アプレンティス ドナルド・トランプの創り方のレビュー・感想・評価
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トランプいっちょあがり!
ロイ・コーンのキャラがあまりに強烈で、序盤はトランプが食われ気味。
若かりし頃のトランプは少々頼りないが、
ロイから人を貶めてマウントを取る術を学び、
ラストでは、しっかりと尊大な今のトランプになっていて、ある意味安心した。
イヴァンカへのDV描写が怖い。現夫人は大丈夫なのだろうかと心配になる。
植毛手術をあえてグロテスクに、生々しく描いていたのは、
あの場面で“人間の心を失った”という演出だったのだろうか。
もしトランプ本人がこれを観たら、激怒するに違いない。
こうした映画を作る自由が守られているアメリカであってほしいと、改めて思う。
こんなトランプに誰がした?
まさか当選するとは思わなかった…。
またしても初の女性大統領誕生ならず。
アメリカはよほど“アメリカ・ファースト”を掲げる傲慢男が好きなのか、それともただのバカなのか。
今年の一月から始まった第二次トランプ政権。
世界中の問題に世直しマンの如く乱入したり、世界中大混乱のトランプ関税…。早速、やりたい放題。
イランの核施設を爆撃した際、それを広島・長崎の原爆投下になぞらえて正当化しようとした発言にドン引き…。
少なくとも後3年半はコイツの独裁が続くのか…。
こんなトランプを誰が選んだ?
こんなトランプに誰がした?
それは若き頃、ある弁護士との出会い…。
1970年代。20代のドナルド・トランプは不動産王の父フレッドの下、実業家のキャリアをスタート。
が、父が政府に訴えられ、破産寸前。仕事も行き詰まり、父からも無能者扱いされ、崖っぷちにいた。
そんな時、財政界の大物が集う高級クラブで出会ったのが、弁護士ロイ・コーンだった…。
ロイ・コーン。本作を見るまで知らなかったが、超有名らしい。
たくさんの顧客を抱えるやり手。時のニクソン大統領とも親しく、財政界やマフィアのボスとも繋がりが。
裁判では負け知らず。勝つ為にはどんな手段も厭わない。
性格は鋭く、冷徹。無能、役立たず、価値ナシは容赦なく切り捨て。…
そう。有名なのはその悪名高さ。白を黒、黒を白にもする悪徳弁護士であった…!
初めて会った時もロイはトランプにシビアな態度。
圧倒的オーラに萎縮する若きトランプ。あのトランプが…!
トランプとて最初から“トランプ”ではなかった。最初はまあ一応、実業家としての成功を夢見る“普通”の青年だった。我々一般人から見れば、傲慢さや俺様はちらつくが…。
ロイのお眼鏡に適う人はそういない。
が、何故かトランプは気に入られ、その時抱えていた父の問題を強引な手腕であっさり解決。
ロイに心酔するトランプ。顧問弁護士になって貰う。
この若造が気に入ったロイ。たくさんの顧客の中でも特別な顧客に。
もしこれが成長株の若者とクリーンな弁護士だったらその出会いに感謝だが、悪徳弁護士と後の…。
ここから誕生してしまったのだ…。
とは言え、アンチ・サクセスストーリーとしては面白い。
ロイはトランプに、身の振る舞い、トーク、着る服まで指南。
さらに、“勝つ為の3つのルール”を伝授。
一つ、攻撃。
一つ、非を認めるな。
一つ、勝利を主張し続けろ。
若造を仕立て上げていく。
トランプを。プロデュース!
サバイバルな世界をタフに生き抜く為、言ってる事は分からなくもないが…、いずれも強引・横暴な事ばかり。時には違法も。
ある時、ロイは盗聴を。それを目撃し、違法じゃないのかと危惧するトランプにロイは、それがどうした?
ロイは堂々と、取るに足らん多少の法律など守る必要ない。
真実はいつも一つなんて妄想。真実はいつだってねじ曲げられる。某名探偵の信念を一蹴。
差別主義者。黒人嫌い。その他の人種も。
ロイの第一は、アメリカ。アメリカを愛している。アメリカこそ私の一番の顧客だ。アメリカの為なら何でもする。
移民への強固な姿勢。アメリカ・ファースト…。
トランプの思想にも影響を及ぼしていたとは…。
若き実業家とやり手の悪徳弁護士。鬼に金棒。ビジネス上のパートナー関係を超えた信頼と友情を育むが、その終わりは呆気なく早かった…。
すっかり時代の寵児となったトランプ。
豪華ホテル、トランプタワー、カジノ…。その飛ぶ鳥を落とす勢いは常に注目の的。
トランプも強気な言動。異を唱える者は皆敵。
あの平凡だった若者がNYの王に。まだまだ目指す。
政治家? 大統領? 興味無いね。
この頃からロイの助言を聞かなくなる。それほどの自信家になったという事でもあるが、理由はそれだけじゃない気がする。
薄々察しは付くが、ロイは同性愛者。男性パートナーがいる。
ある時、トランプは“その場”を目撃してしまう…。
80年代になり、エイズが流行。当時のエイズへの認識や理解の無さは言うまでもなく。
ロイのパートナーがエイズに。つまりはロイも…。
ロイが次第に衰弱。自身はガンだと言い張るが…。
これまでの違法行為により弁護士資格も剥奪。ロイは自分の事よりパートナーの為にトランプに助けを求めるが…。
トランプは恩を仇で返す仕打ち。
激昂するロイ。一蹴するトランプ。激しく言い合う二人。
信頼と友情の終わりはいとも簡単に…。
あんなにロイに教えを乞うていたトランプ。もう自分に必要無くなったら切り捨て。
そのやり口はまるで…。
そういう意味では、トランプはしっかりとロイの教えを身に付けたと言えよう。
ロイにとっては誤算。あのやり手ですら先を読めなかった。
可能性に満ち溢れた可愛かった若者が、想像を超えた大物…いや、“怪物”になるのを…。
トランプが失ったのはロイとの友情だけじゃない。
結婚なんて財産を損するだけだ…とロイに反対されながらも結婚したイヴァナ。
当初は愛に溢れていたが、トランプの身の振り方が尊大になると比例して愛は薄れ、妻に魅力も感じなくなり…。ある時などレイプ紛いの行為を。
家族。父、母、兄の存在。
かつては帝王のような父に従うだけだった。いつしか父を上回る実業家に。
父が認知症に。そんな父を利用しようとするが、気付いた母に止められる。
父に厳しくされた時も味方になってくれた母だが、この時ばかりは息子に怒り。
家族を襲った悲劇。一族の劣等者の兄。精神を病んだ果てに…。
ロイとの友情を失い、妻との愛を失い、家族との絆を失い…。
普通だったら孤独と破滅へ転落なのだが、その野心は留まる事を知らない。
何を失おうとも、どんなに憎まれようとも。
俺は、ドナルド・トランプだ。
鬼才アリ・アッバシの演出は妙なカタルシスを呼ぶ。
小難しい政治ドラマになったりせず、異様な高揚感。
テンポも良く見易く、お陰で全く飽きずに見れた。と言うか、思ってた以上に面白かった。
オスカーノミネートはサプライズと言われたセバスチャン・スタンとジェレミー・ストロングの熱演。いや、怪演。
あのウィンター・ソルジャーがトランプに…? セバスチャンはトランプに全く似てない。だってセバスチャン、イケメンだもん。ヘアメイクの力もあるが、それだけじゃない。平凡だった青年が凄みのある怪物=トランプに。その変貌ぶりはセバスチャンの演技力の賜物。
圧巻はジェレミー・ストロング。登場時から只者じゃない雰囲気。悪党と言われ続け、決してクリーンじゃなかったかもしれないが、いつだって自分に真っ直ぐだった。その姿は何処かカッコ良くもあった。それだけに、終盤の悲哀さは…。
良作で実力を発揮してきたストロングだが、本作で飛躍。遅咲きながらこれからクリストフ・ヴァルツやマーク・ライランスのように重宝されていくだろう。
長らく疎遠だったトランプとロイだが、久し振りに再会。あるパーティーに招く。
プレゼントを贈ったり、ロイを讃えたりして、まだ敬愛は失っていなかったと思うが…、
結局それはトランプの引き立て役でしかなかった。
私は負けたのだ。この男に。
程なくして、ロイはエイズで死去。トランプは葬儀に出席したりせず、ハゲ隠しや脂肪吸引の手術を。
ラストシーン。ある作家に勝利する為の3つのルールを説く。
恩を仇で返すどころではない。欲するもの、必要なものは全て自分のものに。俺様ファースト!
やがてトランプは本当にアメリカの頂点に。
崖っぷちにいた青年がアメリカ大統領になろうとは、ある意味アメリカン・ドリームである。
トランプ万歳!
いや、見れば分かる。本作はアンチ・トランプ映画である。
あからさまに批判はせず、そのサクセスや人間性も描いているが、こうしてトランプはトランプになった…と、警鐘と戦慄を感じる。
言うまでもなく、トランプ本人は本作に対して…。
こんなトランプに誰がした?
ロイと思うが、あくまで影響やきっかけ。
悪徳教えに自分でブレーキを踏む事だって出来た。
そうしなかったのは…。自分がそれを望んだから。
自分の中の野心と傲慢。なるべくしてなったのだ。
元々本人に備わっていた“天賦の才”なのかもしれない…。
困った事に。
長所をもっと見つけたかった
国を超え電波を通しても、トランプが嫌われやすい印象を与える人物像なことは感じ取れるが、作内でも存分に周囲の人物がトランプに感じるであろう不快感を味わえる。
不動産の家に産まれ裕福だが家賃滞納のような底辺生活層も目にして育った生い立ちが、クイーンズ出身から42丁目を制し5番街の人間かのように人生をのし上がるまでには、ロイコーンというトランプ父が抱えていた訴訟を引き受けてくれた敏腕弁護士がいた。
ロイコーンとその側近フレディが実はゲイでお互いにエイズにかかったと示唆されるが、肺炎だと話していたうちから、隔離しようとするトランプの性格はいささか礼節に欠くし、散々泣きついてのし上がるまで世話になったロイコーンに真鍮にジルコニアの安物カフスをトランプロゴ入りで渡せてしまう神経は理解し難い。
だが、製作者がトランプに中身の薄い紛い者という印象を持っているか、観る者にそう思わせたいのかなとも思った、
真偽のほどはわからないが、徐々に聞かん気傲慢になっていく作中のトランプは妙な薬のせいだと良いのだが、残念ながら違うだろう。
アメリカの国益を貪り食うジャップと作中で言われてしまった日本人感覚としては、トランプがアメリカの国益のために奮闘しているのはよくわかる。
でも、関税を叩きつけてきたトランプは私の中ではマリオパーティーのクッパそのものである。
妻に豊胸させた上プラスチックと罵ったり、
センスの悪い天然巨乳と不倫したり、
本当は育ちの良さを学んで育っていないのに、
本物への憧れが一際あるように思えた。
父の暴言から自信を持てず病んでいく兄への対応、
いつも要望を叶え忠告してくれたロイコーンへの態度、
トロフィーワイフではなく意思を持った綺麗な妻や子供をぞんざいに扱う点。
一流に相応しいとは思えなかったが、
自己資金で当選できる議員は日本では皆無に等しいので、野心ゆえのすごい部分は沢山あるのだろう。
青年期の素直に話す部分はまだ残っているのだろうか?
タイトルなし(ネタバレ)
家賃滞納者に熱湯かけられるシーンとか
最初の奥様との出合いと恋愛とか言って
親子、兄弟とのわだかまりとか
現在は
SNSで一言発信するだけで世界中が右往左往する
大きな影響力を持つ
トランプ大統領も
人の子であり人の親なんだなって思いました
セバスチャン・スタン氏の演技がよくて
しっかりトランプ氏に成り切っていてよかったです
笑い方とか口の曲げ方とか
ちょっとした仕草もコピーしていました
映画としての感動はないけど
面白かったです
長男のジュニアがまだ小さい子でかわいくて
イヴァンカさんがまだお腹の中にいましたね
微笑ましかったです
今はお孫さんにとってはかわいいお爺ちゃんのトランプさん
なんかホッとしました
みてよかった映画です
こうして作られた…
大魔王トランプ。。ロイ・コーンの指導の下に徹底的に攻撃、非は認めない、勝利を主張し続ける、この姿勢は成功を手にしてきただけにこの先も変わらないだろう。両親、妻、ロイ・コーンでさえ裏切り、普通なら崩壊していく人生だが、最高権力を手に入れ、まだまだ爆進している。世界は彼を止められるのか、止める人物はいるのか、人生の後半を映画で見たい。映画としては面白く、セバスチャン・スタンが本人に見えてきた。しかし、不愉快極まりない奴で評価にも影響してしまった。
上には上がいましたか・・
アプレンティス(Apprentice)とは見習いとか弟子の意、タイトル通り若き日のトランプの師匠となった剛腕弁護士ロイ・コーンとの出会いと別れまでの様々な出来事を描いていました。トランプも相当破天荒だと思っていましたが「1.攻撃!攻撃!攻撃!」「2.決して非を認めるな」「3.最後まで勝利を主張し続けろ」というドナルドに受け継がれたロイ・コーンの勝者の3原則を知ると、上には上がいたのだとわかりました。
エピソードはどこまで真実かは分かりませんが脚本のガブリエル・シャーマン氏はトランプ大統領取材歴20年の政治ジャーナリストだから全くのフィクションではなさそうですね。
不勉強なのでMake America Great Againというスローガンはてっきりトランプのものだと思っていたら元はレーガン大統領だったのですね。
映画としては必然性のないエロシーンも満載でB級映画風でちょっとがっかり、関税問題など世界を混乱に貶める破天荒な大統領の裏にこんな過去があったのですね、興味深く鑑賞しましたが製作できたのはトランプがバイデンに敗れたからでしょう、大統領のままだったら世に出せなかった話題作ですね。
憎まれっ子、世にはばかる。
最初知り合った時、トランプは
税金逃れに、ロイ・コーンを雇い、
法を捻じ曲げて、利益を上げてきたのに、
貿易相手に、法外な関税をかけて、税金を取ろうとする。
そしてまずぶん殴ってから、交渉するという名の駆け引き。
呆れてものが言えない。
さらに、【海外の映画に関税をかける‼️】と言い出した。
アメリカ製作ではない映画に100%の関税をと、ぶち上げた。
これは問題だ。
芸術にまで口出しするとは。
大体に、ハリウッド映画は輸出するためにつくられている。
インド、中国、日本などが買って楽しんでいるのだ。
それをアメリカで制作して、アメリカ人だけが、観ればいい。
誰もハリウッド映画を買って観てくれなくなる。
映画こそ国境のない芸術である。
あまりの無知に驚く。
そして、
この映画の内容は事実なのだろう。
名誉毀損で訴えてはいないのか?知らないけれど、
立派に世界各国に公開された。
★脂肪吸引の手術。
★円形脱毛症の皮膚の切り取り、縫い合わせる。
★妻に豊胸手術を強いる
などが暴露されている。
★痩せるためと称して、アンフェタミンを服用。
(麻薬の一種とされている)
悪徳弁護士ロイ・コーンの影響を受けて、
その真似をして、元々は気弱な男が、
今のようなドナルド・トランプとして、できあがったのだ・・・
的な主張のようだが、確かに似たもの同士で、最初は税金逃れなどに
ロイ・コーンはチカラを発揮した。
この醜悪な男は、権力を握っている・・・
世界の命運を握っている。
先行きは全く分からない、
このトンデモない大統領を止めるものは、何か?
セバスチャン・スタンはトランプ本人にしか見えなかった
中々に面白かったです。
トランプの作り方、というよりも、トランプは如何にしてトランプになったのか、というような映画でした。
トランプ役のセバスチャン・スタンは、凄く良かったな。トランプ本人にしか見えなかった。ルーマニア出身の俳優。
最初の妻役のマリア・バカローバは可愛くて良かった。ブルガリア出身の俳優。
描かれているのは1980年代後半まで。1990年代以降の主要事業の倒産や負債による苦境とそこからの再起、政界への挑戦、そして近年のトランプについては、全く取り上げていないですね。
それは、また別の物語で。
ということなのかな。
フィクションであってほしい・・。
ロイ役、トランプ役の演技には、凄味がある。
後者は本人でないか?と錯覚するぐらい、彼になっている。
過激な表現、分かりにくいところも多々あるが、
良識ある青年が、勝利にとり憑かれ、
巨大なモンスターになる過程をうまく表現している。
とても、怖い映画。
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わたしは常々、思う。
勝つため、全力で人を陥れたり、利用する人間を避けたいと。
作品で描かれている全盛期のロイ、勝利に固執したトランプ、
どちらも、関わりたくない、巻き込まれたくないタイプの生き物だと思った。
どれぐらい、実話を含んでいるのか、アメリカに疎い、私は判断できないが、
仮に 7、8 割が本当だとするならば・・
”アメリカ” と ”民主主義の自由” を掲げ、自分の快楽のまま、取引を楽しみ、
決して負けを認めず、引かず、媚びず、顧みず、
勝つまで攻撃し続けるモンスターが、この世に存在することを認めざるを得ない。
この話、9 割以上がフィクションであることを心より願う。
誰がトランプに頭を切るハゲ治療をしろと言った?それは私の友達と高須院長がいった。
どことなく、あの傲慢な実物をテレビなどで見てしまっているからか、どうしても序盤のなよなよとした姿が信じられなかった。
また、盛り下がったシーンの後に変に大きく音楽を流して次のシーンに切り替えるやり方をやられても気持ちがそこまで追いつけず、どことなく物語に入り込めなかった。
余談だが、トランプの美容整形に関して調べたら、あれは高須クリニックの院長の友達が執刀したとのことでタイトルに入れ込んでみましたが、特に意味はありません。
人間臭くて憎めない
個人的にはトランプ大統領を支持してますので、雑で乱暴でケチだとしても、あの位でないと国は動かないから「頑張れトランプ!」。しかし、キッタナイ方法で成り上がれるアメリカは嫌い、けどこんな映画を放映できる自由度はアメリカの好きな部分でもある。負けを認めない、勝ち続けろ、ルール的なもの…自分に響いてしまった…「絶対に否を認めない」ビジネスには少なくとも必要かもと思った。もっとトランプさんを調べてみたくなった。
ロイ・コーンからトランプへ 悪魔の遺伝子を受け継いだ男
ロイ・コーンをよく知る人物は言う、彼のような人間はいつの時代にも存在すると。
赤狩りの嵐が吹き荒れた50年代のアメリカ。マッカーシズムの下、実質そこで主導的役割を果たし、多くの人間の人生を狂わせたのが当時若き日のロイ・コーンだった。
彼は劇中でも語られたローゼンバーグ事件で注目されたことからFBIのフーバーの推薦によりマッカーシー上院議員の主任顧問となる。
マッカーシズムとはその名の通り国務省に共産主義者のスパイが大勢潜んでいるというまさにマッカーシーのデマ発言から巻き起こった反共ヒステリーである。
当時の朝鮮戦争勃発、ソ連による原爆開発で共産主義に対する脅威が大きくなり始めたころに国民の不安の炎に見事に油を注いだのだ。
このマッカーシー発言の元となった情報自体、今では当時フーバーが彼を反共活動に利用しようとしたがためにリークしたフェイク情報であったともいわれている。実際その情報には何の根拠もなかった。しかしそれでも当時の反共活動を煽り立てるには十分すぎるほど大きく役立った。多くの人間が不当な疑いを根拠に公職から追放され、また特にハリウッドが標的にもされ、チャップリンもアメリカから追放された。
ロイ・コーンが頭角を現すきっかけとなったのが当時原爆開発に携わった義弟からユダヤ人電気技術者ジュリアス・ローゼンバーグが原爆の機密情報をソ連側に売り渡したとして妻のエセルと共にその容疑をかけられ処刑された事件である。当時は冤罪だとして世論を二分したがのちに公開されたヴェノナ文書で彼らがソ連のスパイだったことが明らかになる。しかしジュリアスが渡していたのは原爆開発に関する重要な情報ではなく、また妻のエセルの関与があったことも疑わしいものだった。
当時の裁判においてはエセルの弟の証言だけで有罪判決が下り、二人は処刑されてしまう。のちにこの証言はロイ・コーンにより仕組まれた偽証であったことが明らかになっている。
少なくとも当時ロイ・コーンがいなければ幼い子供たちが両親と永遠の別れを告げられることはなかったのである。
当時二十代の駆け出しの検事であったロイ・コーンがなぜそうまでして夫妻に罪を擦り付け糾弾したのか。彼の野心に加えて一説には同じユダヤ人である彼が夫妻を糾弾することでユダヤ人への偏見を払拭したかったのではないかとも言われている。だとすればのちにゲイである彼が同じくゲイたちを糾弾したことともつじつまが合う。
どちらにせよ合法違法を厭わない手段を選ばぬ彼の法廷戦術はこの時から培われたものであり、その様はまさに悪魔に魂を売った人間という称号にふさわしいものだった。
マッカーシズムはロイ・コーンが恋人の徴兵逃れのために行った工作やマッカーシーが赤狩り追及を陸軍にまで及ぼそうとしたためにアイゼンハワーの怒りを買い、彼らへの非難が噴出し彼らが失脚したことから沈静化していった。
扇動政治家マッカーシーは酒におぼれ49歳の若さで亡くなるが、検事をやめたコーンは元判事の父のつてを頼りにニューヨークでやりての弁護士としてリベンジを果たす。ここでも手段を選ばぬ方法で依頼人である実業家やマフィアに貢献し彼はフィクサーとしてのしあがっていく。そして彼の依頼人の中に若き日のトランプがいた。
劇中でトランプが組織的に行っていたトランプビレッジへの入居差別の裁判で判事の弱みを握り訴訟を和解に持ち込むシーンが描かれている。私は法には興味がない、興味があるのは裁判の判事が誰かということだけだというコーンの言葉が残されている。法の遵守などお構いなし、相手の弱みを手に入れそれを自分が有利になるよう利用する。ローゼンバーグ事件で彼が取った手法だ。
さすがにあまりに手段を選ばないコーンのそのやり方に若き日のトランプも嫌悪感を抱かずにはおれずその戦い方を見習いながらもコーンとは一定の距離を保ち続けた。だがコーンはトランプの才能をいち早く見抜き彼に自身の教えを伝授する。
彼らはお互いに利用し合う関係だったと言える。しかしさすがのロイ・コーンもエイズに感染して年貢の納め時となる。悪名をはせてきた彼の晩年はみじめなものだった。それでもトランプだけが無一文になった彼を最後まで面倒を見た。しかし最後の最後にはトランプに失望してロイ・コーンは息を引き取る。
悪魔に魂を売り渡したロイ・コーンはこの世を去るがその後継者であるトランプはついにアメリカ大統領にまで上り詰める。世界一の軍事大国であり、経済大国のトップに悪魔の遺伝子を受け継いだ男がその座に就いたのだ。
今のトランプを作り上げたのは間違いなく父のフレッド、そしてロイ・コーンであった。トランプの考えは父の教えに基づき人生には勝者か敗者しかいない。二つに一つであり自分は常に勝者であるということ。そしてロイ・コーンのたとえ敗北してもそれを認めず、勝者であると言い続けろという教えが加わり今のトランプが完成する。
トランプはコーンから伝授された教えを今も忠実に実践する。けして負けを認めず勝利を主張し続けろ。彼が再選を阻まれた選挙は不正であり盗まれたと言い続け、それを信じた支持者たちを扇動し議会襲撃事件を引き起こした。
ひたすら攻撃。就任後の飽和攻撃ともいえる史上類を見ない大統領令の連発でマスコミや議会は対応できないほどであり、そのまま既成事実化を狙おうとする。選挙戦の対抗馬には容赦ない攻撃を繰り返した。政敵であるバイデンのウクライナでの不正の捜査を支援と引き換えにゼレンスキーに依頼。
けして非を認めるな。そのウクライナ支援を餌にした捜査依頼や、選挙中の不倫口止め料支払いなどの不正に対する疑惑をでたらめだと言い続けた。
これら三つの教えが彼を億万長者の地位に押し上げそして今の大統領の地位にまで押し上げた。今の現時点で彼は勝者なのかもしれない。だがロイ・コーンのようにいつか負けを認める日が来るかもしれない。その時彼は潔くそれを認めるのだろうか。
彼がただの実業家であったならば今のままでもいいのかもしれないが、いまや世界に影響を及ぼしうる強大な権力を握る米大統領である。彼の采配一つで人々の人生を大きく狂わす。マッカーシズム下のロイ・コーンが行った比ではない。
けして自分の非を認めず、むしろ自分を批判する人間たちを罵倒し続けるその姿は果たして民主大国の大統領にふさわしいと言えるだろうか。これではロシア、中国、北朝鮮の指導者となんら変わらないのではないだろうか。
ロイ・コーンの親族が言った、彼のような人間はいつの時代にも存在すると。1930年代のドイツ、50年代のアメリカ、そして現在のアメリカだ。
ヒトラーはヴェルサイユ体制の下で不満を募らせた民衆の心をつかみユダヤ人を仮想敵とすることで独裁政権を築き上げた。マッカーシズムは国民の共産主義への不安を煽り思想信条の自由を蹂躙し多くの人の人生を奪った。トランプはエリート層から追いやられた周縁の人々の不満を掬い取り移民や有色人種、性的マイノリティの排斥を訴えて支持を得た。
人々の抱える不安や不満に目ざとく目をつけてそれを自身の支持につなげて権威主義に走るポピュリズムは民主主義の宿命ともいえる。彼らポピュリストは虎視眈々と人々の中に蠢く不満のエネルギーが噴出する機会を伺っているのだ。
トランプのような人間はこれからも出てくるだろう。民主主義社会において既成政治が多くの人々の受け皿となれないのなら、それは民主主義を駆逐するポピュリズムの台頭を許すことになる。
悪魔は常に人の心の弱みに付け込みその心を乗っ取ろうと機会を伺っているのだ。民主政が機能不全を起こして民衆の期待に応えられなくなり、人々が独裁でもいいと望むようになればそれこそ悪魔の思う壺となる。
映画はロイ・コーンのドキュメンタリーで見た映像がそのまま再現されたようなシーンなどが多くあり、ほぼ事実に則って描かれていると思う。例えば自宅兼事務所ビル内の自室で裸での腹筋運動、会議での様子。乱交パーティーシーンなどは実際彼はゲイたちのたまり場の店などに入り浸っていたことからも察しが付く。
この作品を2015年のトランプの大統領選初出馬を表明する以前に鑑賞したなら興味深い有名実業家の物語として楽しく見れただろうが、いまや大統領再選を果たした人物が本作の主役である。あの悪夢がまさか再来すると誰が予想しただろうか。劇場を出る私の足取りは重かった。
是非とも本作にはアカデミー賞作品賞、主演男優賞を取って貰いたい。スタローンが悪魔に魂を売り渡した今、かつて赤狩りにさらされたハリウッドにはぜひともトランプと闘ってもらいたい。
痛快という人もいるかもしれませんが
この作品は、現アメリカ大統領のドナルドトランプ氏が、ロイコーンという(悪辣な)弁護士と出会い、彼を師と仰ぐことで、ついには彼をも凌ぐモンスターになってゆく過程を描いています。
他の方も言っているように、この作品で描かれたロイコーン、ドナルドトランプが、実際の人物にどれだけ忠実かはあまり考えずに観た方が良いと思います(もし80%忠実だとしたら、、それはなかなか空恐ろしい気も、、、)
文春オンラインが役作り等について、ロイコーン役を演じたジェレミー・ストロングさんへのインタビュー記事を載せていて興味深く感じたので、観に行ってきました(ちなみに、ストロングさんの役作りの仕方は、何か建物を建てるかのような面白い捉え方でした)。
小さい映画館がほぼ満席でしたが、テーマがテーマなので、観客は年配の男性が多かったです。
作品中のロイコーン弁護士も、トランプ氏も、自分が勝利するためには汚い違法行為をも辞さずに勝ちにいく人物として描かれています。
ストーリーの序盤は、トランプ一家が、経営する不動産へ黒人の入居を拒んだという理由で政府から不当?に訴えられたところを、ロイコーン弁護士が、政治家のセックススキャンダルを使ってゆさぶりを掛け、封じ込める話が描かれます。不当な裁判をひっくり返し、それをきっかけに不動産王への道を爆進する、ということで、ある種の痛快さを感じる人もいるかな、とは思いましたが、、、やはり汚い手を使ってでも勝ちに行くという、後ろ暗い生き方のグロテスクさは、作品全体を通して表現されていたように思いました。
う〜ん、こういう生き方は自分はしたくないなあ、、の一言につきます笑
自分が置かれた環境によって、そういう生き方をしないで済むのならば、それに感謝しないとね、、。
今の時代、人は何歳まで生きるのか分かりませんが、仮に自分が人生の前半、ロイコーンのような激しい人から足を払われたり、利用されたり、理不尽な目に会ってばかりいたとしても、人生の後半、そういうことと無縁で(やられず、やらず)生きられるなら、人生万々歳かな、と思いました(ああいう世界に一生生きるとか、ムリ!笑)
この世で大事を成す人は、本当に全てこのように清濁併せ呑む人ばかりなのでしょうか。
役作りのインタビューに興味を持って観に行きましたが、自分には毒気が強すぎた感じです(身体にこたえたのか、今日になって熱が38.5℃でて、未だ下がらず、、、シンドイ、、)
俳優さん達は名演技だと思いましたが、
作品が描いているものがしんどかったので(どこかに救いがあったら良かったけど、無かった) 評価は3点にさせて頂きました。
ただ、救いといえば、、、作中でトランプがAIDSを患うロイコーンを別荘に招いてもてなすシーンがありましたが、そこが唯一救いといえば救いだったかな、、(ただし作中では、トランプがロイコーンにカフリンクをプレゼントし、ロイはそれをとても喜ぶのですが、トランプの妻がロイに向かって、それは金メッキにジルコンの安物だと言って彼の気持ちを奈落の底に突き落としますが、、)
追記: レビューを書いていた時、高熱が出ていたもので、平熱に戻ってから「何か変なこと書いてなかったよね、、、」とつらつら考えていましたら。
この映画では、トランプとロイコーンのみっともないところ、なりふり構わず、いかなる手を使ってものし上がろうとするところなど、人間の持つ悪の面だけに90%以上フォーカスしていることに今更ながら気づきました(気づくの遅っ! 笑)。 人間は100%の天使でもなければ100%の悪魔でも無い訳で、人物像を立体的に描こうとするなら、善の部分も描いてよいはずなのかなと思いますが、そこの描写が極端に薄い作品だと思いました。他のレビュアーさん方も本作品は、反トランプのネガティヴキャンペーン的作品、とおっしゃっているのは、そういう理由だと思います。制作者に 「誇張抜きでこの醜悪さが2人の実像だと思うから、この作品でフォーカスして描きたかった」と言われてしまったらそれまでですが、私自身は、だから「この作品には救いの部分が無い、、」と感じたのかな、と思います(世も末な感じしか残らない泣) 。
テーマがぼやけてる、ような。
少し描写が足りないように感じる部分があり、結果としてメインテーマがぼやけているように思えました。
まず最序盤、ロイ・コーンの仕事ぶりについて。いつも裁判所などでは暴言を吐くばかりで最終的には脅迫で全部片を付けるというワンパターンなやり方でした。もちろん、ロイが悪辣な弁護士であることはこの物語の重要なピースではあるのですが、もう少しどうにかならなかったのかなあ、ロイの有能さの描かれ方が少し足りないのでは?と感じます。他には、ロイがなぜここまでトランプに目をかけたかという理由も欲しかったです。
中盤では、トランプが市長とケンカをして以降、しばらくロイが出てこなくなってしまったように覚えています。トランプがロイ・コーンから離れていくところをもう少し描いてもよかったのかなぁと思いました。これはトランプとトランプの兄とのシーンも同様で、なぜ兄が堕ちていったのかとか、そもそもの兄とトランプの関係性とかも、もう少し描写が欲しかったです。
独善的になっていくトランプも、内心の葛藤のような描写があまりなく、なんか変わっていったね、という域を出ないかなと思いました。例えば、経営面での行き詰まりや、家族との関係から、「強いトランプ」像を作り出さざるを得なかった、とかそういう描き方もできたのではないでしょうか。今のままだとただ傲慢な人格が勝手にできたように見えて、再終盤でのロイとの和解(?)などにどうつなげればいいのか少し難しいなと思います。
終盤に向けてロイ・コーンが再登場しますが、彼がなぜ落ちぶれていったか、という描写も物足りないかなと思いました。再登場したと思ったら病気なのか資金繰りなのかよれよれになっていて、もう少し説明が欲しかったです。ロイはトランプの他にもたくさん顧客はいたでしょうから、なんでああなったかはもう少し描写があってもいいと思います。もちろん訴訟がどうとか言っていましたけど。
最後のロイ・コーンとの死別のシーンはよかったかと思います。いろいろな受け取り方はあるかと思いますが、トランプはロイのアプレンティス(弟子)であり、ロイを切り捨てることは結局できなかった、ロイがAIDSだとわかって後に席を消毒するほどでも、一緒に食事をとろうとするほど彼のことを気にかけていたのではないか、と私は思いました。当時はHIVへの差別も今とは比べ物にならないほどすさまじかったでしょうしね。
ただ、カフスボタンがダイヤモンドかジルコニアかというのは、解釈に困っています。別荘に招待したり、そもそもカフスボタンを作ったりなど、トランプはこの時点で十分お金をかけていますし、トランプが吝嗇だったという描写もない。妻がロイへの復讐でそういったという解釈も可能でしょうが、トランプはロイにここまでお金も時間も使っているわけですから、そんなことを言われたってロイも一笑に付せそうなものです。大体ダイヤモンドより実業家が丸一日付き合ってくれるという時間のほうがよっぽど貴重なわけで、仮にジルコニアだとしてもショックを受けるほどかな?と思いました。
総じて、トランプのキャラクターやその「成り立ち」を表面的に描いた作品としてはそれなりに楽しめました。ただ、トランプ周りの人間関係を全部盛り込もうとしすぎたあまり不完全燃焼になっている部分があるようにも思えます。「アプレンティス」という題なのですから、ロイ・コーンとドナルド・トランプの二人の関係に焦点を当てたつくりにしてもよかったのではないか、と思いました。
トランプの裏表
ストーリーは、盛っている部分もかなりあるかと思うが、実話ベースの話しもあるにも拘わらず、米国でこういう作品が制作されて上映されるということに驚きを感じた。しかも下ネタも有りだから更にビックリ😱☀。日本だったら、首相をテーマにしたこのような映画は、忖度されて上映されないだろうね。(森繁久彌主演の小説吉田学校は、見応え有り)トランプ大統領の考え方は、弁護士ロイ・コーンの思想にかなり影響を受けたのではないかしら?
資本主義が生んだ虚像
アプレンティス
自分の想像よりも、思いのほか早い段階でトランプの人生の表舞台から消えるロイ・コーン。
トランプが彼の傀儡のような存在になり下がるのかと思いきや、そうではなく、飼い犬に手を噛まれた形となった。
イラン人アリ・アッバシの視線はあくまで客観的。
随所に「トランプらしい」描写があり、うまい。
口説き途中で氷に滑って転んだり、ださい髪型を必死に直す姿など、かっこつけたいのにどこかかっこ悪くて、小物感が漂う。キッシンジャーなど政界のフィクサーのような凄みも感じず、大言壮語で金にものをいわす。要するに世間知らずの根っからのボンボンなんだな、と。
ロイ・コーンはなぜ彼に目をかけたのか。たまたまルックスがタイプだったのか、道化にするなら面白い素材だと思ったのか。
他人の言葉やアイデアや、価値観を自分に取り込み、自分の考えのように語るトランプ。
そんな彼が抜きんでた存在になれた理由は、結局のところ、これだという決定打はない。
若さと傲慢さと思い上がりに、親からの金と運…。そしてアメリカの資本主義というシステム。
シンプルな理想を語るがゆえに、そこが魅力ととらえる人もいるのかもしれない。
キャッチコピーの化け物という形容は仰々しくてあまり相応しくない。
高圧的な父親の教えを受け継ぎ、克己心はなく理念も信念もなく、虚像に虚飾を重ねて肥大化した人物。
ロイ・コーンの涙は、こんな薄っぺらな人間に目をかけた自分への哀れみ、自責の念からだろう。
ただ、本当にそれだけなのだろうか。本当のところ、彼のポピュリストでスマートでチャーミングな側面が、大統領に押し上げたのではないだろうか?という疑問が首をもたげる。
つかみかけたところで霧散するトランプ像。
結局、目を離せない存在なのは確かだ。
見習いトランプの成長物語
映画の原題『THE APPRENTICE』は見習い、初心者という意味で、映画は若き日のドナルド・トランプがロイ・コーンの指導を仰ぎ、その哲学を学びながら大富豪にのし上がっていく軌跡を描いています。
脚本は元雑誌記者で過去にトランプへの取材経験もあるジャーナリストのガブリエル・シャーマン。彼は『ほとんどが事実に基づいて描いたものであり、なぜトランプがあのような人物になったのかを描きたかった』と語っています。
一方、トランプはSNSでこの映画について『嘘っぱちで品のない映画。安っぽくて攻撃的で反吐が出るほど悪意ある中傷だ。おそらく失敗するだろう』と批判しています。
どちらの主張が正しく、どこまでが事実で、どこまでが脚色なのかは分かりません。ですので、この映画はあくまで現実のトランプとは切り離して見るのがいいのかなと思います。
若き日のトランプは常識も恥じらいもあり、どこか頼りなげで繊細な一面もあり、厳しすぎる父親に遠慮しつつも、手柄を立て認められたいと願う純朴な青年として描かれています。一方で、この世界には勝者と敗者しかおらず、自分は絶対に成功して勝者になるのだ、という強い野心も抱いています。
しかし、成功を望むにも、父の経営する不動産業は経営難で財政は火の車。さらに多くの訴訟も抱えるなど課題が山積していました。
そこでトランプが頼ったのがロイ・コーンで、政財界の実力者が集まる高級クラブでコーンと出会ったトランプは、トイレまで付きまとうなどして執拗に自身の顧問弁護士となるよう懇願します。その情熱を見込んだのか、はたまたタイプだったのか、コーンは顧問弁護士を引き受けます。
コーンは大統領の非公式顧問を務めたり、世界に名だたる大富豪を顧客に持つなど、確かな手腕の持ち主ではあるのですが、一方で多くの顧客や企業から偽証や証人脅迫、証人買収、横領などで訴えられており、勝つためなら非合法含めどんな汚い手段も厭わない悪徳弁護士でもありました。
コーンはまずトランプに3つのルールを授けます。それは『攻撃、攻撃、攻撃』『絶対に非を認めるな。全否定しろ』『どれだけ劣勢でも勝利を主張し続けろ』という非常にシンプルなものです。さらに偽証や証人脅迫、証人買収といった非合法な手法についても、現場にトランプを引き連れ、目の前で手本を見せながら惜しみなく伝授していきます。
良くも悪くも素直なトランプは忠実にこれを実行し、ノウハウを自分のなかに取り込んでいきます。コーンとの出会いを通じ、トランプはまさに我々がいま見ている怪物へと変貌していくわけですが、とはいえ、真っ当な人間ならば、教えられたところでその手法を取り入れようとは思いませんし、その意味でトランプは元々こういう種類の人間だったのかもしれません。
コーンの教えを受けたトランプは一切の非を認めず、どんな不利な裁判もひっくり返し、自分の思い描いたゴールに向かい、力業で強引に事業を推し進めていくようになります。
たとえばニューヨークのビル建設に際しては、債権者への返済を拒んで借金を踏み倒し、労働者への報酬未払いも常態化し、さらには議員を脅迫して税金免除を勝ち取るなど、もはややりたい放題。コンプラ的には真っ黒なわけです。
一方でトランプは犯罪が横行する荒廃したニューヨークを活気ある街へと蘇らせると豪語し、ホテルの買収や改築など大事業を次々に成功させニューヨークを蘇らせることに成功します。そして、人々はそんなトランプを熱狂的に支持する。
過程に問題があろうが、中身が真っ黒だろうが、体裁さえ整えれば誰もその中身など気にしせず、人々は成功者として崇め称えてくれる。このスキームを確立したトランプは勢いに乗り、次々と事業を拡大していきます。
こうしてかつて見習いだった男は、金や名声と引き換えに一切の羞恥心や道徳心を失い、不動産王の地位を確立すると、師であるコーンとも決別して我が道を行く怪物へと変貌します。
日本のような漂白社会では真っ先に消されるでしょうが、80年代の米国は良くも悪くも(倫理的に問題があろうが)成功者にはルーズなので、トランプのやり方が問題視されることもなかったのでしょう。
それにしてもやり方はどうであれ、これだけの財を築き、大統領にまで昇り詰めたのですから、世の中なにが正解か分からないものです。
一度決めたゴールに対する異常な執着心、なにがあっても一切ブレない信念、並外れた行動力。目指す方向が正しければ、その過程がどれだけ真っ黒でも、問題山積でも、批判されてもまるで気にしない。こんな常人離れした割り切りと振り切った性格こそがトランプの強みなのだろうなと映画を見て感じました。
個人的に、ほら吹きで単細胞のトランプがなぜ大統領にまでなれたのか、なぜあのような怪物に仕上がったのか、興味があって映画を見ていたのですが、事実かどうかは別としてなんだかいろいろ腑に落ちることも多くて楽しめました。
また、トランプは性的多様性を認めない立場ですが、それはコーンが同性愛者でエイズで亡くなったこととも関係があるのかなと思ったり、映画はそんな彼の政策に繋がるような逸話がいくつも出てきて興味深かったです。
誰も幸せじゃないのに進み続ける未来
アプレンティスとは、弟子とか師弟とか見習いとかって意味らしい。
若いドナルド・トランプは成功を夢見つつ、良心があって受身な青年として描かれていた。
そんなドナルド・トランプを、ロイ・コーンが育てるが、やがてドナルドはロイが予想もしなかった怪物になるという話。
ドナルド・トランプとは、アメリカの超富裕層の傀儡であるって描き方なのかなーって思ってたけど、そうではなかった。そういう面もあるだろうけど、そこが主ではなく読めた。
ロイの勝利の三原則?(攻撃攻撃攻撃・非は認めない・勝利を主張し続ける)を実践し続けることによって、その成功体験から降りられなくなった。
でも悲しみも喜びもあまり感じていない様子で、ドナルドは全然幸せそうじゃない。
だけどそれを辞めない。
何とかの一つ覚え的に、自らハマった地獄の沼の中で、溺れていることに必死で気付かないふりをして、未来に進む。その未来が全然キラキラしてないのに。
ラスト付近で、ドナルドの自伝を書くために雇われたライターが、めちゃくちゃあきれてた感じのシーンがすごく面白く、恐ろしかった。
コーンは自分が作り出した怪物に、冷たく袖にされて世を去る。
彼も、同性愛者でありながら、ホモフォビアを隠さず「アメリカの男」という虚構を演じて、犯罪も犯しながら弁護士をやってきたけど、あのおとなしい青年がよもやここまで化けるとは思ってなかったのだろう。
最初っから、コーンが標榜する世界は民主主義ではないと思うけど、あれを民主主義と本気で思ってたのかなって思う。
ドナルド・トランプ役の人、後年になればなるほどすっごく似ててよかった。
2025年2月。ドナルド・トランプが2期目のアメリカ大統領に就任して十日余り経過した。
彼は正気を疑うような大統領令を出しまくってて、流れてくるニュースに気が滅入る。
情報が溢れすぎている時代、日々に生活に追われていたら、表面的で簡潔なメッセージしか頭が受け付けなくて、ドナルド・トランプの言うようなことがインプットされちゃうのもわからなくはない。敵を仕立てて、やり玉に挙げ攻撃することで、晴れる気分があるのもわかる。
程度に差はあれ、日本でも同じようなことが起きているから。
そこに良心の付け入る隙なんてあるんかい?もうやる気が起きねーよと、厭世的になっちゃうのが、相手の思うつぼなんだろうけど、やる気が起きねーよ。
なんなんこの世界、どこへ向かうんだろかね。
まず創作作品として見るべき(事実も含むだろうぐらいに)後半ネタバレ
今作は史実に基づいた伝記ドラマではない。 勿論、ある程度は事実を参考にはしているだろうが、特に後半は脚色・創作がかなり含まれていると感じる。
レビュー前に、これを読んで頂いた方に提案♪
政治に関する全て(書物・映画・ニュース・SNS・情報・コメント等)に触れる時は、その発信者が左派・右派にどちらに属しているかをチェックすべし♪ なにかを批判・逆に賞賛している場合は特に。 (もちろん中道的でどちらにも属さない場合も多々ある)
予告でトランプさんを「怪物」と呼んでいる事から、どうせ左派(反トランプ)のプロパガンダ作品だろうと、視聴前に監督をチェックした。
が、アッバシ監督は自身で映画コムに語っている様に、特に政治的思考はないようだ・・。
が、脚本家をチェックすると・・やっぱりだった!
このガブリエル・シャーマンという脚本家は、、NBCニュース(左派メディア)の寄稿者で、彼の奥さんはもっと左のニューヨーカー誌のファクトチェッカーをしていたらしい。
そんな左寄り作家がトランプさん(保守・右派)を賞賛する様な作品を書く訳がない・・。
欧米メディアが左派・右派どちらに属するかは、メディア・バイアス・チャートを見れば分かる♪(media-bias-chart で検索すると出ます)
(日本メディアは載ってないが、「産経新聞」以外は、TVも新聞もほとんど左)
トランプファンの私はどれどれ、どれ程トランプさんを批判した作品になっているか確かめてやろう・・的に鑑賞♪
ようやく作品内容^^;
えっ、意外と序盤から面白いじゃないか!
家賃を集金するシーンに、えっこんな下積みの様な事もしていたんだ♪
最年少で一流ラウンジクラブの会員になった時、古参メンバーに呼ばれ、おぼっちゃん扱いさる微笑ましいシーンに、笑いも出る.
その中心メンバーが、ロイ・コーンなる、辣腕弁護士だった。
その後、窮地に陥ったトランプが、そのクラブにいるコーンに助けも求めるのに、トイレまでくっついて行くシーンに感心した。
「本当にあなが必要なんです!」的に訴えるトランプは豪胆だが、実直で、その姿にマナーにうるさいコーンでさえ、耳を貸してしまう。
根回しする日本流ではなく、当たって砕けろのアメリカを感じた♪
そんな見入るシーも度々あり、特に負けそうになった裁判を一発でひっくり返す"裏技"をコーンから伝授されるシーンは、「ほ~~!」と声が出そうになったほど♪ まあこれがフィクションか事実かは判断出来ないが、脚本的には最高に巧い展開。
ビジネスに勝つ3箇条なども教わり、トランプはドンドン成長し、トランプタワーを無事完成させてからは、成功列伝となり、
前半1時間位は、没入出来て、あっとういう間♪
なんだ、良作じゃないか! その時点では★3.9~4.0でもいい位♪
自分の青い部分を描かれたから、トランプさんは上映を拒んだのか・・
ぐらいに甘い考えが浮かぶ・・
が、後半。 師であったコーンとは、対等以上の関係になり、徐々に態度も不遜に・・・
きたきた、やはりマイナスイメージの拡散が!
後半はまるでトランプさんが豹変したかのように、卑しい人物に描かれている。
そう、この作品は米では大事な大統領選の前に公開されている事にも、
その意味がある!
↓ ネタバレ
病いを押して僅かな事を頼みに来たコーンを、罵り、文字通り、恩を仇で返す。
落ちぶれた兄に僅かな金を与え、追い返す・・。
醜くなった容姿は金で補う・・。
親をも騙そうと・・
傲慢・厚顔・金欲・欺瞞・搾取 とあらゆる角度から、
トランプさんを悪しき者としての描写が続く。
この辺から、徐々にフィクションを感じて、当然見ていて面白くもない。
特にコーンへプレゼントしたダイヤに妻が、
「これは本物じゃないわ! ジルコニアよ」という台詞。
実は私は、宝石類も扱った事があり、ダイヤをぱっと見て、
本物か人工石か素人が判断出来ない事を知っている。
あのシーンは、すぐに創作だと認識し一気に冷めた・・。
(妻が嘘をついたのか、当初より知っていたのかは不明だが・)
と、まあ悪印象を引ききずってのエンディングは、
当然トランプさんにプラスにならない。
が、トランプさんは、ほぼ圧勝に近い形で勝利した。
敵の民主党が勝利した州は、投票に身分証を必要としない、
州のみだった。(これが意味するのは・・)
尚、この監督のインタビューで、「彼には数多くの重罪や不正行為、告発や問題がありました」と語っているが、この監督こそが、左派の脚本家らに、うまく言いくるめられてるのでは、と感じる・・。
youtube等で、良識ある日米の政治通の意見を知れば、皆、あの訴訟や裁判は、とにかくトランプさんを選挙戦に出させない為の、無理筋工作で、良識ある判事なら、却下して当然の事例ばかりだと・・・。
怪物の創り方
トランプが大統領に返り咲いた(恐ろしい)
このタイミングで観る意味。
とはいえ、ドナルド・トランプの物語と言うよりは
ロイ・コーンと言う怪物製造機についての
映画のように感じました。
ロイ役のジェレミー・ストロングの怪演は
見どころ満載じゃないでしょうか。
不気味でずる賢くて気味が悪い(褒めてます)
またそんな彼をまるで師と仰ぐ?若きドナルドが
徐々に師を越える化け物、怪物に変貌していく様を
見ていると吐き気がしそうなほど嫌いでした(笑)
これも作品としては褒めていますw
それにしても若かりし頃のドナルドさん
容姿をめちゃくちゃ気にしてたのね。
脂肪吸引も頭皮の手術も結果的には効果なかったねw
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