美しい夏のレビュー・感想・評価
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私には良くわからない映画でした。
原作も読了しました。もう古典と言っていい小説でしたが、よくわからず読み終えました。その勢いで映画を鑑賞しましたが、これもよくわからずです。
青春の一時期、ただ何となく生を謳歌できるような時があったような記憶がしていますが、私には50年も前のことなので、共感には至りませんでした。歳を取りすぎた証拠ですね。
盗んだチャリで走りだす
アメリアの病気(咳き込みまくるから結核かと思った)に重ね合わせるのは流石に穿ち過ぎで下品だけれども、誰かに惚れてしまうというのは感染症みたいなもので、予防していても罹る時は罹るしそもそも誰も予防なんかしない。免疫のなさそうなジーニアなら尚更だ。人生を謳歌しているように見えるアメリアは大都会トリノの象徴のようだが、「軽薄な男達より女同士」と吐露したり、性的に奔放にふるまいながらジーニアとだけは心身の距離を取って守ろうとするのはなんと「男前」なことだろう。「ドマーニ!」でも描かれていた当時のイタリアの男社会ぶりはここでも男達の無遠慮で高圧的な態度の描写や性行為を舐めるように露骨に撮ることで浮かび上がっているのだが、この男達にアメリアほどの「おとこ気」が無いのが皮肉というか情けないというか…
直前に観た「私たちが光と想うすべて」とは都会の扱い方が正反対みたいで面白かった。
夏で始まり、秋冬過ぎてまた夏🌻
何度も予告編を見てとても楽しみにしていたので原作も読んだ。筋らしい筋がない小説なので、どんな映画になるんだろうと思った。
映画は二人の女の子、ジーニアとアメーリアが中心。二人がダンスホールで踊る箇所と、二人が出会って二度目の夏の湖畔でハグするシーンで流れるドイツ語の歌 "Walzer fuer Niemand"(「誰の為でもないワルツ」)がいい雰囲気を映画に与えている。ただ、その歌の歌詞は寂しく孤独で悲しい。どんどん自分が消えていってしまう。視点はジーニアでもありアメーリアでもあると私は思った。アメーリアがジーニアの年齢の時に初めて経験したことをジーニアが順々に経験してゆく。煙草を吸う、都会のワクワクを経験する、アーティストの世界を垣間見る、自分のヌードを描いてもらう・・・。少しずつ大人の世界に足を踏み入れるジーニアを、アメーリアは共感と懐かしさと喪失感でいっぱいになって見つめる。二人で一人になる愛おしさを胸に抱いたのだと思う。ジーニアより経験もあり年上のアメーリアが、どうかするとジーニアに包み込まれて幸福感に満たされる顔にアメーリアの幼さと頼りなさが見えかくれした。それは、ジーニアと兄のセヴェリーノとの関係にも当てはまる。家事も収入も実家への手紙書きも妹頼り。黒シャツが沢山干されているのを見て、ジーニアはわかったろう:兄は大学の勉強もしないで、ムッソリーニに入れ込んでいる。そんな兄も、妹の成長と喪失を見守っているけれど。
年上のアメーリアは美しい。年下のジーニアはアメーリアより身長も低いし声も低い。年上設定のアメーリア役のディーヴァ・カッセルは2004年生まれ、年下のジーニア役のイーレ・ヴィアネッロは1999年生まれ。イーレ・ヴィアネッロは映画「墓泥棒と失われた女神」(ロルヴァケル監督)で初めて見て、その美しさと無垢に胸打たれた。これほど美しい顔が世の中にあるのかと思った。
若い俳優に期待!ヴィアネッロとディーヴァ・カッセル、そしてジーニアの兄セヴェリーノを演じたニコラ・マウパ(1998年生まれ)のこれからがとても楽しみ。
おまけ
誰もいないトリノの長い長いアーケードを雨の中、二人で走るシーンが気持ちよかった。それから、女性の衣装(帽子、ワンピース、ブラウス、スカート、カーディガン、靴、下着)のデザインと色彩が役割に合っていて美しかった。原作で、ジーニアはアメーリアのことを「ストッキングも履かないで」という印象を述べていた。映画ではジーニアもストッキング履いてないじゃない!と思ったが、履いていた。モデルとして初めて描いてもらうとき、衣服を脱ぐ場面でわかった。
1930年代のイタリア•トリノを舞台にした “A girl meets a girl”の物語
2020年代の日本の都市部で生活していると、四季のうちで「美しい」という形容詞がいちばん似合わない季節は夏なのではないか、と思うようになります。ただひたすら暑く、時折り「ゲリラ豪雨」とかいう、なんの情緒もない言葉で呼ばれる土砂降りの雨がコンクリートの路面に降り注ぐ季節…… でも、時間を90年近くさかのぼり、場所をイタリアのトリノに移せば、そこには本当に「美しい夏」がありました。この作品での美しい夏の描き方にヨーロッパ映画の伝統のようなものを感じます。序盤と終盤に出てくる湖のシーンは秀逸でした。ヨーロッパの地図では比較的南に位置しているようにも見えるトリノの緯度が北海道の稚内とほぼ同じということからわかるように、全体的に緯度が高く、夏冬の日照時間の差の大きいヨーロッパでは夏は美しくなければならない季節なのかもしれません。
この物語は1938年の夏に始まり、翌1939年の夏に終わります(もっとも、翌夏の風景は主人公の見た幻かもしれませんが、それはさておき)。主人公はトリノで兄と暮らす16歳の少女ジーニア(演: イーレ•ヴィアネッロ)。服飾店でお針子しています(フィアットの企業城下町で自動車産業のイメージが強いトリノですが、そこはそれ、ファッションの都 ミラノの西100kmちょっとぐらいのところに位置する街。この作品でも服飾店でオーダーされたり、登場人物が身に着けたりするファッションが素敵でした(私は主人公の帽子に目がいったかな)。そして、主人公が仲間たちと湖畔にピクニックに出かけたときに出会うアメーリア(演: ディーヴァ•カッセル)。アメーリアは自由奔放なタイプでジーニアより3歳歳上です(という設定なのですが、演じている役者さんの年齢は逆のようです。イーレ•ヴィアネッロは20代後半の年齢で16歳の少女を演じているわけですが、作品内容からしてホンモノの十代に演じさせるにはコンプライアンス上の問題があると思われ、二人の身長差とヴィアネッロの演技力の高さを考えると彼女でよかったと思います)。アメーリアは複数の画家たちのヌード•モデルをしています。
二人は惹かれ合い、いっしょに行動したりするようになります。アメーリアに憧れたジーニアは、田舎出の純朴な少女、兄思いのいい妹、仕事熱心なお針子、といったそれまでの人生の軸を大きく方向転換し、アメーリアがその年になるまでに体験してきたことを追体験してゆくようになります。
アメーリアはノワール映画におけるファム•ファタルのような役目をこの物語で果たしてゆくわけですが、アメーリアを演じたディーヴァ•カッセルが本当に魅力的でまさにファム•ファタルの典型のようでした。ただし、ノワールのファム•ファタルがその魅力で男を破滅に追い込んでゆくのに対し、ここでは女であるジーニアが道を踏みはずしかけますが、破滅の道をたどるのは実はアメーリア自身だったということになります。
道を踏みはずしかけの妹のことをよく見守っていたのが兄のセヴェリーノ(演: ニコラ•マウパ)です。終盤にある兄と妹の会話はなかなかよかったです。妹の兄への問い「最近、物語は書いてるの?」から、私は実はこの兄というのはこの映画の原作小説の作者 チェーザレ•パヴェーゼ自身の姿が投影されているのではないかと思いました(私自身は原作小説は未読ですが)。パヴェーゼはトリノとジェノヴァの中間ぐらいに位置する田舎の出身でトリノ大学で学んでいたそうで、職を得るためファシスト党に入党したこともあったようです。ただ、彼自身はマルクス主義者だったようだし、1938年時点では既に30歳でファシスト政権によって投獄された経験もあり、その時点で黒シャツ隊の活動をしているように描かれているこの物語のセヴェリーノとは完全には一致はしていないようです。まあ、いずれにせよ、彼にしろ、画家たちにしろ、この物語に登場する男たちは親の財産を食いつぶしてゆく没落ブルジョワジーみたいに描かれています。
そして、女たちのほうは、ジーニアはアメーリアに自分の未来を見、アメーリアはジーニアに自分の過去を見ていたようなのですが、ジーニアの成長と喪失、アメーリアの病いによってその関係が変化してゆきます。
ということで、この映画、ヨーロッパ映画の伝統みたいなものを感じ、私は好きでした。ミラノの街並みに雪が降るシーンでは日本の岩井俊二の作品がちらっと頭をかすめました。繊細でセンスのある映像、絶妙な音楽の入れ方あたりに共通点がありそうです。ラウラ•ルケッティ監督は今回が初見でしたが、次の作品も観てみたいと思いました。
デーヴァ・カッセルの存在感
16歳の少女が、年上の女性との出会いを通して、戸惑いながらも少しずつ、少女から大人になっていく過程を描いた作品。
ジーニアは、憧れの女性に近づきたい一心で、アメーリアの生き方を真似しようとする。
彼女のその自由さに惹かれ、美しさに見とれ、距離が縮まっていくたびに、心が高鳴っていく。
アーティストたちと過ごす時間、初めての恋愛、そして好奇心と不安が入り混じった初体験…
仕事に通い、どこか大人びて見えるジーニアではあるけれど、彼女はまだ16歳の設定。
夢のように見えた世界は、やがて自堕落になっていく生活や、過酷な事実を突きつけていく。
そして印象的だったのは、アメーリアを演じたモデルのデーヴァ・カッセル。
モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの娘の存在感ったら!
凛とした佇まいのなかに、ジーニアへの感情を通して垣間見える、心の弱さと陰り。
大胆だけど、どこか繊細で、目が離せない女性を演じてました。
若さゆえの過ちや揺れる気持ちを、まるで一冊の上質な装丁の本のように、美しく静かに描いた青春映画。
大好きだった、六十年代の欧州映画。
美しい感情を美しく描いた映画
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