「稚拙な頭で考えた犯罪論理は、自我抑制の欠如であっさりと崩壊する」#スージー・サーチ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
稚拙な頭で考えた犯罪論理は、自我抑制の欠如であっさりと崩壊する
2024.8.13 字幕 アップリンク京都
2022年のアメリカ映画(105分、G)
ポッドキャストでバズりたい女子大学生が同級生失踪事件を捜査する様子を描いたミステリー映画
監督はソフィー・カーグマン
脚本はウィリアム・デイ・フランク
原題は『Susie Searches』で、主人公のポッドキャストのコンテンツネーム
物語の舞台は、アメリカ・オクラホマ州のウェイド郡
大学に通っているスージー(カーシー・クレモンズ、幼少期:Ellie Reine)は、ポッドキャストにて「Susie Searches」を配信していた
幼少期に母アン(Jammie Patton)から「推理力」を褒められていて、それを活かそうと考えていた
母は病気療養中にて、その医療費なども稼ごうと考えていたが、一向にアクセス数が増えることもなく、フォロワー数もあって無いようなものだった
スージーは郡の保安官事務所に行くのが日課になっていて、そこで未解決事件の情報を仕入れようと見習いまがいの活動をしていた
保安官代理のグラハム(デヴィッド・ウェルトン)、保安官のロギンズ(ジム・ガフィガン)は無下にすることはなかったが、そこで何かが得られるということはなかった
ある日、保安官室にて給仕をしていた際スージーは、同級生のジェシー・ウィルコックス(アレックス・ウルフ)が行方不明になっているという連絡が入るのを聞いてしまう
ジェシーは有名なインフルエンサーで、瞑想情報や体験を発信していた
スージーはジェシーを見つければ有名人になれると思い、独自に調査を始めていく
そして、彼の叔父であるローレンス(Ryland Blackinton)に目をつけ、彼の所有する未登録の物件に誘拐されているのでは無いかと推測を立てた
その後、スージーはローレンスの物件を調査し始め、そして、郊外のある物件の地下室にて、彼を発見することになったのである
映画は、勘の鋭い人ならこの段階である疑惑が浮ぶのだが、物語は何の捻りも無いままに、想像通りに展開していく
後半は、どのようにスージーの嘘がバレるかを描いていき、彼女に疑問を抱くジェシーの友人レイ(アイザック・パウエル)なども登場する
だが、ローレンスは海外に行っていたために犯行は不可能と判明し、スージーは慌てて他の誰かを犯人に仕立てようと考える
それがバイト先の店長エドガー(ケン・マリノ)で、彼の頭髪を手に入れて、郡の証拠保管庫の「発見された髪」と入れ替えようと考えるのである
インフルエンサーを目指すポッドキャスターの暴走を描き、誰でも思いつきそうな自作自演をしていくのだが、あまりにも稚拙すぎて引いてしまうレベルになっている
この手の映画にありがちな「犯行確実性」を再現しておらず、小柄な女性のスージーがどうやってジェシーを襲って、あの場所に監禁できたのかというロジックがまるで明かされない
なので、実はレイが共犯で、2人の関係が拗れたために、振り向かせるために協力をしたとかの方が説得力がある
そうなると恋愛的な要素は無くなるのだが、本作のその要素はあって無いようなものだったので削除しても問題ないと思う
警察も彼女を疑っていたが、スージーの計画性の方が一枚上という感じに描かれていた
また、彼女は窮地に陥るたびに、どこかで読んだような犯罪心理学の文言を暗誦しているのだが、肝心なセルフコントロールができていないので論外のように思える
スージーの事件を再度掘り返すことは無理だと思うが、明らかにジェシーに真相が知られたということがわかっているので、精神的には破綻していくだろう
ジェシーも世間や警察が動かなくても、影響力のことを考えれば脅しの切符を手に入れたようなもので、彼がもしサイコパスならば、スージーは便利な道具に成り下がってしまうのかな、と感じた
いずれにせよ、犯行実証性がガバガバで、行き当たりばったりだし、都合の良いことが起こりまくるので、シナリオとしては最低の部類に入ると思う
唯一の見どころはラストシーンのスージーのチョンボだが、ボイスチェンジャーを使っていても口調や音などから女性の犯行だとわかる
ジェシーがあえて知らないふりをして利用するというオチがあったほうが狡猾で、もう数段階の展開を作れたと思うので、あまりにもあっけなさすぎて拍子抜けした、というのが率直な感想である