「受験映画より、素人が美術の世界に入っていろいろ経験する体験型の映画にしてもらった方がよかったような気がします。」ブルーピリオド push6700さんの映画レビュー(感想・評価)
受験映画より、素人が美術の世界に入っていろいろ経験する体験型の映画にしてもらった方がよかったような気がします。
原作では、受験ドラマ以外にも素人が美術の世界に入り、様々な経験をする体験記の要素が含まれています。
しかし、映画では上映時間の制約か、その部分がほぼカットされ、完全な受験ドラマになってしまっています。
受験ドラマとしては面白いのですが、やや違和感があります。
通常、受験ドラマは主人公が超難関校を目指す設定で、合格しなければ物語として成り立ちません。
しかし、現実では超難関校に合格できるのはごく一部の人だけで、何浪しても入れない人も多いです。
そうした人々にとっても人生の一大事であり、必死に努力しているかもしれませんが、そういう人が主人公のドラマはあまり描かれません。
特に特殊な事例でない限り、人を惹きつけるドラマにはなりにくいためです。
結果として、エリートを礼賛するような印象を受けます。
『カイジ』の利根川の「勝つことが全てだ!勝てなきゃゴミだ!そもそも勝もせず生きようとすることが論外なのだ。」というセリフを思い出しますが、この映画でも同じようなメッセージが感じられます。
自分がエリートに嫉妬しているのかもしれませんが、藝大に合格したからといって何なのだろう?という気持ちもあります。
もちろん、藝大に入れば多くのことを学べるし、選択肢が広がることや経歴に箔がつくこともあるかもしれません。
しかし、基本的に芸術家にとって学歴は必須ではないように思えます。
美術を学術的に研究したいならトップクラスの大学に進むのも意味があるかもしれませんが、それ以外の理由では必要ないのではないでしょうか。
美術の世界で競争的な要素を持ち込むなら、受験しかないのかもしれませんが、映画では受験に重きを置きすぎている印象があります。
映画としては時間の制約もあり仕方がない部分もありますが、素人が美術の世界に入り、様々な珍しい経験をしていく体験型の映画の方が良かったのではないかと思います。
映画では実物を映し出せるので、迫力が出て原作以上の表現ができたかもしれません。
主人公が高校生であるため、純粋な興味から美術の世界に入り、その延長線上で藝大を受験するという流れの方が自然だったのではないでしょうか。
例えば、乃木坂46のメンバーで藝大に合格した人がいますが、彼女は藝大に通いながらアイドル活動を続けています。
今後どうなるかはわかりませんが、もし彼女が芸能界で成功するなら、最終的には美術ではなく芸能界に進むのではないかと思います。
