「現代の目で観れば「普通の恋愛」。なおみにとってはハッピーエンド。少年の魅力が全くない、桝田幸希は魅力的。」痴人の愛 リバース ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
現代の目で観れば「普通の恋愛」。なおみにとってはハッピーエンド。少年の魅力が全くない、桝田幸希は魅力的。
超有名小説を現代に時代を移し、男女逆転版として映画化。
ある日、私立高校教師なおみは、ゴミ捨て場でゆずると名乗る少年を拾う。
最初は、純粋に立派な大人に育てるつもりだったが、次第に愛情が高まり始める。
前半のなおみのワクワクした感じは、まさに恋愛。
新婚か、付き合い始めのカップルのように盛り上がるが、やましい気持ちはない、立派な大人に育てなければ、と自分に言い聞かせる様子は実にいじましく可愛らしい。
その気持ちは遂に一線を越えてしまってからは、嫉妬の気持ちが抑えられない。
やがて、どっぷりとつかってしまい、逃れられず、何でも言うことを聞くからいてほしいとすがってしまう。
終盤になって、なおみが大切にしていた想いを、「おままごとの結婚」と一言で片づけられてしまったときの、なおみの絶望もまた、とっても切なく、愛おしい。
上から目線で見下していた、なおみの傲慢さが招いた結果だった。
しかし、ナオミにとってはハッピーエンドなのかもしれない。
さて、古典的名作を現代に舞台を置き換え、さらに男女逆にしたことで、普通の恋愛でしかなくなってしまった。
原作の持つ、異常さは感じられない。
現代では、ホストに全財産をつぎ込んで、身を持ち崩す女の話なんて珍しくも無い。
さらに、本作の肝、「少年」が全く魅力的に見えないから、説得力がまるでない。
オーディションに時間をかけられない予算のせいか、はたまた、主演男優の所属事務所との大人の事情なのだろうか。
ゆずるは、もっと危うい幼い少年の魅力が無くては説得力がない。
また、脚フェチなら、しゃぶりつくような、せめてほおずりするような肉感的な表現が必要ではないか。
全てにおいて、きれいごと過ぎる。
現代では、何事もきれいにあっさりと表面的で、どろどろした愛憎は不要なのだろうか。
ラストカット、拾ってくれて「しめしめ」みたいな安っぽい顔の演技は不要!
わざとらしい過剰な演技は不要!
その先起きるであろう顛末を微塵も感じさせないような、純真で儚い美しい表情が必要だ!
そうでないならtラストカットは不要!
説明過剰で本当に残念!
主演の桝田幸希が魅力的だっただけに、実にもったいない。