動物界のレビュー・感想・評価
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意外にも友情と愛情と成長の物語だった
予告編で感じた印象と本編を観た時の印象が違うと、どうやって宣伝するのか決めるのが大変だったんだなと思う。本作では、病により獣に変化していく人間たち(新生物)の姿を予告編では見せていなかったことがポイント。彼らの見た目を隠すことでとてもミステリアスな存在として演出したかったのだろう。だから本編では、結構序盤で新生物の姿をあっさり見せるんだと驚いた。
子どものときに「エレファント・マン」という映画の公開時に似たような印象を抱いたことがある。CMなどで流れてくるのは頭巾をかぶった、ミステリアスなエレファント・マン。彼の素顔にいろんな人が驚くシーンをCMに使うことで人々の興味を引こうとする。でも、実際あの映画は苦しみに満ちた1人の人間を描いた感動の物語だった。特異な見た目に興味を抱かせようとする宣伝方法に違和感を覚えた印象的な映画だ。本作はその気持ち悪さに通ずるものがある。だって、本作の予告編を観て感じたのはスリラーっぽさだが、観た後に強く印象に残ったのは友情や愛情だったから。
思春期を生きる少年エミールの成長と、獣に変化していく苦しみ、父親との確執と愛情、鳥に変化していくフィクスとの友情。獣に変化していく人間たちを排除しようとする人たちがいて、逆に排除するのではなく共生すべきだと主張する人たちもいるところも妙な風刺が効いている感じで面白い。万事解決!というスッキリしたラストではないし、先行きを考えると不安も残る。でも、不思議と爽快感のある終わり方だった。いい映画だ。どうやって宣伝するのかを考えるのも大変だったんだろうなと勝手に想像する。この面白さを他人に説明するのはなかなか難しいもの。
期待はずれ
一風変わった青春ドラマ
人間の身体が動物になってしまうというと、往年のSF映画「ドクター・モローの島」やヨルゴス・ランティモスの怪作「ロブスター」が思い浮かぶが、本作が製作された時期を考えると昨今のコロナ・パンデミックも連想される。
感染の原因や症状、それに対処する機関、社会状況などが描写不足なためSFとして観た場合はリアリティがないのかもしれないが、”新生物”に対する人々の差別、排除、隔離思想を見ると色々と考えさせられるものがある。
ただ、こうしたSFパニック的な要素を持つ作品ではあるが、主人公エミールの青春ドラマとしても中々良く出来ていて、個人的にはそちらの方に強く興味を惹かれた。
母の発病に続いて彼自身にも奇病の症状が表れ始め、父フランソワやクラスメイトの少女アデルとの関係が徐々に破綻していく。その中で彼の恐怖や混乱が丁寧に描かれている。
それとネタバレになるので詳しくは書けないが、エミールの自律を促す存在としてフィクスというキャラが登場してくる。彼との関係性も面白く観ることが出来た。かすかなユーモアとペーソスがドラマを味わい深いものにしている。
そして、このアンビバレントな心情は、思春期特有の自分探しというテーマへと帰結していく。特異な設定を除けば、本作は普遍的な青春ドラマとして捉えることも可能である。
最も印象に残ったのは、エミールがアデルに電話するシーンだった。彼女はエミールの感染をどの時点で知ったのだろうか?劇中では明言されていないが、自分はこのシーンだったのではないかと推察する。ここはロケーションもかなり良くて、カメラワークも素晴らしかった。
また、感染したことがバレて逃げるエミールをフランソワが抱きしめるシーンも印象深い。父子の確執と融和に胸が熱くなってしまった
本作で一つ残念だったのは、この父子関係の結末である。個人的には少し回りくどい感じがした。その手前が追跡劇のクライマックスシーンで、特異な舞台も相まってかなり興奮させられた。できればそのままエンディングに突っ走って行って欲しかった。どうしても一旦落ち着いてしまうためテンションが途切れてしまう。
キャストでは、エミールを演じた新鋭ポール・キルシェの繊細な演技が印象に残った。初見の俳優であるが、目鼻立ちのくっきりした端正な面持ちに未来のスター性が予感される。母親はあのイレーヌ・ジャコブということで納得。
また、アデル役は「アデル、ブルーは熱い色」での熱演が印象深かったアデル・エグザルコプロスが演じている。共演したレア・セドゥは大ブレイクを果たし、今やハリウッドでも活躍するようになった。一方、彼女の名前は余り見る機会がなかったので久しぶりに本作で見れて安心した。
尤もらしいが。
獣人が好きなので、人間から動物になるの良いじゃん。って少し思っちゃ...
奇妙な病が蔓延した世界
認知症や、ALSなどの病を想像した。
自分が失われていく、または未知のものになっていく恐怖はいかばかりか。
気がついたら体に剛毛が生え、鉤爪が生え、無意識に野生動物の本能が目覚めていくのを黙ってみているしかないのだ。嘘だと言って、と叫びたくなると思う。
身内が病に罹っても悲劇。
家庭内で何とかしろ、でないだけマシなのか。
原因不明なので治療も手探り。ウィルス由来らしいことだけは分かる。
凶暴化してしまうこともあり、国の政策では新生物は施設に隔離ということになる。
その昔の、ハンセン病の患者のようでもある。
最近のパンデミックでも、初期は似たようなものだった。
現実的には、凶暴な新生物が事故で大量に野に放たれたら怖い
共存はできるタイプとできないタイプがあるだろう、ひとまとめで同じ対応はできないと思う。
原因不明の突然変異により、人間の身体が徐々に動物と化していく奇病が蔓延した社会が描かれ面白かったが、ヨーロッパ映画らしく長い。丁寧というか。
鳥人間フィクスがなんだかひょうきんで、フランス映画っぽい存在。
気の毒なヒトなんだが笑ってしまった。
エミールとのひとときの友情に温かいものを感じたが、エミールを庇ったんでしょうか、哀しかった。
ラストは、あれしかないと思えど父の気持ちに泣けてしまう。妻を奪われ、唯一の家族である愛する息子を、たった一人で野に放つ。身体に悪いポテチ貪り食って、これでいいんだ、これしかないんだ、と嗚咽に耐えていたよう。
日本人だったら周囲へのメイワクとか色々慮って施設に入れちゃうかも。
もし自分がこの病に罹ったら、鳥がいいなとちょっと思った。
空飛んでみたいです。
父親の子離れ映画でもある。
特殊メイクが 凄かった(☆o☆)
家族愛や親子愛を描いた優しさに包まれたフランス映画。 本年度ベスト!!
予告編でパニック系の映画を想像するも、全く違う素敵な作品だった!
近未来のお話。
人間が動物化するパンデミックが発症する設定。
動物になってしまったラナの妻。
フランソワか動物になり息子のエミールと妻を探す感じのストーリー。
本作は人種差別を動物に例えた感じの作品って印象。
ラナと息子のエミールが妻を探している中、エミールの体にある変化が少しずつ現れるも、エミールの彼女の優しさが印象に残る。
エミールと鳥となった男性の関係も良かった。
鳥の男が少しずつ鳥となり言葉を失って行くシーンが悲しい。
エミールを救う鳥の男に泣ける。
夜なのに空を飛べるのか?
気になるところ(笑)
ラストにラナがエミールを救う悲しい選択は正解なのか分からない。
悲しい別れに泣けた。
何の動物に変化するのか分からないので、もし感染したら当たりの動物かハズレの動物なのか?
かなり気になると思いました( ´∀`)
共生・共存
人間がさまざまな動物に変異する奇病が発生している近未来SF。
変異した人間(新生物)は隔離され施設に入れられ、
逃げ出した新生物は迫害され、しまいには殺されたりする。
未知の病気にかかると、このように対応する現代人間への警告なのかなとも思う。
この作品では新生物がいる世界としてSFストーリーとしているが、
本質的なことは、人間同士でも共生・共存が困難な昨今、
新生物を人間の敵としたときに、人は結束する。そこにそうではない人がいるのが救い。
ゆえに、人間同士なんだったら、政治思想や宗教が違えども共生・共存できるはずでしょ?
との問いにも思えた。
本作で最も心揺さぶられたのは、車の中のフランソワとエミール親子の会話シーン。
前半は新生物となった母との想い出の曲を大音量で鳴らし、窓を開けて大声で母親の名前を呼ぶ。
後半は親子でスキーへ行った際の想い出話をし、フランソワがエミールを逃すシーン。
ここは胸熱だった。
人間が動物に変異する、新生物に注目しがちではあるが、
観てみると本質は上述のようなことにあったと思う。
実に鑑賞後感が良い作品だった。
父の家族への愛が良かったです!泣きました。
いやあ、凄く良かった。父親の家族への愛に泣きました!
人間が動物に変わってしまう謎の感染症が流行するパニックホラーかと思って観に行ったけど全然違いました。
謎の感染症がどんどん拡がり人々を恐怖に陥れる。人々は恐怖のあまり
感染者を殺してしまえと口々に叫ぶ。
そんな中、父・母・息子の3人家族にも感染者が。母が感染しどんどん外見が動物に変わりやがて理性までも失っていく…。
父が凄くいいんだなあ。どんなことが起ころうと冷静でそして母を愛している。
やがて息子も感染。息子を演じたポール・キルシュ君良かったですー。私の一推しです。演技が上手い、美しい顔、脚本に対する理解力、度胸等どれを取っても一級品です。正に逸材。きっとフランス映画界を背負って立つ大俳優になると思います。
家族愛の物語に泣けます。どんな困難があろうと冷静でぶれないお父さん素晴らしすぎました。
外見で差別する人々への警鐘も感じ色々考えさせられる映画でもありました。
異形の世界で、愛を貫けるか。
「この世界で、人間は動物になる」というキャッチコピーと、異形でありながらどこか美しさを感じるクリーチャーデザイン。その手の物が大好物の私が鑑賞しない訳もなく劇場へ。
人間が次第に知性を失い、動物の姿へと変異してしまう奇病が発生した世界。「新生物」と呼ばれるその病人たちは隔離され、人々はその異形と凶暴性に恐れを抱いていた。
そしてある日、移送中の事故によって新生物たちが野に放たれてしまう。主人公フランソワは息子のエミールと共に、事故で行方知れずとなった新生物の妻・ラナの捜索を始めるのだが…。
この映画のウリは何と言っても、異形化した「新生物」たちである。完全に獣化する前の段階の左右非対称なそのデザインはまさに「奇病」と呼ぶに相応しいもの。しかし、異形の中にどこか美しさを感じる。流石は美の国フランスといったところか。そして言わずもがな彼らは人間、差別・隔離される苦しみ、悲しみ、恐怖を当然抱いている。役者の熱演もあり、その感情がひしひしと伝わってくるようだった。
様々な意味で「新たな世界」に足を踏み入れて行くエミールと、必死に妻を探し続けるフランソワ。そして増加していく新生物絡みの事件と、次第に高まっていく新生物排除の機運……。
差別される異形たち、という設定がありながら、メインとなるのは徹底してフランソワとエミールの親子、そしてその親子愛だ。ジャパニメーション等であれば「共存出来るのか」等を主軸に置きそうなものだが、非常にミクロな部分をメインに据えた事で取っ散らかる事なく纏まっている。
新生物やそれらへの差別が何のメタファーなのかは意見の割れる所であろうが、様々な解釈が出来るはずだ。私はやはり記憶に新しいCOVID-19が頭に過った。
音楽の使い方も印象的で素晴らしかった。BGMを使うシーンを極限まで絞る事で、メロディーが記憶に焼き付く。映画音楽でありながら、どこか民族的な響きのある良い劇伴だ。
差別され排斥されても、愛を貫くこと、「生きる」ことの素晴らしさをこの映画は教えてくれる。世界に差別がある限り、このメッセージ性は普遍的な物だろう。
寓話と教訓
大きな盛り上がりはないけど
設定がとても面白い。
新生物に変化してしまう理由や
なぜその動物になるのかも
判明していない世界観なので
たこ?!とか
それは昆虫なのでは?と言った
「動物」に転換してしまうのは
それこそ世界観が狂うのでは?と
思ってみたりしたけれど
それでも美しい森と
息子エミールに惹き込まれます。
妻を失い(新生物に転換した)
残された息子までも失いかけた時
父親が取った決断に
それまで分かり合えなかった父子が
深く繋がれた。
「狼は時速40~50kmで走ることが出来る」
人間が動物に変異する
変わらない人々は、大きく膨らんでゆく彼等を殺戮しようとする
変異した妻を探し求める夫の情愛も凄いが、息子も動物へ変わり始める
息子が素敵な青年だけに憐れにも感じるが、彼と共に鳥人間の羽ばたきに感動する
父は息子を森に放つ
何処までも走って行け!
多面的な問い
人間の肉体が様々な獣や鳥・タコなどに変貌してしまう奇病が広がり始めた世界を描く物語です。このお話の舞台となるフランスでは、発病の兆候が見られると特殊な収容施設に強制的に入れられてしまいます。一方で、社会では発病者への偏見・侮蔑・排除が進みます。それ故、発病した本人や家族はそれを必死に隠そうとするのでした。こうした事態はコロナ禍での騒動のコピーに見えます。様々な思惑が錯綜し、先行きが全く見通せなかったあの時に本作の想を練ったのではないでしょうか。
しかし、本作は単なるパンデミック物語ではありません。既に獣に変貌して森に逃げた母を持ち自身も感染した少年と父の親子物語でもあるのです。思春期の少年として父への反発を感じながらも父からの助けも求め、父も何とか息子に手を差し伸べようとします。でも、何が「助け」なのかが分からないのです。
そして、もう一つ。本作は「人間の定義」をも問うていると思います。完全にタコになってしまって言葉も喋れず意思の疎通も出来なくなった存在は最早「人間」ではないのでしょうか。いや、まだ人間だろうと思いますが、本当に「人」として相対する事ができるでしょうか。もし、人間でないとするならば、その境界線はどこに引けばいいのでしょう。とんでもない例かも知れませんが、問うているものは意外と深いのでした。
鑑賞動機:あらすじ10割
特殊な設定で一点突破してくるタイプと思いきや、じっくり感情や関係性を描く。それだけに逆に特殊効果などの見かけが邪魔に見える。まあ普通にやったら、ありがちな話にしかならないかもしれないので、これで正解だったのかもしれないけど。
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