「悲壮感皆無のタイムトラベル歴史改変ものだけど、ラストは某映画の裏エンディングに通ずる部分がありましたね」フューチャー・ウォーズ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
悲壮感皆無のタイムトラベル歴史改変ものだけど、ラストは某映画の裏エンディングに通ずる部分がありましたね
2024.5.16 字幕 T・JOY京都
2022年のフランス映画(101分、G)
2555年の地球を救うためにタイムトラベルをする男を描いたSFコメディ映画
原題は『Le visiteur du futur』、英題は『The Visitor from the Future』で、「未来からの来訪者」という意味
物語は、フランスで稼働している原子力発電所がメルトダウン寸前に陥っている様子が描かれて始まる
科学者のガブラローシュ(デヴィッド・コスカス)とデフナックス(ラファエル・カリール)がそれを止めようとするものの、説明書が中国語で書いてあるために読まなかった
そんな二人の元にどこからともなく謎の男(フローラン・ドリン)が現れる
彼はメルトダウンを防ぐためにそこを訪れたタイムトラベラーだったが、彼の奮闘も虚しく、原発はメルトダウンを起こしてしまった
そして、遡ること数十年前のフランス・パリ
そこでは、中国の企業との契約を結んだ国会議員のギルバート・アルベール(アルノー・デュグレ)が質疑応答に答えていた
記者たちのいくつかの質問の後、その場に潜り込んだ学生アリス(エンヤー・バルー)は彼に問いかける
だが、彼女は部外者だったためにその質疑には応じず、不法侵入したとのことで、警察に連行されることになった
アリスには活動仲間のシャルリー(ジェニー・レテリエール)とリュシアン(ヴァレンティン・ジーン)がいたが、彼らも一緒に捕まってしまう
その後、アリスの身元引受人として警察に来たのは先のギルバートで、アリスは彼の娘だった
アリスは環境問題に敏感で、古い技術の原発の誘致には反対の立場だったのである
映画は、原発事故をどうしても防げない謎の男(のちにキツネと呼ばれていることが判明)が、原発建設をさせないようにとさらに過去にいく様子が描かれていく
そして、ギルバートの行動を阻止しようとするものの、誤って彼とアリスを2555年に連れてきてしまう
そこでパリの未来を見たアリスは、なんとかして父を心変わりさせようと考えるのである
物語は、キツネがもうすぐ訪れる終末を止めようと奮起する様子が描かれ、この状況が改善されることが困る時空警察たちが阻止する様子を描いていく
時空警察のトップ・コンスタンス(レニー・チェリーノ)は、部下のマテオ(マチュー・ポッジ)、ルイーズ(オドレイ・ピロー)、ヴィクトール(ヴァンサン・ティレル)たちにキツネを追わせるものの、なかなかうまく行かない
キツネには恋人のイタチ(アサ・シラ、役名:ベレット)がいて、彼女はアンリ博士(スリマン=バプティスト・ベルフン)とともにコロニーのような場所を作っていた
そして、この世界にはアリスと同じように過去から連れてこられたラフ(ラファエル・デスクラック)という青年もいたのである
映画は、終始コメディ口調で進み、笑えない状況をコミカルに描いていた
冒頭のメルトダウン騒動のくだりからほぼコント状態になっていて、そのテイストで最後まで描かれていく
未来を救うために過去を改変するという内容で、ラストでアリスが取る行動は「某有名映画の真のエンディング」のように思える
他の作品のネタバレをするのはアレなので伏せるが、超有名なタイムトラベル系映画には「真のエンディング」なるものがあって、そこで描かれる悲しすぎる結末というものが、本作のラストに似通っていた
いずれにせよ、主人公が誰かよくわからない作品で、クレジットの順番は「登場順」になっていたように思う
実質的な主役はアリスで、彼女の行動によって未来が救われるのだが、その犠牲によって従来のタイムトラベル系で起こることが起こらないという流れになっていた
本作の特徴はそこにあって、その時空の歪みを許容することによって、息苦しいエンディングにはなっていない
コミカル調には悲劇は合わないので、ハッピーエンドになる結末を探した末に反則技を使うことになったのかな、と感じた