「散らかす女と片付ける女のサスペンススリラー」愛はステロイド kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)
散らかす女と片付ける女のサスペンススリラー
8ヶ月目にして今年観た中で一番変な映画が登場した。
「サブスタンス」や「メガロポリス」ももちろん変なのだが、一貫して変なのでそう驚きはしない。
ところがこの映画は予想を裏切って変なことになるので驚く。そしてこの映画は変な映画としてお墨付きをいただいている。変な映画のレジェンド、ジョン・ウォーターズ監督が2024年度の最高の映画と評価したのだ。
出だしはレズビアン同士のラブロマンスと思いきや、悪党の父親やDVの義兄の登場に巻き込まれるバイオレンス、サスペンス、スリラーと縦横無尽にジャンルを横断。ところがストーリーは破綻しておらず筋が通っている。
射撃場やジムの経営をしつつ凶悪な裏稼業を営む父親(エド・ハリス)の経営するボディービルジムで働くルー(クリスティン・スチュワート)は父を嫌悪しながらもその庇護のもと、日々を過ごしている。そこにラスベガスのボディビル大会出場を目指す風来坊のジャッキー(ケイティ・オブライアン)がジムに現れ恋に落ちる。彼女の気を引くためにジムの売り物のステロイドを自由に使っていいという。
ストーリーの柱になるのはこの二人の女性のクィアラブストーリーだ。ところがステロイドを使ううちに体に変化が現れ、ジャックは大暴走を始めてしまう。凶悪な父親も巻き込みルーはその後始末に翻弄される。
奔放でどんどん行動に移し散らかしまくるジャッキーに内向的で鬱屈し、散らかした後始末に追われるルーというカップル2人の対比がわかりやすく魅力的だ。
凶悪な父親やDV夫と暮らす姉などのかなりおかしい家族の描き方はデヴィッド・リンチ的でステロイドで肉体が変貌していくところはボディホラー的でデヴィッド・クローネンバーグの要素が感じられる。
ボディホラー的要素はラストにかけて驚きの展開をする。この辺りが最も変なのだが、変なままで終わらずに後始末に終始するルーがそうでない一面を見せるラストが素晴らしく、変だけではないローズ・ダラス監督の今後にも期待。
ジョン・ウォーターズがお墨付きを与えるのも納得の作品だ。
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