「ステロイドの過剰摂取もアレだけど、愛も行きすぎると色んなものを生み出してしまうのね」愛はステロイド Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ステロイドの過剰摂取もアレだけど、愛も行きすぎると色んなものを生み出してしまうのね
2025.9.3 字幕 イオンシネマ四條畷
2024年のイギリス&アメリカ合作の映画(104分、R15+)
ボディビルジムの管理者とビルダーを描いたクライムラブロマンス
監督はローズ・グラス
脚本はローズ・グラス&ベロニカ・トフィウスカ
原題は『Love Lies Bleeding』で「愛は血を流す」と言う意味
物語の舞台は、アメリカ・ニューメキシコ州のアルバカーキ
そこにあるクレータージムで働くルー(クリスティン・スチュワート)は、劣悪な環境の中でも文句を言わずに働いていた
彼女を慕うデイジー(アンナ・パリシコニフ)のアプローチを交わしながら、時間だけが過ぎていった
彼女には父ルー・シニア(エド・ハリス)がいたが、12年前に母親が家を出てしまい、それが原因で関係を断ち切っていた
ある日のこと、ベガスの大会に向かうボディビルダーのジャッキー(ケイティ・オブライエン)がジムにやってきた
ひと目で違いのわかる筋肉に見惚れたルーは、彼女のことを気にかけるようになり、住まいが見つかるまでの間、部屋に住まわせることになった
物語は、ルーの姉ベス(ジェナ・マローン)の暴力的な夫JJ(デイヴ・フランコ)とジャッキーが関係を持っていたと言う冒頭があり、それが露見するところから動き出す
ルーはジャッキーに好意を寄せていたが、それは寝床を確保するための嘘の感情だったと思い込んでしまう
ジャッキーはバイセクシャルであることを打ち明け、ルーに対する想いは本物だと告げる
そして、ジャッキーはその愛を証明するためにある行動を起こしてしまうのである
映画では、ルーと父の過去に語れぬものがあり、それが原因で疎遠になっているのだが、ルーは母親の失踪に父が絡んでいると考えていた
父はメキシコに武器を送ったり、麻薬を密売したりして儲けていて、FBIへの情報提供者を始末してきた
その手伝いをしてきたのがルーであり、彼女の特殊清掃は手慣れたものとなっている
ジャッキーはベスを愛するルーのためにJJを殺すものの、その後始末を巡って「あること」を思いついてしまう
それは、JJの死体を例の崖に落として警察に見つけさせると言うもので、他の死体が見つかることによって、ジャッキーが容疑者から外れると考えたからだった
だが、それによってJJの死体が見つかってしまい、ベスにも知れ渡ることになるのである
その頃、ジャッキーはベガスにてボディビルの大会に出場していたが、過剰なドーピングによって錯乱し、失格処分となってしまう
会場で暴れたジャッキーは捕まってしまい、ルーに助けを求めるのだが、その電話をデイジーが取ってしまう
デイジーは「もう会いたくないと言っている」と嘘を言い、ジャッキーは仕方なくルー・シニアを頼ることになった
ルー・シニアはジャッキーがJJ殺人に関わっていることに気づいていて、居場所確保のために「ある依頼」を突きつける
ジャッキーは引き下がることができず、さらにその依頼がルーとの関係を再構築できると考えていた
だが、その依頼をルーの目の前で行ってしまい、さらに関係は拗れてしまうのである
映画の前半でモブキャラのように登場するデイジーが後半では物語を推し進める役割になっていて、さらにオチに使われていた
ジャッキーはルーと出会ったことでステロイドを使うことになるのだが、その効果も相まって、徐々にエスカレートしていく様子が描かれていく
だが、精神的に負荷がかかりすぎると乱用状態になってしまい、それによって幻覚を見たりもしてしまう
これらの一連のシーンは某アカデミー賞ノミネート作品を思い出したが、そのシーン以外にも本作ならではの特異点が用意されていた
それが賛否両論を巻き起こしそうなジャッキーの巨大化だったが、このシーンを理屈で考えてはダメなんだと思う
ジャッキー自身が巨大化したことをルーもルー・シニアも認知している状態なので、ジャッキーのトランスが原因ではない
かと言って、ステロイドの過剰摂取によって、あのようなことは起こるはずもない
その後は巨大化したジャッキーとルーがルンルン気分で走っていくシーンがあって、一連の映像は効果的な演出と考える方が良いのだろう
結局のところ、警官も父も殺さなかったルーは最後の一線は超えていないように思えるのだが、これからも逃亡生活を続けていくことになるのだろう
砂漠で捨てられたデイジーもいずれは発見されるだろうし、不可解な事件の後に消えた女2人をFBIが見逃すはずは無いように思えた
いずれにせよ、A24なので変な映画だろうなあと思っていたら案の定という感じで、かなり特殊な映画だったと思う
ボディビルダーのレズビアン映画というのも新しいジャンルで、あの肉体がほぼ自前で鍛え上げているものというのはすごいと思う
ルーの方も結構筋肉がついている背中をしていたので、おそらくはあのジムで鍛えていたのだろう
ストイックな環境にいると感化されるのかはわからないが、彼女の中にある男性性にデイジーは惹かれているし、ジャッキーも女の子状態になっているシーンもあった
そのあたりは家庭教育の賜物であると思うのだが、ベスが言い放つ「あんたには愛がわかっていない」というのも、結構無茶なセリフだなあと思った
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