愛はステロイドのレビュー・感想・評価
全93件中、41~60件目を表示
禍々しさ全開の愛、ゆえにファンタジーは要らない
冒頭の便器の詰まりを素手で掃除するシーンはまさに直線的で禍々しい、この映画を表している。
脳筋バカの純愛ゆえに負の連鎖もさもリアリティを増すし、銃社会にエド・ハリスのあの顔があるだけで人の死は簡単に思えてしまう。
そして周りの脇役陣も全員エド・ハリスが喰ってしまいそうな昆虫脳な奴等ばかり。
どうしょうもない事しか起こらない世界観の中でどうしょうもない事しか起こらない。
極めて直線的な映画なのに、クライマックスに驚くような変化球を投げてくるのだか、エド・ハリスは直線的にぶっ叩いてこそ爽快だったと思う。
ラスト、車中のジャッキーの寝顔だけでファンタジー要素は事足りてると思う。
まともな人間が出てこないぶっ壊れたテルマ&ルイーズ
純愛は脆くて危険
1989年のベルリンの壁崩壊当時のアメリカを舞台に、毒親、DV、ドラッグ、殺人、武器密輸などなど、ブラックな世界の中でもがく同性愛女性のお話でした。題材からして胸焼けするほど劇薬満載の作品でしたが、題名にもある通りテーマは”愛”というのが面白い所で、そうしたドロドロした中で2人の女性がどんな心境でどう行動するのかに注目して観ました。
お話の展開は激烈かつスリリングで、これでもかとネガティブな方向に進んで行きました。登場人物もろくでもない感じの連中がてんこ盛り。特に主人公ルー(クリステン・スチュワート)の父親であるルー・シニア(エド・ハリス)は風貌から悪行まで強烈でした。
で、メインテーマの”愛”ですが、純愛は純粋だからこそ不純物を嫌うという印象。でも世の中は不純物ばかりなので、純愛が汚されそうになるとそれを守るために手段は選ばないという展開でした。実際ルーと家なしでボディビルの大会出場を目指すジャッキー(ケイティ・オブライアン)の関係は極めて純粋。ただこの純愛を守るために殺人をするジャッキーの行動はかなり衝撃でした。
最初ルーに勧められた”ステロイド”を使うことで、大会に向けてパンプアップしていくジャッキーでしたが、その副作用で筋肉ばかりか精神まで高揚する不安定ぶり。結果邪魔者を殺してしまうとは!
実際ネットで調べてみると、ステロイドにはうつや不眠の副作用だけでなく、高揚感が出る副作用もあるようで、怖い薬であることは間違いない模様でした。ただあそこまでの行動にはなかなか至らないでしょうが。
いずれにしてもストーリーに関しては、かなり衝撃的であまり好みのタイプではありませんでしたが、役者の演技はいずれも抜群。主演のクリステン・スチュワートは、「スペンサー ダイアナの決意」のダイアナ妃以来でしたが、その時と同様の熱演でした。相方役のケイティ・オブライアンも、マッチョな肉体美とアクション、そして高揚感から殺人に至る精神状態の表現も素晴らしかったです。
そんな訳で、本作の評価は★3.6とします。
無理を通せば道理が引っ込む系剛腕ムービー
邦題の時点で、「何コレ?」という感じなのですが、いい意味で予想を斜め上に裏切っていく小気味のいい展開の連続。
テンションがちょっとでも違えば「製作陣は何を考えてこんな作品を……」と頭に浮かびそうなところですが、剛腕な展開と変な笑いの連続で最後まで押し切られ……そうなところで……これはもう劇場で見てくださいwwww
不思議な魅力に溢れた愛すべき作品です。
いろいろとやり過ぎ
A24独特の世界観に
クイア・ラブストーリー・犯罪・ミステリー・復讐劇&怪獣映画
僕はこの映画大好き。
アメリカの地方都市。ジムで働く女性と、ボディビルディングの大会での優勝を目指す女性の同性愛ラブストーリーと言う形を取っているのですが、とてもそんな枠は収まりません。
愛し合う二人のクイア物語とは言えず、犯罪映画の様であり、ミステリーの様であり、復讐劇の様であり、ホラーの様であり、或いは怪獣映画とすら言えるのです。少しずつ謎を見せながら、テンポよくそれを回収して行きます。
そもそも彼女らも褒められた人間ではありませんが、それでもよりクズな男どもに怒りを爆発させる、その瞬間の筋肉の漲りに客席から「うぉ~」と拳を振り上げたくなりました。肉を引きちぎった様なヌラヌラした肌触りに痺れました。
キーワードは後片付け
不良娘の純情
ちょっと変わった百合作品かと思ってたら
A24作品はイマイチ肌に合わないことが多いのですが、本作はわりと楽しめました。
序盤はスポーツジムのスタッフ(♀)とボディビルダー(♀)の性愛物語、中盤から話の方向がだんだん予想外になってきて、全貌が見えるころには完全にスリラー映画に。テンポよく話が転がっていくので、ほどよくハラハラしながら飽きずに楽しめました。
ただ、演出面(ステロイドの副作用とかクライマックスのアレとか)ではやはり「ああ、A24とは合わないなぁ…」と感じてしまうものが…
あと中盤ジャッキーが起こす事件があまりにいきなり過ぎたので、そのあたりからキャラへの感情移入がしにくくなって、ちょっと冷めた感あり。
とはいえ総合的になかなか楽しめる一本でした。
邦題とポスターデザイン!
いいですねぇ、燃えますねぇ、「テルマ&ルイーズ」の再来のよう
ハチャメチャ豪快ですが、こんな無軌道な快作もホント久方ぶりで、燃えますよ。冒頭から夜空の星の輝きがやたら美しく描かれ、ファンタジーがお好きな監督とお見受けしたら、まんまと後半はファンタジーどころか夢か妄想かを大量にぶっ込んでくる。拍手喝采ですよ。
看板スターはクリステン・スチュワートで、私のお気に入り女優ですよ。ガラス細工のような華奢な見た目とは裏腹にド根性の持ち主なんです。その彼女が自らの性向に真っ正直に取り組んだのが本作でしょう。そこへ、流れ者のボディビルダーのマッチョ女が登場し、一目で恋に落ちる。その前段でジム通いの男どもから「どレズ」のセリフがあるからこそ、落ちる瞬間も見て取れる。このラブロマンスによりトンデモナイ事態に発展するのが映画の醍醐味でしょうね。
対する元ボディビル選手役のケイティ・オブライアンご自身の性向は知りませんが、タフな役であちこちに出てらっしゃる役者さんでした。この二人の関係性を瞬時に見破るのがエド・ハリス扮するルーの父親役であり、ジャッキーの雇い主。ですが禿げた頭の左右のみ異様に長く伸ばした風貌から、これは一筋縄ではいかない事を暗示させる。そして発端となる馬鹿男にデイブ・フランコ(ジェームズの実の弟、フランコはホントにクソ野郎がお似合い)が扮していれば、布陣は揃った。
こうしてレズビアンがキーとなるものの、男女も男男も関係なく、「愛すれば一途」に突き進むのが本作のポイント。どうにも止まらない暴走で事態は悪化の一途、その過程で本年のデミ・ムーアの快作「サブスタンス」よろしくバリバリと音を立てて筋肉が増殖するなんて、突然の吐き気によりみるみる口から異物が吐き出されそれがルーとなるなんて、あちらもこちらも女性監督ってのが偶然とは思えない。時代がそうさせているとしか思えません。さらにジャッキーは体が巨大化と言うかガリバー状態にまで視覚のインパクトが留まるところをしらない。
そもそも原題「Love Lies Bleeding」に対し邦題が下らないと思ってましたが、実に納得のステロイドでした。地球の裂け目のようなところで、死体を隠すあたりは否が応でも「テルマ&ルイーズ」1991年 を思い出させる。クリスティン扮するルイーズは スーザン・サランドンの役名と同じでもあるので。この辺りで描かれる時代が1989年と示され、ちょっと驚き。二人の別行動に連絡方法があったらこんな悲劇も抑えられたかも、でケータイのない時代としたのか。そしてタバコです、洋画も邦画も20世紀の設定ですとやたらタバコが登場します。実際そうゆう時代でしたが、本作ではよりによってタバコの害を訴える音声が頻繁に被ります。それでもルーは殆どチェーンスモーカー、ここにステロイドが社会に入り込む時代の境目を示したかったのかも。
結構三つ巴の混戦で話が次々展開する疾走感と言うかドタバタの最中に、二人の愛の成就を見届けたい気持ちが湧いてくる。どう足掻いたって助かりようのない二人、「テルマ&ルイーズ」よろしく逝ってくれと願うのみ。エンドタイトルではシルエットとなって二人が仲睦まじく踊っている。切ないねえ。
中毒、封印した記憶、巨悪、そして限界突破・リミッター解除……愛は血を流して(=自分を痛めつけて)こそ証明できる究極の献身
『テルマ&ルイーズ』というより、(エド・ハリスだし)『ヒストリー・オブ・バイオレンス』担当イケメンすぎるクリステン・スチュワート ✕『サブスタンス』ボディホラー担当ケイティ・オブライアン最強タッグだった!!
『セイント・モード/狂信』ローズ・グラス脚本監督 ✕ A24製作だけあって魅惑的な雰囲気ありありの中、危険分子の早々の退場など、予期せぬストーリー"ライン"(=筋肉線)展開で魅せる。コーエン兄弟もまっしぐらの殺人雪だるまで、殺人カップルの逃避行と思ったら、田舎のヤバい家族モノだった!そして、最後にはリスキーな選択を取ることで観客に驚きと「え、どういうこと?あれなんだったの?!!」という考えさせる余韻を残す。それに続くインパクト大の印象的なカットが素敵だった。時は、ベルリンの壁が崩壊した1989年。筋肉と対を成すように、男根社会に屈する拳銃、そして髪の長い男。
欲望と暴力渦巻く世界で、愛と変革は血を流して(=自分を傷つけて)こそ?ニコチンとステロイド、中毒になると不安や孤独に押しつぶされそうにもなるけど、やめる・断つという「ハナからそれできたら誰も苦労しないわ!!」というわかりきった選択ではなく、むしろ愛する人がいるからこそ、自分をボロボロにして無理を強いるような愚かな行為も肯定できるのだろうか?ルールーが己のトレーニングのみで勝負したいジャッキーにステロイドを勧めるのと、危険分子が禁煙中のルールーにタバコをプレゼントすることが、同じ図式になっている。
『サブスタンス』と共振する痛快豪快な恋愛スリラーで、女性監督がジャンル映画でここまでブチかましてくれるその意味を考えたくなる劇薬!!
P.S.『イントゥ・ザ・ワイルド』を観たときにどことなく似ているなと思ったジェナ・マローンとクリステン・スチュワートが姉妹役で共演は、時を超えて「ほれ、見てみぃ!!」とドヤりたい。
ゴア描写満載のヒデェ映画なのに、終映後の客席からは、妙齢の御婦人方からの笑い声が溢れた!
バカ映画とスリラーの間で
全93件中、41~60件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。