「意思表明のかたち」ドマーニ! 愛のことづて TSさんの映画レビュー(感想・評価)
意思表明のかたち
これが初監督作品とは思えない、非常に巧みな作りの映画。
監督上手い!というのが第一印象。
絶望しそうな日常のシリアスな場面に挟み込むコメディ、シュール、シニカル。
観客の想像を超えるラストシーン。
最後まで結末を明かさない思わせ振りの巧みさは、最近観た映画の中ではピカイチといってもいい。それが「裏切られた」とか「やられた」とか「よくやった」というものではなく、「そうきたか!」という印象で終わるのも、後味の良さ、爽快感に繋がっているように思う。監督に手玉に取られたと言ってもいいかもしれない。
この映画の主題は、虐げられていた女性の意思表明であって、それを女性参政権の付与というエポックメイキングな出来事を使って巧みに描いたところに妙味があると思う。
イタリアで600万人もの観客を動員したという事実からは、単なる懐古的な興味や、主演女優の人気だけではなく、現代イタリアにおいて女性の社会的な地位に関する問題が今日的課題であり続けているということが窺い知れる。
同じく家父長制社会で、敗戦し、占領され、ほぼ同時期に女性参政権が付与された日本でこのような映画が撮れるか?ここまで観客を動員できるか?ということを考えて、最後はなんだか残念な気分になってしまった。
共感ありがとうございます。戦後の女性の解放ということで言えば例えばNHKドラマの「虎に翼」でもそこは描けていたと思うのです。でもこの監督は2時間の映画で鮮やかにやってのけた。そこが凄い。
監督上手いですよね。私はこういうのがさらりとできる監督は映画をよくわかっていて楽しみ方を知っている、映画を知っているんだと思いました。それから映画は常に「今」を捉えていて欲しい、クリティカルであって欲しいと思ってます。だからその意味でもこの映画は素晴らしいと思いました!