「好きなことをする努力家」ブルーピリオド 赤ヒゲさんの映画レビュー(感想・評価)
好きなことをする努力家
マンガ大賞なんですね。物語の骨格がとてもいいなと思いました。青春映画というと恋愛ものが多い中で、自分の進路を探求するというもう1つの大きなテーマを真正面から描いていて、共感しました。萩原健太郎監督作品は初めて観ますが、好みの演出かなと感じました。特に間の取り方に好感を持ちました。過剰なほど膨大な情報にさらされる現代人は、いかに短時間に情報収集・取捨選択するかというタイパに追われていて、映画でさえ移動時間中にスマホで観たり、倍速で観る人ももはや珍しくないようです。でも、「たくさん知ってる」だけで心底満たされることはないだろうと思うことがあります。今作は、主人公・矢口八虎(眞栄田郷敦)が青い絵を描く前と後の変化が見所でした。前半のスピード感とは変わって、自分の課題に向き合う後半は、答えに窮し、思うように進めなくなり、じたばたする反面、地に足が着き、自分の本心を言葉を選んでしっかり間をとって話すようになります。その時々の郷敦の表情がいいのですが、とりわけ美術教師・佐伯に扮する薬師丸ひろ子との対話がよかったですね。恩師との出逢いが人生を変えることがある、ということをいくつかのシーンでしっかり描いていて、心に響きました。とても好感がもてる作品でした。
コメントする