アプレンティス ドナルド・トランプの創り方のレビュー・感想・評価
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実業家としてのトランプの、何を描きたかったのかがよく分からない
トランプに似ているというイメージのなかったセバスチャン・スタンだが、特徴的な口元をうまく再現していて、そのうちトランプ本人に見えてくるのだから、やはり熱演と言って良いのだろう。
内容的には、トランプと、彼に影響を及ぼした弁護士との関係が描かれているのだが、確かに、弁護士は、成功するための三原則なるものを教示しているものの、それで、トランプが、純粋な若者から「怪物」に変身したのだとはとても思えない。
攻撃的で、自分の非を認めす、勝つことに執着する実業家なんて、それこそ五万といるだろうし、生き馬の目を抜く実業界では、そういうキャラクターこそ求められるに違いないと、逆に納得してしまった。
トランプがのし上がっていく手口にしても、相手の弱みにつけ込んで脅迫し、人種差別の訴訟を取り下げさせたり、ホテル建設に伴う税金を免除させたのは、あくまでも弁護士の方で、トランプ本人があくどいことをした訳ではない。
あるいは、積極的な不動産事業の展開で資金繰りが苦しくなったり、結婚生活に行き詰まったり、脂肪の吸引や薄毛対策の手術を受けたりはするものの、それで、トランプの人格に大きな問題があるとも思えない。
むしろ、エイズに罹患した弁護士を、一度は切り捨てようとしたものの、最後は、死期の迫った彼を自宅に招いて、感謝の気持ちを伝えるところなどは、トランプが「善い人」に思えてしまった。
結局、実業家としてのトランプの出自は分かったものの、そんな彼の何を描きたかったのかは、最後までよく分からなかった。
トランプが、国民的な人気を獲得する契機となったリアリティ番組への出演のエピソードは描かれないし、自らが政治家になるよりも、金を渡して政治家を動かした方が良いと考えていたトランプが、どうして大統領になろうと思ったのかも分からずじまいで、観終わった後には、大きな物足りなさが残った。
歴史を知っているとより楽しめる
来る1/20に米国史上2人目、クリーブランド*大統領以来132年ぶりとなる復活大統領となるドナルド・トランプ。
*日本製鐵とUSスチールの買収に介入しているクリーブランド・クリフスの前者は地名だが、由来はクリーブランド大統領の親戚筋の先祖で独立戦争時の准将(後に将軍)に因む。
最初は今のトランプとは雰囲気も違うし、配役のミスマッチ?と思いますが、時間の経過と共に現実のトランプに近づいていく事に驚かされます。
インタビューで特殊メイクなどに極力頼らず、過去のトランプ氏のインタビュー映像などを研究して演技でカバーしたというから役者の凄さを感じます。
また師であるロイを抑えて、変貌…は見どころの一つ。
また個人的には父の会社に就職してトランプ・オーガナイゼーションの副社長という一方で仕事は家賃の取り立て(集金)で住民たちから嫌がらせを受けたりするシーン。まさにアプレンティス(見習い)時代といった所。
日本ではヒラリー・クリントンとの2016年の大統領選挙以降の事は報じられますが、NYの不動産王や資産家、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(BTTF,1985)の悪役ビフ・タフネンのモデルになった人物というイメージでしょうか。
米国では本作と同名のバラエティー番組『The Apprentice』(2004-2017)は米国版『マネーの虎』。BTTFでもFAXで登場する"You're Fired"(お前はクビだ)をトランプ氏に言わせる等のパロディを知っていると本作はより楽しめると思います。
特にBTTF Part2は必見でしょう。外観から内装、あの階段まで本当によく参考にしています。
本作の邦題は上記のイメージが十分にない日本向けに副題付きで描かれています。
米国やNYの時代背景、バックグラウンドの知識がないと感慨もなく、勝つために手段を選ばないエグい話に思えるかもしれません。
しかし本作のタイトルを元々の『アプレンティス』にこだわりたかった担当者の気持ちはわからないではありませんが、同番組が定着していない日本ではタイトル詐欺ではありませんが『ロイ・コーン ドナルド・トランプを創った男』としていたら評価はもっと高かったのではと個人的には思います。
作中にはドラッグ、乱交パーティやゲイのセックス、トランプの不倫や情事などが度々出てきます。
またトランプの兄のアルコール依存、トランプ自身のゲロを吐くシーン、脅迫、脂肪吸引や頭皮の薄さを頭を開いて皮膚を繋ぎ目立たなくする手術による血や肉、骨などのかなり露骨な表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
本作を鑑賞後に個人的に思ったのはドナルド・トランプが大統領になったのは必然的ということ。本人は「全くのデタラメ」と公開を握り潰そうとしましたが、それが殊更リアリティを感じさせるプロレスであると思わせます。
米国という世界大戦以後の覇権国家で、民主主義(共和主義)の極地とも呼ばれる国の勝者には、裁判や訴訟さえ握り潰せる…まるで大統領選挙の勝者総取り(Winner takes all)を政治やビジネスでもやっているような、米国の底堅さというか"強欲を正当化"する強さの根源を垣間見た気がします(それが日本や先進国で同じく社会的に評価されるかは別問題ですが)
映画作品の様な人生
めちゃくちゃ面白かった。トランプ本人が制作に関わってるわけではないからどこまで本質的なものを表現してるかは分からないが、映画作品の様な人物が出来上がる過程がかなり見応えある。
まぁある程度トランプを追ってるとこの作品をみて特段驚く事はなく納得する展開が続くのが心地よい。トランプのエゴ、突き詰めた利己主義、目標を成し遂げる執念は良くも悪くも興味をそそらされる。
まぁこの作品のトランプはまだ序章に過ぎず続きも作品化して欲しいものだ。ロイコーンもまたある種魅力的でロイをもっと知りたくさせてくれる作品。
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