「ポイントが高いルーの“後始末力”」愛はステロイド TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
ポイントが高いルーの“後始末力”
今週の1本目はA24作品『愛はステロイド』。すっかりと定着した感のある多くの“A24作品ファン”に囲まれ、公開初日にTOHOシネマズ日比谷にて鑑賞です。
なお、シンプルながらちゃんと引っかかりがあり、しっかりと記憶に残る邦題はナイスアイディア。一方、原題は『Love Lies Bleeding(愛は血を流す)』で、これはこれで観終わって解る“本作のテーマ”をストレートに表すタイトルですが、そもそもどんな映画かと言えば、想像をはるかに超えるようなトンデモな展開が連続にもかかわらず、ストーリーは破綻せずに最後には見事に終着してしっかりと面白い。多少は目の覆いたくなるようなシーンもありますが、そこはA24お馴染みに行き過ぎていて思わず笑ってしまいます。そして、スリル感は申し分なくハラハラドキドキで最後まで目が離せません。
と言うことで、総評から入れば“褒め一辺倒”に聞こえると思いますが、今回も前情報を全くに入れず鑑賞を始めてみて、正直なところ序盤では作品の方向性が掴み切れずに心配もしました。ところが、ジャッキー(ケイティ・オブライアン)を見染めたルー(クリステン・スチュワート)が、お近づきの印に勧めた“マクガフィン”による“変化”を示すサウンドエフェクトが大変に効果的で気味が悪く、その都度にスクリーンの向こうに嫌な予感が充満して気が付けば夢中に。そして、中盤に起こる事件をきっかけに加速度的にヤバ味が増幅し、大変に焦りながらも最善策を取ろうとするルーの“後始末力”もあって、決着がつくまでの展開に無理筋を感じさせません。
そして、全体的なルックも当時(1989年設定)そのものに見えて(行ったこともないアメリカに)既視感すら感じますし、主演の二人の素晴らしい好演は勿論のこと、嬉々としてヤバい爺を演じるエド・ハリス、如何にも薄っぺらそうなイケメン役は鉄板のデイヴ・フランコ、粘着質強めで厄介な存在が板についたアンナ・バリシニコフ等々、キャストが皆イメージ通りのキャラクターという点においても優秀で違和感は全くありません。更に、上映時間104分と言うコンパクトサイズもありがたい。と言うことで、前半に感じた不安もなんのその。思いもやらぬ“最終決戦”のギミックには最早驚きを越え、思わず吹き出してしまいました。天晴れ!w
運命のように出会い、すぐに惹かれ合うルーとジャッキー。それまで夢を追いつづけることこそが自分の人生の意味だった真っ直ぐなジャッキーにとって、ルーから得られる“強い魅力と刺激”に抗い切れず、ジャンキーと化して次々と事を起こします。そして、そんなジャッキーに戸惑いつつも結局は一番に思って決意するルーもまた、過激な状況の連続に最早麻痺してジャッキーの暴走を受け止めます。いやはや愛って何なんだ…w
いやいや、面白かった。A24×ハピネットファントム・スタジオ、次回も期待しています。
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