「飯を喰え!!」サユリ なつさんの映画レビュー(感想・評価)
飯を喰え!!
押切蓮介氏のホラーは素晴らしく冴えていて大好きな作品。マジ怖い。
ホラーとギャグは紙一重との理念が合致していてそのギャップが激しくホラー色もその分、一層増す。
うまい。
確か今はホラーは描かないと記事を読んだ様な…惜しい。
「サユリ」もそんな作品だ。
まさかまさかの一発勝負ネタ。
新しく中古の一軒家に越してきた一家。
父、母、祖父、祖母、姉、兄、弟の7人家族。
大張り切りの父は真っ先に大きなダイニングテーブルを運び込み一家7人で食卓を囲む。
家族全員で仲良く食卓を囲むのって幸せの象徴だと思う。
新しい生活がウキウキで始まるが、祖母は虚空を怪訝な顔で見つめるもすでにボケているので家族は気にしない。
そして弟も不穏な空気を感じる。
もう、初日でおかしい。
最初に異変が起こるのは姉。
その姉の異常行動から連鎖的に家族がボッコボッコ死んでしまう。
7人で卓を賑わいをみせていたダイニングテーブルが歯抜け状態になり隣室には遺影が。対比したつくりがよい。
1番かわいそうなのがちびっこの弟。
この子のやられ方はなかなかの衝撃映像ではないか…と思う。
祖父、父、母、姉、弟
速攻で家族を失ったノリオ。
特に、弟→姉→母の亡くなり方がコンボで一気に亡くなりその様は一様に壮絶である。それを間近でみたノリオは泣くどころではなくもはや恐怖。
心中お察しします。
こっからが大勝負。
「すっかり目が覚めてしまったわぃ!!!!!」
「復讐じゃあ!!!」
え?!
ボケて夢の中にいたばあちゃんの復活である。
ノリオびっくり。
もともとボケる前はすぐキレて太極拳をやらされ、怖いばあちゃんだった事が序盤に語られるが、目が覚めたおばあちゃんは加えて激おこである。
祓うなんて生優しいもんじゃすまない!復讐じゃあ!!地獄へ落としてやる!!!
服装も原色バッキバキのタバコスッパスパ。
若さマシマシのキレッキレ。
ばあちゃんかっこよすぎやろ。
死者より生者の方が強い!!
ばあちゃんはスパルタでノリオによく食べ、よく眠り、体を動かし、部屋を清潔に保てと叱咤する。
ノリオに太極拳を教え、魂を強くする様に厳しく指導していく。なんかベストキッド思い出した。
確かに、ばあちゃんのいうことは正しいんだよね。
これが人間のある姿。どれかが欠けてもどこかで魂の量は少なくなると思う。
あー、帰ったら部屋を掃除しよう…と観ながら我が身を振り返る。
少しずつ強くなっていくノリオ。
気力が戻り、冷静さを保ち、笑顔が戻り、飯をガツガツ喰らう。
ダイニングテーブルが見える隣室、家族達の遺影が飾られてる部屋のちゃぶ台でばあちゃんと向き合いながら。
一方でちょいちょい出てくるサユリ。
ばあちゃんの一喝には勝てないらしい。
なんて頼もしい!ノリオもだが、観ているこっちもばあちゃんの強さに安心する。こんなん惚れるっしょ。
あと、幽霊にエロトークしたら消えるって本当なのね。
後半、サユリの強力な霊となってしまった経緯なども描かれている。
かわいいが故に起こった悲劇。
見て見ぬふりをする母親。
無関心の妹。
ばあちゃんの作戦でその醜い姿で現れたサユリ。
少女時代のかわいさはなくブクブクと太り、ニキビだらけの真っ黒な姿。
父を刺し、妹を殴り、母だけは目を潰す。
食事を運び気にかけていた母親だけは生かす。
ただ、見て見ぬふりをした目は許せない。
さらにサユリとばあちゃん&ノリオの対決になる。
ここでキーパーソンとして出ていたのがノリオの同級生として霊感のあるスミダさん。彼女もノリオを助けようと画策するも囚われの身になっていた。
しかしノリオ渾身の魂の叫びによって助けられる。
このスミダさんが華奢で立ち耳で小動物のようでかわいいのだ。
やはり、霊はエロトークは嫌いらしい…
サユリは消え、忌々しい家は取り壊され、ばあちゃんもまた再び夢の中へ。
強くなったノリオはこのままばあちゃんの教えのまま真っ直ぐに魂を強く保ち生きていくだろうけど、ばあちゃんの復活を心のどこかで期待するほど惚れ込んでしまった今年1番の強キャラ。
アカデミー受賞作品や激しいハリウッドのアクション映画とか超越して こんなとんでも無く面白い作品推すしかないっすよ🔥
まあまあ怖いホラーなのにイケイケアゲアゲな痛快作品て笑
日本ホラーの完全復活と言い切れるくらいの作品すよ👍