「ガリアーノだけに、無類におもしろいドキュメンタリーに仕上がっている一作」ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ガリアーノだけに、無類におもしろいドキュメンタリーに仕上がっている一作

2024年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ディオールなどの有名ブランドのデザイナーとしてファッション界に君臨していながら、2011年の舌禍事件で表舞台から姿を消したジョン・ガリアーノ。破天荒な人生と現実感を失うほど煌びやかなモード界など、取り揃えられた材料を見ると無類に面白い作品になることは鑑賞前から想像がおそらくその期待通りの作品です。

ガリアーノ自身の回想という形で展開する映像は、彼が心酔しているというアベル・ガンスの『ナポレオン』(1927)の映像を差し挟みつつ(彼の人生が驚くほどナポレオンと重なり合っていることがわかる)、非常に無駄なくキレが良い編集を施しており、結果として最初から最後まで目の離せないドキュメンタリー作品となっています。

多大な業績を成した人物のドキュメンタリーは、往々にしてストーリーを見失いがちになったり、抽象的で退屈な賛辞のつるべ打ち、になりがちなんですが、本作はガリアーノのデザイナーとしての才能と業績をきっちり見せつつも、彼の到底許容できない人間性の欠落をも容赦なく暴き立てています(しかも本人は全くその自覚がない)。

舌禍事件前後の彼の言動がいかに不適切なのか、インタビューを受けるガリアーノ自身の言葉で明らかになる過程が非常にスリリングで、突っ込みどころも満載。まず謝るべきはその人じゃないだろ……、とか。

彼のキャリアを網羅した映像、写真のパッチワーク的編集は、目まぐるしいけどまさに眼福。ショーの場面を見るだけでも十分にチケット代に見合った満足感が得られます!

yui