愛はステロイドのレビュー・感想・評価
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全体的には間違いなく良作、しかし終盤でサプライズニンジャが急に現れる問題作
舞台は1989年のアメリカの田舎町、町を裏で仕切る父を持つルーは同性愛者。ボディビルの大会に出るために旅をしているマッチョ娘のジャッキーに一目惚れして、その日のうちに口説き落として肉体関係をもってしまう。ラブラブな二人の平和な日々が続くかと思いきや、ジャッキーがとある事件を起こしてしまうというクライムサスペンスもの。
犯罪ものの話では定番ですが、二人が事件を隠蔽しようとしてどんどんボロがでてドツボにはまっていく展開で、これがまたテンポがよくて面白い。なんせ突発的な事件ゆえ完全犯罪には程遠く、どんどん窮地に追い込まれていくのですが、思わぬところで事態が急変したり、意外な真相を最悪のタイミングで知らされたりと、中だるみなしで終盤まで駆け抜けます。
ところがなぜか終盤にとあるトンデモ展開が1シーンだけでてくるのですが…これがまたどうみても賛否両論といいますか、サプライズニンジャ理論を実際にやってみた、的なノリなんです。
…あるいはシリアスなミステリーものの文章の合間にちくわ大明神が現れたとでもいうような…。そのシーンだけB級を一気に通り越してC級のバカ映画になってしまい、そのあとなにごともなかったようにしみじみとしたラストを迎えます…。しかしこちらは宇宙猫のままですよ…。
とはいえそのシーンに目をつぶれば良作であることも確かでして、とくにルーとジャッキーの破滅的な共依存関係はクィア、百合映画が好きならポイントは高いはず。なお、濡れ場が前半に4回ほどあるため(男女で1回、ルーとジャッキーの女同士で3回)、エッチなシーンが苦手な人は注意。ボディビルダーという設定だけあってジャッキーのマッシブな筋肉美も当然濡れ場で惜しげもなくさらしていて目の保養でした。
【“汚物は直ぐに掃除。そしてステロイド注射。”今作は美しきクリステン・スチュワートが演じるヒロインが家族の闇に巻き込まれるも、女ボディビルダーと状況を打破していくぶっ飛びムービーである。】
ー 原題は"LOVE LIES BLEEDING"であるが、邦題”愛はステロイド”のセンスが炸裂している。-
■トレーニングジムで働くルー(クリステン・スチュワート)は、町の裏社会を取り仕切る父(エド・ハリス)とはある理由で疎遠である。というか嫌っている。
そんなある日、彼女はラスベガスで開催されるボディビル大会を目指す筋肉ムキムキのジャッキー(ケイティ・オブライエン)と出会い、恋に落ちる。
だが、二人はルーの姉夫婦や父の抱える闇に呑み込まれて行くのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭、ルーがトレーニングジムのトイレ詰まりの掃除をしている。
その後の展開を考えると象徴的なシーンであるが、私は”相変わらず、クリステン・スチュワートは美しいなあ。けれど、目の下のクマが気になるなあ。睡眠はキチンと取らなきゃ駄目だぞ!”などと、自分の事は棚に上げ、余計な事を考えながら、ウットリ鑑賞する。
・だが、そのウットリ感は直ぐに吹き飛ぶ。
ナント、ルーとジャッキーのレズシーンが描かれるのである。どっちがネコだかタチだか分からないが、何となくルーがタチのような感じがする。ウーム・・。
・という事はさておき、姉の夫JJによる妻に対するDV事件が発生し、怒るルーと父だが素早くジャッキーがJJを一撃で殺害してしまい、ルーは慌ててJJの車に死体を乗せ”いつもの地の割れ目の場所”で車ごと突き落とし、燃やしてしまうのである。
■ここからの展開が、左斜め上を行くのでグイっと面白くなるのである。
町の裏社会を取り仕切る父を演じるエド・ハリスの存在感が抜群で、且つルーと犬猿の仲という理由も描かれて行くのである。
ルーがJJの車を運転している姿を見た、ルーの元恋人デイジー(アンナ・パリシニコフ)が嫌らしく、ネチネチとルーとの復縁を迫ってくる中、ナント父は捕らえたジャッキーに命じ彼女を撃ち殺させるのである。ウワワわー。
この辺りから、トンデモナイ展開になって行くのである。そんな状況下でもジャッキーはボディビル大会に出場するも(マジっすか!)、自分の行いを思い出しステージで吐瀉して敗退してしまうのである。
・そして、父は全てに片を付けようと、ナント、ルーを殺そうとするのだが、ジャッキーはルーから貰ったステロイドを注射して(更にマジっすか!)巨大化し、父を押さえつけルーは父の口に銃を突っ込み、FBIがやって来るのを待ち、二人で新たな道に進むのである。
<今作は、美しきクリステン・スチュワートが演じるヒロインが家族の闇に巻き込まれるも、女ボディビルダーと状況を打破していくぶっ飛びムービーなのである。
イヤー、凄かったっす。>
ルーへの愛がステロイド
脚本も映像もインパクト大で強烈な作品。
ルーとジャッキーの出会いから愛し合うようになるまで
実に恋愛映画さながらに、情熱的にお互いを求め合う姿に
は集中力を欠くことなく没入できた。
ルーのためには人をも殺すジャッキーのキャラクターが
明らかになってからは、明らかに物語の方向性が変わり
愛情の異常性が浮き彫りになっていく。
殺し方も自身の筋力をいかんなく発揮したえげつなさ
なのだ。
ジャッキーがルーを想うとき、体に異変が生じて
肉体が強化且つ巨大化する。
父親に犯罪指南を受け、殺人の片棒を担がされていた
ルーの過去が明かされ、父とルーの対峙時には、
ジャッキーはハルクさながら巨大化し、巨人となる。
ここは正直笑えた。画的にも面白かった。
かくして愛を取り戻したルーとジャッキーだが、
ラストではジャッキーが殺したデイジーが生きていること
がわかると、ジャッキーが寝ている間に
デイジーを躊躇なく締め殺し、車からおろすルー。
これもまた愛なのだろう。
実に新鮮、強烈な印象のA24作品であった。
愛、愛、愛!!
めちゃくちゃクレイジーな映画でこういうの大好き。
愛って時として暴力的だよねっていうありきたりなテーマでは収まらないスケール。
ルーはお姉さんを愛していて、ジャッキーはルーの為にお姉さんにDVをした夫を殺す。ルーは愛するジャッキーの為に死体を遺棄する。父親は娘の為に警察に手を回すし、目撃者をジャッキーに殺させる。
でも、その愛の大きさ故に浮気をしたジャッキーはルーに向け発砲するし、お姉さんは夫への愛故にルーを憎む。
喫煙者がタバコを欲するのはニコチンへの依存症であるのと同じように、人を殺してでも護ろうとする行為は愛への依存症なのかもしれない。
いや、そうか?そうなのか?
愛ってこんな暴力的だっけ?
いや、時としてそうなる一面もあるけれど、ジャッキーは筋肉への執着が異常だし感情に任せてマッチョマンを殴ったり人を殺したりし過ぎじゃない?
ルーの父親も簡単に人を殺すサイコパス。
そう、そもそも人格に問題がありそう。
そんな中で比較的まともなルーは、純粋にジャッキーに恋をして禁煙もした。
だけど愛に翻弄され、身内とも縁が切れ、ついには平気で人を殺し、またタバコを吸う人生を歩む。
何が良いとか悪いとか、正解も不正解も善悪もこの映画にはあまり意味がない。
人は愛の力によっていろんな変化を遂げるもんなんだよという事実だけを伝えている。
そして前時代的なマッチョイズムを過剰な愛と筋肉でなぎ倒していく痛烈な作品!!
行き過ぎた愛、歪んだ愛、自己愛などなど、
とにかくすべてが過剰!!
あ、巨大化したジャッキーはドラゴンボールの悟空みたいやったね!
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