「生放送TVショーを邪悪に彩るおもしろ怖さ」悪魔と夜ふかし 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
生放送TVショーを邪悪に彩るおもしろ怖さ
いわゆるファウンド・フッテージものには独特の”のぞき見感覚”を感じさせる作品が多いが、一方の本作は「1977年にTVで生放送され、失われたままになっていた番組映像」という性質上、司会者、ゲスト、観覧客、それにバンド演奏を盛り込んだ、TV番組ならではの祝祭的な賑やかさを伴う。このスタイルゆえ「誰も見ていないところで物が動く」という程度で収まらないのは当然のこと。序盤こそ平凡にショーが幕を開けるので、なかなか怖さのギアが入らず退屈に思えるかもしれないが、中盤以降、とりわけ一人の少女が登場してからは危険度がクレッシェンド的に変移し、是が非でもゾクゾクさせられる。1970年代ならではの時代、文化、ファッションに彩られた『死霊館』的なレトロ感覚を宿しつつ、人気や視聴率を追い求めるエンタメ業界ならではの悪魔主義を皮肉る視点すら併せ持つ。邪悪でありながら、絶妙な”おもしろコワさ”を突いた快作と言えよう。
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