「ネタは良いと思うけど、調理法が間違っているし、完成されて出されているとは思えない」IMMACULATE 聖なる胎動 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ネタは良いと思うけど、調理法が間違っているし、完成されて出されているとは思えない
2025.7.24 字幕 アップリンク京都
2024年のアメリカ&イタリア合作の映画(89分、G)
妊娠する処女の修道女を描いたホラー映画
監督はマイケル・モーハン
脚本はアンドリュー・ロペル
原題の『Immaculate』は「汚れのない」と言う意味
物語の舞台は、イタリア・ローマ郊外の田園地帯
アメリカからやってきたセシリア・ジョーンズ(シドニー・スウィーニー、幼少期:イザベル・デサンティス)は、助祭のエンツォ(ジュゼッペ・ロ・ピコーロ)に案内され無事に修道院へと辿り着いた
修道長(ドーラ・ロマノ)の命令を受けて案内役をすることになったイザベラ(ジュリア・ヒースフィールド・ディ・レンツィ)は、修道院のしきたりや習わしなどを説明し、この場所が老いた修道女の看取りの場であることを告げた
その後、部屋に招かれたセシリアが準備をしていると、ミラノから来たと言う奔放な修道女グウェン(ベネデッタ・ポルカローリ)がやってきた
彼女は暴力男から逃げてきた女性で、キリスト教には全く興味を持っていなかった
それどころか儀式に対して小言を言うなどが悪目立ちしていて、他の修道女からも要注意人物に思われていた
セシリアはアメリカの教区が閉鎖され、テデステ神父(アルバロ・モルテ)によってこの地に招かれていた
終生誓願の儀式を終えた後にようやく再会した二人は楽しいひと時を過ごした
その後も特に問題もなく、セシリアは日々の奉仕活動を行う中で、この地でのやり方を覚えていった
ある日のこと、気分が悪くなったセシリアは、修道院のかかりつけ医であるガッロ医師(ジャンピエロ・ジュディカ)の診察を受けることになった
ガッロは診断内容をテデステに報告し、フランコ枢機卿(ジョルジョ・コランジェリ)、修道長も集まってくる
何が起こったのかわからないセシリアに対し、テデスキは何度も「男性経験」について聞いてくる
それは、セシリアが妊娠していると言うもので、どこかで汚らわしい行為をしていたのでは、と言うものだった
だが、修道院に来てからは外出することもなく、院に来た際の健康診断でも問題はなかった
セシリアは「性交なき妊娠」と言う未曾有の出来事に巻き込まれ、次第に修道院内での扱いが変わっていくのである
映画は、枢機卿か神父、助祭などに昏睡レイプでもされたのかも、と言う雰囲気があるものの、まさかの「キリストのDNAを採取して復元する実験だった」と言うとんでもないものになっていた
聖母マリアがキリストを出産した時のような状況を科学的に生み出そうとしていて、その実験体にセシリアが選ばれていた
だが、映画内では「いつ注入された」とか、体外受精をおこなったのかなどの、ミステリー部分に関するきちんとした解答がなかった
あの研究室で「イエスのDNAを解析して複製」ぐらいまではわかるものの、そこから「遺伝子技術で何を行ったのか(精子を作成?)」はわからないし、それをいつセシリアに施したのかもわからない
おそらくは、冒頭で描かれていた「棺の中に入っているとき」か、あるいは「膣内検査をした時(健康診断で処女膜はあったと言う発言があった)」かもしれないのだが、明確な描写はなかった
遺伝子技術を使ってイエス・キリストを復活させようと言う目論見は面白いものの、それをセシリアで行う理由とか、志願者ではダメな理由なども描かれていない
特にイザベルではダメな理由は必要で、彼女が「実験のことを知っている」ように描かれているので、新人以外には周知のことになっている
それゆえにセシリアを選定するに至った理由(処女以外)が欲しかったと言うのが素直な感想である
いずれにせよ、アプローチとしては某恐竜映画と同じなのだが、その先の展開が雑なように思えた
前述のミステリーが残ったままと言うのもあるが、ラストにてセシリアは頭よりも大きな石を抱え上げて振り落とすとか、生まれた「異形」は見せないなども気になってしまった
個人的には、修道院から逃げ出すことに成功したセシリアが人知れぬところで無事に出産し、本当に子どもを産むと言うので良かったと思う
宗教上の思惑で作られたものが宗教を否定する場所で生き存える方が皮肉が効いていると思うので、それを一緒に逃げ出した仲の良い修道女(グウェンが最適だけど)と育てるラストでよかったのではないだろうか
そう言った意味も含めて、ネタは良いけど調理法を完全に失敗した映画だなあと思った