「巡り会えた奇跡」人生って、素晴らしい Viva La Vida バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
巡り会えた奇跡
すごく良かった。『最も功利的な結婚の契約、最も感動的な永遠の約束(原題直訳)』というルポルタージュの一部だけを題材としているそうで、いわゆる難病ものだが暗かったり後ろ向きだったりジメジメ湿っぽかったりせず、あくまで前向きな姿勢のところが良い。泣かせどころはもちろんあるものの過剰に泣かせに走るあざとさがなく、あくまでさらっと自然に見せてくれるのも良かった。それでいて腎臓病と人工透析や脳腫瘍の辛いところや大変なところもきちんとくわしくリアルに見せてくれる、しかもドキュメンタリーではなく劇映画として見せてくれるというところにも感心した。そういうのって日本映画にはあまりないような気がする。中国の難病ものの映画だと、2021年に観た『薬の神じゃない!』もそういう感じの映画だった。重い題材を広い意味でのエンターテイメントとして見せてくれるところがエラい。監督のハン・イエンの作品は日本のマンガ『カイジ』をアレンジした『カイジ 動物世界』を観てて、そっちもなかなか面白かったが、ここまで良い映画を撮れるとはびっくり。
主演のリー・ゲンシーとポン・ユーチャンも素晴らしい。以前の映画やドラマとはまるで違うキャラクターの人物をごく自然に演じていて、まさに若き演技派だ。美男美女すぎない2人だからこそとはいえ、素顔とは別人のように冴えない、というかポン・ユーチャンに至っては小汚い人物を演じながら、それでいてその人の魅力を余す所なく表現している。荒れた肌のメイクをしたリー・ゲンシーが後半どんどん魅力的になっていく姿もすごいが、それでも彼女の場合は最初からその可愛さが隠しきれないのに対して、ポン・ユーチャンの別人ぶりには本当に驚かされる。後半2人の心が通じ合っていくシーンはなかなかに感動的。デートシーンなども本当に楽しそうで、そこから再びシリアスな展開に向かう脚本の緩急の付け方も上手い。