動物界のレビュー・感想・評価
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人間が動物に変異する
変わらない人々は、大きく膨らんでゆく彼等を殺戮しようとする
変異した妻を探し求める夫の情愛も凄いが、息子も動物へ変わり始める
息子が素敵な青年だけに憐れにも感じるが、彼と共に鳥人間の羽ばたきに感動する
父は息子を森に放つ
何処までも走って行け!
多面的な問い
人間の肉体が様々な獣や鳥・タコなどに変貌してしまう奇病が広がり始めた世界を描く物語です。このお話の舞台となるフランスでは、発病の兆候が見られると特殊な収容施設に強制的に入れられてしまいます。一方で、社会では発病者への偏見・侮蔑・排除が進みます。それ故、発病した本人や家族はそれを必死に隠そうとするのでした。こうした事態はコロナ禍での騒動のコピーに見えます。様々な思惑が錯綜し、先行きが全く見通せなかったあの時に本作の想を練ったのではないでしょうか。
しかし、本作は単なるパンデミック物語ではありません。既に獣に変貌して森に逃げた母を持ち自身も感染した少年と父の親子物語でもあるのです。思春期の少年として父への反発を感じながらも父からの助けも求め、父も何とか息子に手を差し伸べようとします。でも、何が「助け」なのかが分からないのです。
そして、もう一つ。本作は「人間の定義」をも問うていると思います。完全にタコになってしまって言葉も喋れず意思の疎通も出来なくなった存在は最早「人間」ではないのでしょうか。いや、まだ人間だろうと思いますが、本当に「人」として相対する事ができるでしょうか。もし、人間でないとするならば、その境界線はどこに引けばいいのでしょう。とんでもない例かも知れませんが、問うているものは意外と深いのでした。
鑑賞動機:あらすじ10割
特殊な設定で一点突破してくるタイプと思いきや、じっくり感情や関係性を描く。それだけに逆に特殊効果などの見かけが邪魔に見える。まあ普通にやったら、ありがちな話にしかならないかもしれないので、これで正解だったのかもしれないけど。
ストーリーが面白い!
新鮮で鮮烈
フランス語で字幕というのは物心ついてから一回もない。恐らく初めての体験だ。
いきなり、ドキュメントのように近未来が始まる。
ついていけない人も多いのではないか。まぁ、そんな人ははなから見ないとは思うが。
でも、違和感あるよね。
慣れるまで少し時間がかかった。
父親役と子役と母親役、三人のドキュメンタリーだ。
父親の愛はぶれない。
例え、母親や子が動物に変わろうとも。
なんという深い愛情だろう。
子と鳥になった人との交流も見ていて清々しかった。
タイトルが動物界なのだから、人間と動物が共存することになるのであろう。
終わり方はこれしかないような気がした。
果たして動物たちは生き延びられただろうか。
前途多難な子供に幸せあれ。
ホラーとは呼べないホラー
一つ間違うと”ゲテモノ”になりそうなテーマと内容だが、むしろ、質の高い近未来ものの映画になっているのではないか。近未来物の佳作というところでは、内容は全く異なるが、ソイレントグリーンを思い出してしまった。それは兎も角、二時間以上のやや長めの映画を、グロテスクな内容と表現にもかかわらず、なぜに飽きさせず見られたのか。一つは、人が動物(映画では、”新生物”と呼ばれているが)になる病気のメカニズムの説明は一切なく、それが、ややもするとこの手の映画が、信じがたい事象を観客に信じこませ様とするあまりに、こじつけの理屈で”臭いもの”になるところを、逆に回避していること。一つは、新生物を、単純に人間の敵と位置付けず、さりとて、同情すべき弱者とも、ヒーローとも描かず、運命として受け入れる存在として描くことで、Real感を出していること、そのほかの要素もあるが、決定的なのは、主演の二人(ロマン・デュラスとポール・キレシュ)の演じる親子が、まさしく名演であること。
説明には、ホラー映画とあるが、決して、ホラーではない。SFもしくはヒューマン映画と呼んで差し支えあるまい。
パパのママを愛する姿勢にキュン
父親の決断に涙
シビル・ウォー、ジョーカー~としんどい良作が続き、「動物界」こちらもずっしりくる良作(バイオホラーではない)。
動物に変異する奇病が流行るが、その時人は…、というもので、隔離や偏見、それによる分断を描く。
だんだん獣に変化する息子を持つ、父親フランソワの決断は涙なしには見ることはできない。
「生きろ」という台詞はもののけ姫以降、邦画では使い捨てのように唱えられてきて半ば陳腐になった感があるのですが、今回は久々に琴線に触れました。
それまで、フランソワが執拗に妻を捜していたのは生存確認でもあるけれど、いわば自分が寂しいからでもあるんですよね。家族が変化して、自分の元にいるよりありのままの姿で生きいてもらうことが、家族にとって幸せなんだとようやく決断する。
たとえその先に、野生において厳しい適者生存のサバイバル生活が待っていようと、自分で選択することの自由を考えると、無理矢理姿をねじ曲げられ、囲われて生活するよりいいわけです。
しかしフランソワが今後、身をもがれるような孤独に耐えることを考えると、やはり同情してしまうわけです。鑑賞後に自分だったら、どうするだろうか?と自問自答させられます。
それにしても人間はなぜ、つかずはなれず共存する、という手段をとれないのだろうか?理解できない存在を憎む必要はない、はず。
平たくいえば愛の物語なのですが、添加物の危険性や改造された森林の脆弱さなど、フランソワの台詞をかいつまんでいくと、愛のレイヤーの下に、人間への天罰という黙示録のようなレイヤーが隠されていると受け取れなくもない。
立ちこめる黒雲や大雨などはメタファーなのかも。
自分の居場所
「ぼくのお日さま」「ロボット・ドリームズ」と言ったように、2024年下半期はミニシアター系の映画が度々話題になるから映画好きとしてはすごく嬉しい。本作も全国上映館20館足らずにも関わらず、話題沸騰で絶賛の嵐。フランスでスマッシュヒットしたらしく、完全にノーマークだったけどこれは行かなければと、慌てて鑑賞。
タイトル、概要を読んだ限り、ゾンビ映画のようなモンスターパニック映画かと思っていたけど、正反対と言えるほど印象が違った。とても他人事には感じられない、リアリティ溢れる恐ろしく苦しい人間ドラマ。これはすごい。不覚にもめちゃくちゃ食らってしまった...。
言わば"見える化"した感染症が猛威を振るってる世界の話であるため、つい最近まで我々の日常を奪ったCOVIT-19のことを想像せざるを得ない。パンデミックが齎す世の中の変化。いまとなっては馬鹿らしい話だけど、あの当時は感染者を人間としてではなく、まるでケダモノかのように社会から遠ざけ隔離し、本作の動物変異の奇病に侵された人々と同等の扱いを行っていた。
だから本作は何もただの創作物では無く、人間の心理描写を動物という形で具現化したノンフィクションスリラーと言える。見た目がキモイ。我々人間様と同じ世界に住んでいい生き物では無い。そんな理由で現実世界との遮断を図る。だが、ここで終わらないのがこの映画の魅力。
一度悪い印象を与えてしまうと、名誉を挽回するのは難しい。人間は未知なるものに対する警戒心が一際強く、たとえ小さなミスだとしても危害を加えてしまったり、悪影響を与えてしまったのなら、そのもの全てが悪いものだというレッテルを貼る。そして、獲物を見つけたかのように過度に攻撃を始める。
「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」ではそのような人間の自己中心的な考えと傲慢で悪どい所業が醜く描かれており、あそこまではないものの、本作もかなり被る部分がある。また、「もののけ姫」の〈自然界と人間界の共存〉というメッセージもまたこの映画の根幹にあり、狙いを定めた標的は絶対に逃がさないという、人間の恐ろしさがストーリーに込められていた。
このように、幾度となく描かれてきた普遍的なテーマをベースに置きながら、世界中の様々な映画を通して辿り着いたと思われる、この映画ならではの独創的な物語が全編繰り広げられており、その先に監督が込めた怒りとも捉えられる強いメッセージが、もうズタズタになるほど心に響いてしまった。
人間が動物に進化してしまうSFクリーチャーものとしての面白さももちろんあって、「エイリアン ロムルス」に次ぐ造形美に惚れ込んでしまった。というか、全身の体毛が濃くなったり、乳歯がポロポロと取れたり、爪が鋭くなったりと、進化過程があまりにリアルで震えたよね....。いつ起きてもおかしくない。そんな説得力があった。
面白いとか感動するとか、そんなことすら言いたくない。ダラダラと書いてしまったけど、少しでも興味を持った人は是非とも鑑賞して頂きたい。いまの世界の状況と相まって、色んな感想が湧き上がってくるし、自身の感じたことを話したくなるに違いない。
人間から動物に進化してしまう病が流行っている遠くない未来。人間と"動物人"は果たして共存することが出来るのか。そして、病は終着を迎えるのか。2024年ベストはもう変動することがないと思っていたが、ここに来て衝撃作を目の当たりにしてしまった。。。
どうぶつの森
シンプルな展開と高い描写技術
半獣半人の描写は絶妙で、適度に怖く、適度に可愛く見える。ストーリーはシンプルではあるものの、そのお陰で描写のインパクトをよりストレートに感じることができる。
友達作りが上手い主人公とやや押し付けがましいものの家族を愛する父親、理由なく人を襲わず食料をくれた主人公に礼を言う鳥人をはじめ、世紀末的な設定ではあるものの、主要キャラクターには好人物が多い。
奇病の流行による対立やパニック系のストーリーを期待して観に行くと期待外れとなるかもしれないが、個人的には楽しめた。
エモーショナル
隔離と侵攻の現代に希望を描いた近未来SFパンデミック
過去のSFパンデミックでは
主にディストピアを描いてきたが
本作では近未来のフランスが舞台だ。
夜よりも日中のシーンが多く
暗闇でテーマを曖昧にせず
観客に明確なメッセージを伝えよう
という覚悟を感じさせる。
異質な存在に対して隔離と攻撃の選択肢しか
持ち合わせていない作中の街の人々は
パレスチナ侵攻や数々の虐殺が同時に進行する
現代に生きる我々、虐げられていない者であり、
虐げられる存在にとっての希望は何かを問いかける。
虐げられる存在とそうでない存在。
作中では親子の絆そして青い恋だけが
その隔たりを超える。
変貌する肉体は成長のメタファーとしても扱われ
子が親の元から巣立つという成長物語の側面も
併せ持つ多重構造となっている。
斬新な世界観のエンタメ作品でありながら
痛烈なメッセージを突き刺す名作。
せつなくて泣けた
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