「「サブスタンス」との共時性。女性監督たちのジャンル映画への進出、大歓迎!」愛はステロイド 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
「サブスタンス」との共時性。女性監督たちのジャンル映画への進出、大歓迎!
本作のローズ・グラス監督は1990年英国生まれ。デミ・ムーアが主演した「サブスタンス」のコラリー・ファルジャ監督は1976年フランス生まれ。年齢は一回りちょっと違うが、2人の女性監督がタイミングを同じくして、米国資本も入った合作で女性の身体をモディファイ(改変)するボディホラー風味の強烈なスリラーを撮ったことが興味深い。シンクロニシティか、一大潮流の始まりなのか。
偶然でなく時代の流れだととらえるなら、ポリティカルコレクトネスやコンプライアンスが重視される昨今、男性のフィルムメーカーが女性への暴力や女性の身体を損壊したり醜く変形させたりする表現を、差別だ蔑視だなどと批判されるのをおそれて自由に描きにくくなっている状況が背景にあるのではないか。一方、女性のフィルムメーカーが女性の身体をどう扱おうが勝手、フィクションの中なら暴力だろうがあり得ない変形、変身だろうが文句あるか!的な奔放さが、作り手と出資する側に共有されているのでは。そんなことを、「愛はステロイド」を観ながら考えていた。
後半のステージの場面が、緊張と高揚と狂気が交錯する映画のハイライトの1つになっているのも、「愛はステロイド」と「サブスタンス」の共通点。ここではデヴィッド・クローネンバーグ監督のテイストに近いものを感じたが、ラストの超展開では突き抜けた独創性に爆笑。よいものを見せてもらった。
クリステン・スチュワートの作品選びのセンスは相変わらず冴えている。共演のケイティ・オブライアン、これからのさらなる活躍に期待。従来は男性監督の寡占状態だったバイオレンスやボディホラーなどのサブジャンルに、女性監督たちが進出してきたことを大いに歓迎したい。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。