「怨霊少女vsスーパーばあちゃん」サユリ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
怨霊少女vsスーパーばあちゃん
映画史に残る怨霊退散の名言が生まれたね。
そのまま書いたらNGになって映画comに消されるから書きたくても書けないけど、強いて言うなら、“元気ハツラツのアレ”!
原作コミックはトラウマ必至らしく、もっと正統派のホラーかと思いきや、以上の事からコメディ要素もあり。と言うか、おバカ映画…?
しかしながら、ホラー、グロ、ブラック・コメディ、スポ根、初恋、悲劇、元気ハツラツのアレのポジティブ・メッセージ、最後は感動チックに。何か、意外や面白かったぞ!
中古物件ながら新居に越してきた神木家。両親、長女・長男・次男、祖父母。
昔太極拳をやっていて威勢があった祖母は今認知症を患っているが、念願のマイホーム。家族7人仲良く暮らし始めた矢先…。
長女が夢遊病のような症状となり、次男を怪我させる。そんな怪現象を皮切りに、父が死去。祖父が死去。次男が転落死。長女が自殺。母が自殺。…
長男・則雄は霊感の強い同級生女子・住田から家にまつわる話を聞く。
所謂事故物件。昔住んでいた家族の娘が亡くなり、その娘が怨霊となって取り憑き、則雄の家族を呪い殺した。
その怨霊娘の名は、サユリ。家の何処かから不気味な笑い声、幼い少女の姿や肥満の巨漢姿で時折現れ…。
序盤は正統派のホラータッチ。うすらぼんやりや突然現れるサユリ、じわじわ煽る恐怖演出、見せ方もなかなか。Jホラーもう一人の雄、白石晃士が手腕を見せる。
しかしそれ以上に、悲劇だ。念願のマイホームに引っ越してきたら、家族が次々変死していく。残ったのは冴えない長男と認知症の祖母。
幸せから一転、悲しみのどん底に。このままだったら鬱ホラー。
家族の無念を晴らす為に怨霊に立ち向かう。
頼りない則雄の協力者になったのは、霊感少女でも霊媒師でもない。
何と、おばあちゃん…?!
認知症の祖母が突然覚醒!
すっかり目が覚めてしまったわい!
家族の復讐。ヤツを地獄送りにしてやるんじゃ!
太極拳をやっていた昔の威勢を取り戻し、ナヨナヨ孫をしごく、しごく!
体力トレーニング、太極拳の訓練。
笑え。楽しめ。食え。生きろ。
パワフル&スパルタだわ、暴言だわ、手も足も出るわ、ハチャメチャ言動のスーパーばあちゃんだが、確かに言ってる事も一理あり。
相手は死者。悲しみ、怖さ、苦しみを見せたら付け込まれる。ならばこちらは漲る生の力で対しなければならない。命を濃くしろ!
ヤツが怯むような事を言ってやれ!
そこで則雄が咄嗟に発したのが、例の名言。ばあちゃんにしごかれ、則雄も強くなっていく。
ホラーから一転。スポ根要素や認知症時と覚醒時、まるで別人のような根岸季衣の見事な演じ分けと快演と強烈キャラもあって、俄然面白くなる。
ある夜、ばあちゃんが所用で外出。
一人で大丈夫…と強気でいた則雄だったが、サユリも悪どい手で一瞬の隙を付かれ、窮地に。
則雄を心配した住田がやって来るが、サユリに囚われてしまう。
そこへ、ばあちゃん帰還。サユリに対する奥の手。
連れてきたのは、サユリの家族。
…いや、連れてきたというより、手足を縛り、拉致ってきた。
ばあちゃん、それ犯罪!
おう、犯罪じゃ!
そう堂々言い放つばあちゃんだが、サユリの家族がした事はもっと重罪であった。
サユリの過去が明らかになる…。
かつてこの家で幸せに暮らしていたサユリ。両親と妹。
が、ある時、父がサユリに…。
それを目撃しながらも、見て見ぬフリした母。
誰も助けてくれない。
やがてサユリは引き籠りに。お菓子などを異常に食べ続け、細身の美少女から顔ブツブツ肥満体型に。
家族は崩壊。悲劇…いや、惨劇が。
両親と妹でサユリを殺した。
私が悪いの…? サユリの断末魔。
遺体は埋められ(後にばあちゃんが掘り起こしたが)、この惨劇そのものは公にならず家族も罪に問われる事はなかった。が…
サユリは性被害者であり、殺された犠牲者だった。しかも、家族に。
その積年の無念、怨み…。怨霊となって。
またまた一転して、サユリのあまりにも悲劇的なバックボーン。ここは胸痛い。
さすがのばあちゃんもこの時ばかりはサユリに同情。コイツらを好きにせい!
サユリは父親と妹を殺したが、毎日食事を用意してくれた母親だけは命を奪わなかった。
これでサユリも成仏…しなかった。
怨念は晴れず。ばあちゃんと則雄に襲い掛かる。
またまたまた一転して、ラストにバトル展開だが、チープなCGとちょっと蛇足感あり…。
が、則雄にとっては住田を取り戻さねばならない。
ばあちゃんの身体にも限界が…。あの娘が好きか? なら、好きという気持ちで闘うんじゃ!
住田が好きだ! 住田とやりたい!
…何を? な~んてツッコミはひとまず置いといて、サユリの身体の中で、若者たちが初々しい恋を叫ぶ。
(何かこのシーン、『もののけ姫』に似てるような…)
キャストでは根岸季衣が強烈インパクトだが、南出凌嘉と近藤華がフレッシュ。
荒唐無稽でツッコミ所満載でおバカ映画。
が、様々な要素を詰め合わせた娯楽ホラー。
作品に落差激しい中田秀夫や清水崇より、白石晃士はしっかり仕事している。
サービス満点のホラーやグロ描写。オフビートな笑い。
何だかサム・ライミが好きそう。いずれ、プロデュースでリメイクしたりして…?
ラストも良かったね。
怨念に取り憑かれたサユリだが、本当に欲していたのは…。
事件も解決。罰せられる者はきっちり罪に。
事件は解決したが、則雄のこれからを思うと切なくもある。家族は多く犠牲になり、ばあちゃんもまた認知症が戻り…。たった一人。
一瞬だけ、ばあちゃんが覚醒。
人生は理不尽。何かあったらばあちゃんがいる。
そう。ばあちゃんがいる。住田がいる。決して一人じゃない。
この晴れ晴れさ!
やっぱりこの名言で締め括りたいね。
元気ハツラツ!お◯んこまんまん!