「保守vs多様性」教皇選挙 かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
保守vs多様性
こんなことを書くと「またかよ」と叱られそうなのだが、2024年に公開された○○賞狙いの映画の多くが、いかにトランプvsハリスのアメリカ大統領選挙に注目していたかがよくわかる。くしくも現在病状悪化で危篤状態が続いている、バリバリのグローバリスト=フランシスコ現ローマ教皇をモデルにしているようにも思えるが、本作は間違いなく“コンクラーベ”の姿を借りた、(マスゴミがなぜか極右と形容する)保守とグローバリズム(多様性)こそ正義と“確信”しているリベラルの争いを描いている1本だ。
聞けばこのフランシスコ教皇、DSべったりのグローバリストであり、2020年のアメリカ大統領選挙でもめた際も文句タラタラのトランプに対し、コロナ禍を理由に早急に(バイデン勝利の)結果を受け入れるべきとのコメントを残しており、どちら側なのかは火を見るより明らかだ。本作においてそんなリベラル派代表の枢機卿を演じているのがフランス人枢機卿ベリーニ(スタンリー・トゥッチ)であり、そのベリーニおしの主人公ローレンス主席枢機卿(レイフ・ファインズ)なのだ。
序盤はアフリカ系の枢機卿がトップ得票率を稼いでいたが、性犯罪スキャンダルが発覚してリタイヤ。それを画策したことがバレた野心家のトランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)も教皇レースから脱落する。ベリーニはどうも政治家から買収されたようで教皇になる気などまったくなく、コンクラーベをしきっているローレンス主席枢機卿とイタリア人保守派枢機卿テデスコの一騎打ちになりそうな展開へ。そこに現れた意外な人物....
派手なアクションもないけれど、120分飽きずにみせるドイツ人監督エドワード・ベルガーの実力は本物だろう。私は前々作の『ぼくらの家路』を拝見しているのだが、ワン・シチュエーションながら濃密に見せる技術に長けた監督さんのような気がする。本作のすべてのショットが、バチカンのシスティーナ礼拝堂(多分セット)とそれに隣接した宿泊施設のみで撮られており、無駄な製作費をかけていないDOGEも納得の緊縮予算作品なのである。
バチカンの近くで起きたテロ事件を引き合いに出して、「お前ら(リベラル)があんな奴ら(移民)を国内に大勢いれたりするからこうなるんだ!」と吠えるテデスコはまるでトランプやヴァンスを見ているかのようで、そのテデスコに「恥を知れ!」と逆ギレするベリーニなのだがどうも迫力に欠けている。現実世界の選挙が保守優勢に傾いていることを既に知っている我々が観ると、ベリーニやローレンス、そしてダークホース○○○○の演説はやはり綺麗事を並べ立てているようにしか見えないからである。
保守もリベラルもお互いやり過ぎるとウクライナやガザのような戦争になるわけで、ほどよいバランスを保っているのがおそらく“平和”という、人間が最も心地よいと思う状況なのだろう。しかし、インフレやデフレの際の金利や国債発行の適正値同様、どこが“ほどよいバランス”なのか正確なところは誰にもわからない。マスゴミが自陣に有利な統計値を捏造しても何のおとがめもない現代社会において、我々はただ“神の見えざる手”にすがるしかないのだろう。