アプレンティス ドナルド・トランプの創り方のレビュー・感想・評価
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ロイ・コーンからトランプへ 悪魔の遺伝子を受け継いだ男
ロイ・コーンをよく知る人物は言う、彼のような人間はいつの時代にも存在すると。
赤狩りの嵐が吹き荒れた50年代のアメリカ。マッカーシズムの下、実質そこで主導的役割を果たし、多くの人間の人生を狂わせたのが当時若き日のロイ・コーンだった。
彼は劇中でも語られたローゼンバーグ事件で注目されたことからFBIのフーバーの推薦によりマッカーシー上院議員の主任顧問となる。
マッカーシズムとはその名の通り国務省に共産主義者のスパイが大勢潜んでいるというまさにマッカーシーのデマ発言から巻き起こった反共ヒステリーである。
当時の朝鮮戦争勃発、ソ連による原爆開発で共産主義に対する脅威が大きくなり始めたころに国民の不安の炎に見事に油を注いだのだ。
このマッカーシー発言の元となった情報自体、今では当時フーバーが彼を反共活動に利用しようとしたがためにリークしたフェイク情報であったともいわれている。実際その情報には何の根拠もなかった。しかしそれでも当時の反共活動を煽り立てるには十分すぎるほど大きく役立った。多くの人間が不当な疑いを根拠に公職から追放され、また特にハリウッドが標的にもされ、チャップリンもアメリカから追放された。
ロイ・コーンが頭角を現すきっかけとなったのが当時原爆開発に携わった義弟からユダヤ人電気技術者ジュリアス・ローゼンバーグが原爆の機密情報をソ連側に売り渡したとして妻のエセルと共にその容疑をかけられ処刑された事件である。当時は冤罪だとして世論を二分したがのちに公開されたヴェノナ文書で彼らがソ連のスパイだったことが明らかになる。しかしジュリアスが渡していたのは原爆開発に関する重要な情報ではなく、また妻のエセルの関与があったことも疑わしいものだった。
当時の裁判においてはエセルの弟の証言だけで有罪判決が下り、二人は処刑されてしまう。のちにこの証言はロイ・コーンにより仕組まれた偽証であったことが明らかになっている。
少なくとも当時ロイ・コーンがいなければ幼い子供たちが両親と永遠の別れを告げられることはなかったのである。
当時二十代の駆け出しの検事であったロイ・コーンがなぜそうまでして夫妻に罪を擦り付け糾弾したのか。彼の野心に加えて一説には同じユダヤ人である彼が夫妻を糾弾することでユダヤ人への偏見を払拭したかったのではないかとも言われている。だとすればのちにゲイである彼が同じくゲイたちを糾弾したことともつじつまが合う。
どちらにせよ合法違法を厭わない手段を選ばぬ彼の法廷戦術はこの時から培われたものであり、その様はまさに悪魔に魂を売った人間という称号にふさわしいものだった。
マッカーシズムはロイ・コーンが恋人の徴兵逃れのために行った工作やマッカーシーが赤狩り追及を陸軍にまで及ぼそうとしたためにアイゼンハワーの怒りを買い、彼らへの非難が噴出し彼らが失脚したことから沈静化していった。
扇動政治家マッカーシーは酒におぼれ49歳の若さで亡くなるが、検事をやめたコーンは元判事の父のつてを頼りにニューヨークでやりての弁護士としてリベンジを果たす。ここでも手段を選ばぬ方法で依頼人である実業家やマフィアに貢献し彼はフィクサーとしてのしあがっていく。そして彼の依頼人の中に若き日のトランプがいた。
劇中でトランプが組織的に行っていたトランプビレッジへの入居差別の裁判で判事の弱みを握り訴訟を和解に持ち込むシーンが描かれている。私は法には興味がない、興味があるのは裁判の判事が誰かということだけだというコーンの言葉が残されている。法の遵守などお構いなし、相手の弱みを手に入れそれを自分が有利になるよう利用する。ローゼンバーグ事件で彼が取った手法だ。
さすがにあまりに手段を選ばないコーンのそのやり方に若き日のトランプも嫌悪感を抱かずにはおれずその戦い方を見習いながらもコーンとは一定の距離を保ち続けた。だがコーンはトランプの才能をいち早く見抜き彼に自身の教えを伝授する。
彼らはお互いに利用し合う関係だったと言える。しかしさすがのロイ・コーンもエイズに感染して年貢の納め時となる。悪名をはせてきた彼の晩年はみじめなものだった。それでもトランプだけが無一文になった彼を最後まで面倒を見た。しかし最後の最後にはトランプに失望してロイ・コーンは息を引き取る。
悪魔に魂を売り渡したロイ・コーンはこの世を去るがその後継者であるトランプはついにアメリカ大統領にまで上り詰める。世界一の軍事大国であり、経済大国のトップに悪魔の遺伝子を受け継いだ男がその座に就いたのだ。
今のトランプを作り上げたのは間違いなく父のフレッド、そしてロイ・コーンであった。トランプの考えは父の教えに基づき人生には勝者か敗者しかいない。二つに一つであり自分は常に勝者であるということ。そしてロイ・コーンのたとえ敗北してもそれを認めず、勝者であると言い続けろという教えが加わり今のトランプが完成する。
トランプはコーンから伝授された教えを今も忠実に実践する。けして負けを認めず勝利を主張し続けろ。彼が再選を阻まれた選挙は不正であり盗まれたと言い続け、それを信じた支持者たちを扇動し議会襲撃事件を引き起こした。
ひたすら攻撃。就任後の飽和攻撃ともいえる史上類を見ない大統領令の連発でマスコミや議会は対応できないほどであり、そのまま既成事実化を狙おうとする。選挙戦の対抗馬には容赦ない攻撃を繰り返した。政敵であるバイデンのウクライナでの不正の捜査を支援と引き換えにゼレンスキーに依頼。
けして非を認めるな。そのウクライナ支援を餌にした捜査依頼や、選挙中の不倫口止め料支払いなどの不正に対する疑惑をでたらめだと言い続けた。
これら三つの教えが彼を億万長者の地位に押し上げそして今の大統領の地位にまで押し上げた。今の現時点で彼は勝者なのかもしれない。だがロイ・コーンのようにいつか負けを認める日が来るかもしれない。その時彼は潔くそれを認めるのだろうか。
彼がただの実業家であったならば今のままでもいいのかもしれないが、いまや世界に影響を及ぼしうる強大な権力を握る米大統領である。彼の采配一つで人々の人生を大きく狂わす。マッカーシズム下のロイ・コーンが行った比ではない。
けして自分の非を認めず、むしろ自分を批判する人間たちを罵倒し続けるその姿は果たして民主大国の大統領にふさわしいと言えるだろうか。これではロシア、中国、北朝鮮の指導者となんら変わらないのではないだろうか。
ロイ・コーンの親族が言った、彼のような人間はいつの時代にも存在すると。1930年代のドイツ、50年代のアメリカ、そして現在のアメリカだ。
ヒトラーはヴェルサイユ体制の下で不満を募らせた民衆の心をつかみユダヤ人を仮想的とすることで独裁政権を築き上げた。マッカーシズムは国民の共産主義への不安を煽り思想信条の自由を蹂躙し多くの人の人生を奪った。トランプはエリート層から追いやられた周縁の人々の不満を掬い取り移民や有色人種、性的マイノリティの排斥を訴えて支持を得た。
人々の抱える不安や不満に目ざとく目をつけてそれを自身の支持につなげて権威主義に走るポピュリズムは民主主義の宿命ともいえる。彼らポピュリストは虎視眈々と人々の中に蠢く不満のエネルギーが噴出する機会を伺っているのだ。
トランプのような人間はこれからも出てくるだろう。民主主義社会において既成政治が多くの人々の受け皿となれないのなら、それは民主主義を駆逐するポピュリズムの台頭を許すことになる。
悪魔は常に人の心の弱みに付け込みその心を乗っ取ろうと機会を伺っているのだ。民主政が機能不全を起こして民衆の期待に応えられなくなり、人々が独裁でもいいと望むようになればそれこそ悪魔の思う壺となる。
映画はロイ・コーンのドキュメンタリーで見た映像がそのまま再現されたようなシーンなどが多くあり、ほぼ事実に則って描かれていると思う。例えば自宅兼事務所ビル内の自室で裸での腹筋運動、会議での様子。乱交パーティーシーンなどは実際彼はゲイたちのたまり場の店などに入り浸っていたことからも察しが付く。
この作品を2015年のトランプの大統領選初出馬を表明する以前に鑑賞したなら興味深い有名実業家の物語として楽しく見れただろうが、いまや大統領再選を果たした人物が本作の主役である。あの悪夢がまさか再来すると誰が予想しただろうか。劇場を出る私の足取りは重かった。
是非とも本作にはアカデミー賞作品賞、主演男優賞を取って貰いたい。スタローンが悪魔に魂を売り渡した今、かつて赤狩りにさらされたハリウッドにはぜひともトランプと闘ってもらいたい。
痛快という人もいるかもしれませんが
この作品は、現アメリカ大統領のドナルドトランプ氏が、ロイコーンという(悪辣な)弁護士と出会い、彼を師と仰ぐことで、ついには彼をも凌ぐモンスターになってゆく過程を描いています。
他の方も言っているように、この作品で描かれたロイコーン、ドナルドトランプが、実際の人物にどれだけ忠実かはあまり考えずに観た方が良いと思います(もし80%忠実だとしたら、、それはなかなか空恐ろしい気も、、、)
文春オンラインが役作り等について、ロイコーン役を演じたジェレミー・ストロングさんへのインタビュー記事を載せていて興味深く感じたので、観に行ってきました(ちなみに、ストロングさんの役作りの仕方は、何か建物を建てるかのような面白い捉え方でした)。
小さい映画館がほぼ満席でしたが、テーマがテーマなので、観客は年配の男性が多かったです。
作品中のロイコーン弁護士も、トランプ氏も、自分が勝利するためには汚い違法行為をも辞さずに勝ちにいく人物として描かれています。
ストーリーの序盤は、トランプ一家が、経営する不動産へ黒人の入居を拒んだという理由で政府から不当?に訴えられたところを、ロイコーン弁護士が、政治家のセックススキャンダルを使ってゆさぶりを掛け、封じ込める話が描かれます。不当な裁判をひっくり返し、それをきっかけに不動産王への道を爆進する、ということで、ある種の痛快さを感じる人もいるかな、とは思いましたが、、、やはり汚い手を使ってでも勝ちに行くという、後ろ暗い生き方のグロテスクさは、作品全体を通して表現されていたように思いました。
う〜ん、こういう生き方は自分はしたくないなあ、、の一言につきます笑
自分が置かれた環境によって、そういう生き方をしないで済むのならば、それに感謝しないとね、、。
今の時代、人は何歳まで生きるのか分かりませんが、仮に自分が人生の前半、ロイコーンのような激しい人から足を払われたり、利用されたり、理不尽な目に会ってばかりいたとしても、人生の後半、そういうことと無縁で(やられず、やらず)生きられるなら、人生万々歳かな、と思いました(ああいう世界に一生生きるとか、ムリ!笑)
この世で大事を成す人は、本当に全てこのように清濁併せ呑む人ばかりなのでしょうか。
役作りのインタビューに興味を持って観に行きましたが、自分には毒気が強すぎた感じです(身体にこたえたのか、今日になって熱が38.5℃でて、未だ下がらず、、、シンドイ、、)
俳優さん達は名演技だと思いましたが、
作品が描いているものがしんどかったので(どこかに救いがあったら良かったけど、無かった) 評価は3点にさせて頂きました。
ただ、救いといえば、、、作中でトランプがAIDSを患うロイコーンを別荘に招いてもてなすシーンがありましたが、そこが唯一救いといえば救いだったかな、、(ただし作中では、トランプがロイコーンにカフリンクをプレゼントし、ロイはそれをとても喜ぶのですが、トランプの妻がロイに向かって、それは金メッキにジルコンの安物だと言って彼の気持ちを奈落の底に突き落としますが、、)
追記: レビューを書いていた時、高熱が出ていたもので、平熱に戻ってから「何か変なこと書いてなかったよね、、、」とつらつら考えていましたら。
この映画では、トランプとロイコーンのみっともないところ、なりふり構わず、いかなる手を使ってものし上がろうとするところなど、人間の持つ悪の面だけに90%以上フォーカスしていることに今更ながら気づきました(気づくの遅っ! 笑)。 人間は100%の天使でもなければ100%の悪魔でも無い訳で、人物像を立体的に描こうとするなら、善の部分も描いてよいはずなのかなと思いますが、そこの描写が極端に薄い作品だと思いました。他のレビュアーさん方も本作品は、反トランプのネガティヴキャンペーン的作品、とおっしゃっているのは、そういう理由だと思います。制作者に 「誇張抜きでこの醜悪さが2人の実像だと思うから、この作品でフォーカスして描きたかった」と言われてしまったらそれまでですが、私自身は、だから「この作品には救いの部分が無い、、」と感じたのかな、と思います(世も末な感じしか残らない泣) 。
そこまで描くか、若き日のトランプを
テーマがぼやけてる、ような。
少し描写が足りないように感じる部分があり、結果としてメインテーマがぼやけているように思えました。
まず最序盤、ロイ・コーンの仕事ぶりについて。いつも裁判所などでは暴言を吐くばかりで最終的には脅迫で全部片を付けるというワンパターンなやり方でした。もちろん、ロイが悪辣な弁護士であることはこの物語の重要なピースではあるのですが、もう少しどうにかならなかったのかなあ、ロイの有能さの描かれ方が少し足りないのでは?と感じます。他には、ロイがなぜここまでトランプに目をかけたかという理由も欲しかったです。
中盤では、トランプが市長とケンカをして以降、しばらくロイが出てこなくなってしまったように覚えています。トランプがロイ・コーンから離れていくところをもう少し描いてもよかったのかなぁと思いました。これはトランプとトランプの兄とのシーンも同様で、なぜ兄が堕ちていったのかとか、そもそもの兄とトランプの関係性とかも、もう少し描写が欲しかったです。
独善的になっていくトランプも、内心の葛藤のような描写があまりなく、なんか変わっていったね、という域を出ないかなと思いました。例えば、経営面での行き詰まりや、家族との関係から、「強いトランプ」像を作り出さざるを得なかった、とかそういう描き方もできたのではないでしょうか。今のままだとただ傲慢な人格が勝手にできたように見えて、再終盤でのロイとの和解(?)などにどうつなげればいいのか少し難しいなと思います。
終盤に向けてロイ・コーンが再登場しますが、彼がなぜ落ちぶれていったか、という描写も物足りないかなと思いました。再登場したと思ったら病気なのか資金繰りなのかよれよれになっていて、もう少し説明が欲しかったです。ロイはトランプの他にもたくさん顧客はいたでしょうから、なんでああなったかはもう少し描写があってもいいと思います。もちろん訴訟がどうとか言っていましたけど。
最後のロイ・コーンとの死別のシーンはよかったかと思います。いろいろな受け取り方はあるかと思いますが、トランプはロイのアプレンティス(弟子)であり、ロイを切り捨てることは結局できなかった、ロイがAIDSだとわかって後に席を消毒するほどでも、一緒に食事をとろうとするほど彼のことを気にかけていたのではないか、と私は思いました。当時はHIVへの差別も今とは比べ物にならないほどすさまじかったでしょうしね。
ただ、カフスボタンがダイヤモンドかジルコニアかというのは、解釈に困っています。別荘に招待したり、そもそもカフスボタンを作ったりなど、トランプはこの時点で十分お金をかけていますし、トランプが吝嗇だったという描写もない。妻がロイへの復讐でそういったという解釈も可能でしょうが、トランプはロイにここまでお金も時間も使っているわけですから、そんなことを言われたってロイも一笑に付せそうなものです。大体ダイヤモンドより実業家が丸一日付き合ってくれるという時間のほうがよっぽど貴重なわけで、仮にジルコニアだとしてもショックを受けるほどかな?と思いました。
総じて、トランプのキャラクターやその「成り立ち」を表面的に描いた作品としてはそれなりに楽しめました。ただ、トランプ周りの人間関係を全部盛り込もうとしすぎたあまり不完全燃焼になっている部分があるようにも思えます。「アプレンティス」という題なのですから、ロイ・コーンとドナルド・トランプの二人の関係に焦点を当てたつくりにしてもよかったのではないか、と思いました。
トランプの裏表
ストーリーは、盛っている部分もかなりあるかと思うが、実話ベースの話しもあるにも拘わらず、米国でこういう作品が制作されて上映されるということに驚きを感じた。しかも下ネタも有りだから更にビックリ😱☀。日本だったら、首相をテーマにしたこのような映画は、忖度されて上映されないだろうね。(森繁久彌主演の小説吉田学校は、見応え有り)トランプ大統領の考え方は、弁護士ロイ・コーンの思想にかなり影響を受けたのではないかしら?
どのようにしてあの一方的な強さが作られていったのかを感じることが出来る作品
知られたくない怪物の自伝か?
今が旬の映画
ついこの間、日米首脳会談があったばかり。トランプは、「ありがたいこと」に日本に無理難題を突き付けてこなかった。
その彼の若き日の姿を再現しているのだが、のし上がるまでに彼もそれなりに泥水をすする生活をしていたのがわかって面白かった。
邦題サブタイトルに、「創り方」とあるとおり、彼がどうやって人格形成されていったのか、その一端もわかるだろう。
日本はアメリカに大敗しながら、戦後はかなり接近、一瞬でも経済的にその上に立つこともあった、と思う。
しかし、今も今後もそんなことはあり得ないだろう。
ますます、米国の属国化する。
その意味では、少なくとも今後4年近くは彼が生きている限り、付き合わねばならない。ドナルド・トランプの精神性を知るためにも、見ておいて損はない映画だ。
ただ、純粋に映画として評価するなら★2つの駄作に近いと思う。
主演の俳優は適役でよいが、妻役の女優はゴージャス感が薄く、セクシーさにも欠けて不適だったと思う。
表題に書いた通り、「旬」であることから★2つ分おまけしておく。
封切りから3週間以上たっているが、上映回数、館数が少ないこともあってか東京都心のシネコンはそこそこ7割近い入りであった。
肯定的な人も、否定的な人も、どうでもいい人も、鑑賞すれば納得してしまう映画
この映画は、トランプ大統領が過去に彼のメインフィールドである、不動産業界でどのように頭角を表してきたのか、のしあがってきたのかを描いている。
この「のしあがる」という表現をした時点で、すでにそこには、力強い「リーダーシップ」や「意志の強さ」を包摂していると同時に、どこかダーティでマネーパワーを使って他人を蹴落とし、我が道を突き進んでいく、危険な「毒」をも含んでいる。
トランプ大統領に対する是非が分かれる分岐点は、多くの場合このような理由からではないだろうか。この映画は、その「分岐点」をうまく表現している。つまり、否定派の人(実際に鑑賞するかは別として)やどうでもいい人は「あー、やっぱり、こうゆう人なんだ。」となるであろうし、肯定派の人は「聖人君子じゃあるまいし、綺麗ごとだけでは済まないのが資本主義だ。」と思うだろう。
2度目の大統領となった彼は大きな変革を行うとしている。
「CIA」や「FBI」、「FRB」、「USAID」の改革・解体、「不法移民の強制送還」、「連邦所得税の廃止」などなど・・・。
おおよそ、今の日本では到底考えられない、羨ましい程の規模であり、スピード感である。
長期に渡って社会に根差したシステムを根底から変えるには、まず最初に破壊しなければならないが、それには、「薬」は役に立たず、「毒を以て毒を制す」、「毒で解毒する」という荒療治する方法しかないのかもしれない。
そして、トランプ2.0が終わる頃、この映画を見た人たちが、「毒」はやっぱり「毒」だったと思うのか、「毒」は「薬」にもなる、と思うのか・・・・・。
アプレンティス ドナルド.トランプの作り方
フィクションとノンフィクションの狭間
ただのトランプに対するネガティブキャンペーンになっていないのが映画としての凄味がある。スピルバーグが完全に反トランプへのカウンターとしてペンタゴンペーパーズを制作。あれで一度は追い落とす一助になったかも知れないが、2025年あの時とアメリカは、そして世界は変わったのだ。再び返り咲いたのだ。
アメリカの政治機構が生み出す強者がどんな歪んだカタチ、キャピタリズムの権化かつキリスト教福音派を兼ね備えたモノが世界に君臨することができる。
その病理を映画的に抽出できたのは、故国イランの実情を問い、結果国を追われ、アメリカでフォーリナーとして俯瞰できる監督アリ・アッバシの手腕に脱帽。80年代数々の政治的な案件を含め、世の中を変えてきた弁護士ロイコーン。その中で見出し、その弟子apprenticeとして、大成させ、後に切り捨てられる、現大統領トランプの孤独の悲哀をフィクションとしては感じられるが、現実の世界はトランプが王になることによって、make America great again 名のもとに世界は混沌に導かれていくことはノンフィクションなのだ。
北米では大統領選前、日本では大統領選後なので観る時系によって評価が大きく変わるのはなかなかない楽しみ方なのでぜひ。
あ、セバスチャンスタンとジェレミーストロングは最高の演技でした
後味はホラー並み
ちょっと凄いの観たという感じ。
過去の人物伝だと客観的に観ることが出来るが、
本作は現在進行形の人物であり、まさに現実と地続き。
この4年間、何度も話題に出る映画ではないか。
今のタイミングで映画館で観られたのは本当に良かった
ロイコーンの帝王学である「勝者の3つのルール」もシンプルであるがゆえに
スッと人の心に入ってきて、何が大事なのか本当に分からなくなる。
人生に迷っている人は観ない方が良いかも。個人的には物議をかもした「ジョーカー」より
インパクトが大きいと思う。
役者ってすごいと思った。セバスチャン・スタン、段々今のトランプに見えてくる。
映画の余韻はホラー並み。今後の米国、経済等目先は良くなるかもしれないが、中長期的に見ればやっぱり不安の方が大きいなぁ。。。
ウインターソルジャーがトランプ、、!!
妖怪から怪物への伝承
現実世界でのトランプ大統領再任と映画公開が同時と言うすごいタイミングだけど、時節ネタだけではない非常に見応えのある作品で、2時間があっという間でした。不動産会社を経営するアクの強い父親とパイロットで颯爽とした兄に挟まれ、自信のなさそうな御曹司のトランプ青年が、辣腕弁護士ロイ・コーンの指南のもと成功していくのが前半のストーリーです。このロイ・コーンと言う男のキャラが強烈で、アグレッシブで冷酷な性格は上流社会の伏魔殿に巣食う妖怪のようです。ところが、中盤からトランプが自信と欲望を肥大化させ、身振り手振り、口調や目つき、体型まで変化していくにつれ、ダークサイドの師弟関係が逆転してくるのでさらに面白くなってきます。妖怪のような風貌のロイ・コーンがどんどん萎びていくのに、その妖気を吸収したトランプ青年が、師匠や親兄弟、家族まで貪欲に呑み込んでいく異形の怪物へと変貌していくのは圧巻です。監督のアリ・アッバシはイラン出身だけに、外国人の視点で冷徹に70年代から80年代の時代の熱気の中でのトランプ像を描く腕前は秀逸です。役者では、モノマネではなくトランプと一体化したかのようなセバスチャン・スタンの熱演が素晴らしかったです。マーベルに出ていた時,こんなにうまかったっけ?また、ロイ・コーン役のジェレミー・ストロングも、まさに妖気漂う怪演だけど、しっかりと主役を盛り立てる見事なバイプレイヤー振りでした。
「ドナルド・トランプの創り方」
...という副題にあたるものは実際のところ、この映画には描かれていません。
映画が描いている物語は、初めから巨大な野心だけは持っているが、他には何も持たない若いロクデナシ(Bastard)が、悪名高い悪徳弁護士をロールモデルと仰ぎ不動産業界のビジネスマンとしてのし上がっていくストーリーです。
明らかな児童虐待や洗脳的環境の生い立ち、もしくは著しい貧困下でもない限り、いわゆる民主主義国家において、人は(それが無意識か、意識的選択かの違いはあるにせよ)自らロールモデルを選び、自分の人生を形成していくものです。勿論、その過程や環境が恵まれたものかどうかについては考え方次第で、個人差も大きいですが。人格形成や人生の出来事、結果の全てを第三者の影響によると見なすのは、無責任かつ短絡的すぎる捉え方だと思います。
一部の解説記事などでは、この映画について、善良な若者が怪物に作り変えられていく過程を...といった論調で語られている印象ですが、実際主人公が善良であるところは最初から最後まで一つも描かれてはいません。基本的にこの映画には、徹頭徹尾ロクデナシしか登場せず、少なくとも日本の一般市民が共感できるところが一つもない、というのが妥当な印象かと思われます。
"勝ち・負け"や"損・得"が基本的な価値基準であるアメリカ合衆国においては、世の中の"ある部分"をフラットに、リアルに描いた秀作、ということになるかもしれませんが。それでも、この映画を見て清々しいとか、勇気をもらった、とかポジティブな感想を持つ人はいないでしょうね。なぜなら主人公が、とにかく一般的に云われる道徳とか倫理観を微塵も持ち合わせていないロクデナシ(Bastard)として描かれているから。同時に、(その人物、人生自体を肯定するかどうかは別として)絶対に諦めないしぶとさ、執念深さを終始一貫示していることに理解を示すアメリカ人は一定数いるかも知れませんね。
シーンの多くは主人公のプライベートな場面(師と仰いだ悪徳弁護士や夫人、親兄弟との密室)での会話ややり取りから構成されており、多くは憶測や脚色の域を出ないものだと思われます。(インタビューや自叙伝などで本人達に語られた事柄が根拠であれば別ですが、そこは未確認。これまた筆者の"憶測"に過ぎませんが。)
いずれにせよ(製作者の意図がどこにあったかとは無関係に)、"結果的"に、これは彼の半生を描いた伝記映画というよりは、明らかに反トランプ氏プロパガンダ映画として出来上がった印象です。
では、そのプロパガンダは成功しているかというと、恐らくそうではありません。なぜなら、親トランプ派は「こんなのはデタラメだらけのフェイク映画だ」と言うでしょうし、反トランプ派は「やっぱり思った通りのロクデナシ野郎じゃないか」と言うでしょうし、どちらでもない人にとっては「胸くその悪いつまらないモノを見せられた」となるからです。結果、少なくとも反トランプ氏プロパガンダとしては機能せず、この映画がもたらすものは、単に「分断の助長」でしかない、ということになります。
ちなみに、映画の良し悪し、好き嫌いとは無関係に、この作品は、描かれた当時のアメリカ合衆国や主人公を取り巻く世界を、見事に再現しているように見えます。撮影が、セットや衣装や小道具など、ディテールに拘って手間とお金をかけて非常に丁寧に行なわれたことに疑いの余地はありません。また、主演のセバスチャン・スタンさんをはじめ、出演者の演技はどれも見事な出来映えです。あの"ウインター・ソルジャー"が徐々に(我々の知っている)トランプ氏に近づいていく様子が見事に演じられていました。その点では、最初から最後まで見る者を引きつける完成度の高い映画であるといえます。
トランプの「成長」をメンターたる弁護士ロイ・コーンとの関係を軸に描く。
映画は主人公の「成長」を描くものだ。弱いヤツから強いヤツへ、嫌なヤツから良いヤツへ、その「過程」が共感、感情移入できる作品が「良い映画」と呼ばれる。
本作もトランプの「成長」を描く。
時間軸としては15〜20年ぐらいなのかな。
野心あふれる若者が、その野心、自尊心、エゴ、ワガママを巨大化させていく姿を描く。
トランプの姪(精神科医)の著書ではあの性格は、独裁者気質の父親の影響で形成された旨の分析だったが、本作でその父親の存在感は希薄で「目の上のたんこぶ」程度の扱い。
それより弁護士ロイ・コーンに焦点を当てている。
今後、「トランプ作品」は数多く作られるだろうが、その時はまた別の視点になるだろうが、本作が「ベンチマーク」になるのは確実。トランプ役のセバスチャン・スタンも同様。
トランプは市民からどう思われていたのだろう?公聴会のヤジやインタビューアーの態度(チヤホヤする)がイコール「市民目線」となるだろうが、大統領選立候補以降の「熱狂的な人気」の片鱗も見えない。これは今後の作品に期待しよう。
願わくば、
アダム・マッケイ監督版とか、
サシャ・バロン・コーエン脚本&主演版とか見てみたい。
彼らがトランプをどう「料理」するか。
資本主義が生んだ虚像
アプレンティス
自分の想像よりも、思いのほか早い段階でトランプの人生の表舞台から消えるロイ・コーン。
トランプが彼の傀儡のような存在になり下がるのかと思いきや、そうではなく、飼い犬に手を噛まれた形となった。
イラン人アリ・アッバシの視線はあくまで客観的。
随所に「トランプらしい」描写があり、うまい。
口説き途中で氷に滑って転んだり、ださい髪型を必死に直す姿など、かっこつけたいのにどこかかっこ悪くて、小物感が漂う。キッシンジャーなど政界のフィクサーのような凄みも感じず、大言壮語で金にものをいわす。要するに世間知らずの根っからのボンボンなんだな、と。
ロイ・コーンはなぜ彼に目をかけたのか。たまたまルックスがタイプだったのか、道化にするなら面白い素材だと思ったのか。
他人の言葉やアイデアや、価値観を自分に取り込み、自分の考えのように語るトランプ。
そんな彼が抜きんでた存在になれた理由は、結局のところ、これだという決定打はない。
若さと傲慢さと思い上がりに、親からの金と運…。そしてアメリカの資本主義というシステム。
シンプルな理想を語るがゆえに、そこが魅力ととらえる人もいるのかもしれない。
キャッチコピーの化け物という形容は仰々しくてあまり相応しくない。
高圧的な父親の教えを受け継ぎ、克己心はなく理念も信念もなく、虚像に虚飾を重ねて肥大化した人物。
ロイ・コーンの涙は、こんな薄っぺらな人間に目をかけた自分への哀れみ、自責の念からだろう。
ただ、本当にそれだけなのだろうか。本当のところ、彼のポピュリストでスマートでチャーミングな側面が、大統領に押し上げたのではないだろうか?という疑問が首をもたげる。
つかみかけたところで霧散するトランプ像。
結局、目を離せない存在なのは確かだ。
経済的に豊かになることは重要だBecoming Economically Prosperous is Important
原題は「The Apprentice」で見習いと言う意味。
世間を渡る術を知らなかった
若きトランプが、いかにして、
生き馬の目を抜く世間と渡り合っていくのか
を描いている。
反トランプの人からすれば、
【ほら見たことか、やっぱり酷い奴だ!】
になるんだろうな。
今のコンプライアンスからすれば、
出てくる有力者の数々は
とんでもないし、
あり得ない、だろう。
個人的な体験からすると、
1980年代から今世紀に至るまで、
SNSが発達するまでは、
世間はあんな感じだった。
今でもある意味変わっていないかもしれない。
(それは駆逐されつつあるが)
今から30年くらい前は、
大人たちはあれくらい荒々しかったし
ガチンコな感じだった。
その観点からこの映画を観た
と思ってくれれば幸いです。
若きトランプは、
野心家で、自分考えたアイデアで
生まれ育ったニューヨークを良くしよう!
良くしたい!と思っていた、と。
ただそのアイディアは、父親を始めとする
上の世代から、相手にもされていなかった。
そんな時、悪名高き弁護士ロイ・コーンと出会うのだ。
彼から学んだ世渡り術を
【真摯に学び?】、
夢を実現させて行く。
実際、彼のやったことで、
放置されていたマンハッタンに
投資を呼び込んだのは事実なのだ。
個人的にはこの映画を観て、
トランプさんは、
若い頃から一貫して変わっていないのかも
と思った。
自分のやれること、
その及ぶ範囲、
応援してくれる人を
経済回してみんなで豊かになろう
って言ってるだけな気がするのだ。
それらを実現するためなら、
交渉を厭わない。
つい先日、世界を驚かせ
物議を醸したアイディアも
そこに住む人たちを豊かにして
持続的に食べていけるように、
2度と争いの起こらない地にするために
本気で言っている気がしてならないのだ。
今の僕には彼を非難する人々の言動は
問題を解決に向けて1ミクロンも前進させない
【きれいごと】にしか聞こえない。
The original title is The Apprentice, meaning “trainee” or “learner.”
This film depicts how a young Trump, who was unfamiliar with the ways of the world, learned to navigate the ruthless and competitive society.
For those who are anti-Trump, this will likely be a confirmation of their views:
“See? I told you he was a terrible person!”
From today’s perspective on compliance, many of the powerful figures that appear in this story would be seen as outrageous and unacceptable.
Based on my personal experiences, I can say that from the 1980s to the early 2000s—before social media took off—the world operated in a similar way. In some ways, it may not have changed much even now, though such an approach is being gradually phased out.
About 30 years ago, adults were rougher, more direct, and engaged in serious, no-holds-barred interactions.
I hope you can watch this film from that perspective.
Young Trump was ambitious. He wanted to improve the New York he was born and raised in—he genuinely wanted to make it better.
However, his ideas were dismissed by the older generation, including his own father.
Then, he encountered the infamous lawyer Roy Cohn.
From Cohn, Trump learned the art of survival—earnestly?—and used those skills to turn his dreams into reality.
The fact remains that he succeeded in attracting investment to a neglected Manhattan.
Personally, after watching this film, I feel that Trump has remained consistent throughout his life.
He simply focuses on what he can do, the scope of his influence, and those who support him—trying to generate economic prosperity for everyone.
To achieve that, he is never afraid to negotiate.
Even the recent, controversial idea that shocked the world—I can’t help but feel that he is genuinely proposing it to ensure the prosperity and sustainability of the people living there, turning the area into a place where conflict will never arise again.
At this point, the criticisms against him sound like nothing more than hollow idealism—offering not even a micrometer of progress toward solving real problems.
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