劇場公開日 2025年8月29日

「いいですねぇ、燃えますねぇ、「テルマ&ルイーズ」の再来のよう」愛はステロイド クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 いいですねぇ、燃えますねぇ、「テルマ&ルイーズ」の再来のよう

2025年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

単純

興奮

 ハチャメチャ豪快ですが、こんな無軌道な快作もホント久方ぶりで、燃えますよ。冒頭から夜空の星の輝きがやたら美しく描かれ、ファンタジーがお好きな監督とお見受けしたら、まんまと後半はファンタジーどころか夢か妄想かを大量にぶっ込んでくる。拍手喝采ですよ。

 看板スターはクリステン・スチュワートで、私のお気に入り女優ですよ。ガラス細工のような華奢な見た目とは裏腹にド根性の持ち主なんです。その彼女が自らの性向に真っ正直に取り組んだのが本作でしょう。そこへ、流れ者のボディビルダーのマッチョ女が登場し、一目で恋に落ちる。その前段でジム通いの男どもから「どレズ」のセリフがあるからこそ、落ちる瞬間も見て取れる。このラブロマンスによりトンデモナイ事態に発展するのが映画の醍醐味でしょうね。

 対する元ボディビル選手役のケイティ・オブライアンご自身の性向は知りませんが、タフな役であちこちに出てらっしゃる役者さんでした。この二人の関係性を瞬時に見破るのがエド・ハリス扮するルーの父親役であり、ジャッキーの雇い主。ですが禿げた頭の左右のみ異様に長く伸ばした風貌から、これは一筋縄ではいかない事を暗示させる。そして発端となる馬鹿男にデイブ・フランコ(ジェームズの実の弟、フランコはホントにクソ野郎がお似合い)が扮していれば、布陣は揃った。

 こうしてレズビアンがキーとなるものの、男女も男男も関係なく、「愛すれば一途」に突き進むのが本作のポイント。どうにも止まらない暴走で事態は悪化の一途、その過程で本年のデミ・ムーアの快作「サブスタンス」よろしくバリバリと音を立てて筋肉が増殖するなんて、突然の吐き気によりみるみる口から異物が吐き出されそれがルーとなるなんて、あちらもこちらも女性監督ってのが偶然とは思えない。時代がそうさせているとしか思えません。さらにジャッキーは体が巨大化と言うかガリバー状態にまで視覚のインパクトが留まるところをしらない。

 そもそも原題「Love Lies Bleeding」に対し邦題が下らないと思ってましたが、実に納得のステロイドでした。地球の裂け目のようなところで、死体を隠すあたりは否が応でも「テルマ&ルイーズ」1991年 を思い出させる。クリスティン扮するルイーズは スーザン・サランドンの役名と同じでもあるので。この辺りで描かれる時代が1989年と示され、ちょっと驚き。二人の別行動に連絡方法があったらこんな悲劇も抑えられたかも、でケータイのない時代としたのか。そしてタバコです、洋画も邦画も20世紀の設定ですとやたらタバコが登場します。実際そうゆう時代でしたが、本作ではよりによってタバコの害を訴える音声が頻繁に被ります。それでもルーは殆どチェーンスモーカー、ここにステロイドが社会に入り込む時代の境目を示したかったのかも。

 結構三つ巴の混戦で話が次々展開する疾走感と言うかドタバタの最中に、二人の愛の成就を見届けたい気持ちが湧いてくる。どう足掻いたって助かりようのない二人、「テルマ&ルイーズ」よろしく逝ってくれと願うのみ。エンドタイトルではシルエットとなって二人が仲睦まじく踊っている。切ないねえ。

クニオ
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