしてエンタメ映画
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ローマ教皇の死去に伴い、世界各地から次期教皇候補100人超がバチカンに集結し、コンクラーベ=教皇選挙が執り行われることになる。これまでも教皇選挙が物語のきっかけになる映画は何作かあったけれど、本作は選挙ものそのの深層に切り込んでいる点が目新しい。それは、亡くなった教皇の指から印章の偽造を防ぐために"漁師の指輪"と呼ばれる指輪が外され、破棄されたり、投票所になるシスティーナ礼拝堂のシャッターが閉められ、投票権を持つ枢機卿たちは特別室に隔離されたりと、描かれるディテールの細かさにまず、目を奪われる。
やがて次々と明らかになる有力候補者たちの耳を疑うようなスキャンダルが、レイフ・ファインズ演じる選挙管理人、ローレンス枢機卿の頭を悩ます様子は、同情を超えて徐々に笑いを誘うことになる。何とか事を丸く収めたい枢機卿の願いとは裏腹に、事態はとんでもない方向へ舵を切るのである。おかげでファインズの額の皺が徐々に深くなっていくのである。
バチカンという幽閉された空間の中に、人間の嫉妬心や猜疑心、崩れ去ったモラル、そして、戦争やジェンダー問題まで取り込んだ映画は、狭くて広い視野を持った傑作。何より、エンタメとして推薦できる1作だ。
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