「確信は罪」教皇選挙 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
確信は罪
それは進化を止め、退化させる。祈っても祈っても祈りは届かない、教会(組織)の腐敗。そんな絶対的男性社会の中で、(未だに!!)何者でもない女性という存在。従来の体制や社会通念にも、疑念に目を向けて改革することの大切さ。でなければ、神が創り給うた人間が人間である意味がない。自分の内側に目を向けて、絶えずこれでいいのか?現実に敗れて妥協していないか?と自問しながら、よりよい自分になるために歩みを止めず進むべきだ。
この思惑や陰謀渦巻く知略戦が展開される密室劇(※厳密には違う)ミステリーで、主人公ローレンスは悩み葛藤する。同じ展開が繰り返されては(一人目の罪が決して許せない!!)、疲れた顔のレイフ・ファインズが、益々疲れて果てていくコントみたい…という冗談はさておき、子供の頃に観たラングドン教授シリーズ『天使と悪魔』で存在を知って、興味をそそられたコンクラーベというニッチな題材を描きながら、現代社会・世界を映し出すような力作になっていて、見応え十分だった。
女性、多様性。今年は『ノー・アザー・ランド』に『ブルータリスト』の人種間や終わることのない宗教対立・戦争、『エミリア・ペレス』の性転換、そしてアカデミー賞を圧勝した『ANORA』のセックスワーカーという女性性と、今の社会を映し出すテーマや要素を含んだ作品が並んだラインナップだったと思う。そのいずれも米大統領選挙を待たずに製作され、本国や映画賞では公開された作品ばかりだろうが、トランプ大統領誕生によって、予見していたかのように一種の必然性をもってこの暗い時代と共鳴するようだ。
「私は教皇を選出する」― 監督エドワード・ベルガー ✕ 脚本ピーター・ストローハン ✕ 原作ロバート・ハリス = 恐ろしいほど手際よく、どこか緊張の糸が張り詰めるように美しい撮影によるバチボコにキマった画と編集、素晴らしい音楽によって語られる本作は、今の時代に間違いなく必要だ!! キャストもスタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、そしてイザベラ・ロッセリーニと錚々たる重鎮が顔を揃えて、スリリングな共演・演技対決を披露してくれる。
勝手に関連作品『2人のローマ教皇』『ダウト』