八犬伝のレビュー・感想・評価
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人生を賭けたライトノベル
八犬伝は20年以上前に見たアニメでなんとなく
知ってはいましたが、
その物語がどう生まれたかは知らなかったので、
滝沢馬琴とその息子そしてお路、葛飾北斎に渡辺華山と
錚々たる歴史上の人物が
その人生を賭けて作った物語と知って、
100年が経ち、これからも残って語り継がれて行く理由が
少し分りました。
ただ、この馬琴の物語に対して八犬伝の部分が淡々と
掻い摘んで描かれているため、八犬伝を知ってる人には
分かるのかもしれないけど、あんまり知らない僕なんかは
人生を賭けて描かれた物語が軽く見えてしまいました。
ただ、馬琴自身も虚を描いてるのかもしれない
と言ってたように、
八犬伝自体が勧善懲悪の戦隊ヒーロー物。
日本初の誰でも読めるライトノベルだったのではないかな?と思いました。
お路を叱りつける馬琴がめちゃくちゃ怖かったです。
役所広司さんの怒りの演技って物凄くリアル。
虚と真実が交錯した作品
①ファンタジーな八犬伝(虚)
②滝沢馬琴の生涯(実)
が交互に織りなす不思議な作りをした映画。
①の部分はCGありまくりの、ファンタジー時代劇
②の部分は名役者たちが演じる時代劇
で、場面転換があればすぐに気付けるレベルで系統が異なる。八犬伝パートから現実パートに行くと月日が過ぎていて、馬琴の置かれている状況にも変化があり、また、馬琴自身も段々歳をとっていく。
八犬伝パートはイケメンたちが前向きに闘う勧善懲悪なストーリー、端折られてはいるが、ちゃんと一人一人仲間を見つけて…というワクワクする展開はちゃんとある。どちらかと言うと、若者向けのような印象。
現実パートはさすがの役所さんと内野さん!部屋で会話したりやりとりする中での変化を自然に演じ、お互いが段々を老いていく姿も見事演じている。
印象的だったのは、馬琴の奥さんが、お嫁さんを睨んで死ぬところかな。「女」であることから、家族なのに夫と息子の絆に入り込めない、手を出してはいけない聖域だと思っていたのに、それに事情はあれどもお嫁さんが踏み入れているのを見て、死に際に、お嫁さんのようにしたかった想いと、お嫁さんに対しての嫉妬の「ちくしょう」という言葉だったのかな…と推測。
最後はこの交錯していたストーリーが、一緒になって…というよくある展開だが、それが自然で、馬琴の表情に思わず涙しそうになった。
実は虚であり虚は実で…
虚実の交わり
名作「南総里見八犬伝」とその作者曲亭馬琴の執筆の有様を織り交ぜて描くモキュメンタリ―風の新解釈。中でも、虚であったとしても勧善懲悪を理想として描く馬琴と現実の世の性悪説を描く「東海道四谷怪談」の作者、鶴屋南北の虚実の本質を語り合うエピソードは印象的でした。本作の深み、面白みの根源は原作者の山田風太郎さんの慧眼にあるとしてもTBSのCGクリエーターだった曽利文彦さんが脚本・監督とは大変な成長ぶり、お見事でした。
ただ、虚実を交えても映画の愉しみの本質は至高の虚でしょう、余り糞真面目に捉えずに少しは脱力、遊びも交えて作って欲しかった気もします・・。
水不足の地に
愛に溢れた実の世界
思いのほか良かった…。
作者の創作中の様子と、八犬伝の物語が交互になっていた。
なので、八犬伝の物語が途中で途切れるんだけど、どちらの物語にもちゃんと引き込まれる。
丁寧に丁寧に創られている感じがした。
奥さんの、お百があっけない感じがして、そこだけがちょっと気になった。
お百は、口うるさくて毒舌で、ひどい奥さんなんだけど、馬琴に関心がない訳ではなくて、嫉妬までしている。
馬琴はしんどかったろうな…と思う反面、お百のそれは愛情の裏返しにも思えた。
それとは対照的なお岩の夫。
その2つも裏返しで、逆さまに見えた。
義理の娘のお路も健気に馬琴を応援してくれるし、息子も馬琴思い。
北斎も足しげくやって来る。
馬琴の日常は愛に溢れているなぁと思った。
そして、最後は何だか涙が出てきた。
演者も物語も良かった。
映画館まで観に行って良かった。
The 山田風太郎
氏の小説で初めて読んだのがコレ。"虚と実"を繰り返しながら展開していく物語にワクワクしましたなぁ。それまでは実写化された忍法帖やら魔界転生やらだったのでエログロな印象強めでしたが、こんな方向もいけるのかと唸ったものです。この勢いで「柳生十兵衛死す」も実写化されないかなぁ。あれもめっちゃ面白いです。
今回の実写化はとにかく"実"パートの牽引力の凄まじさに尽きる。"虚の巻"が原作以上に駆け足で胸熱ゲージを溜めづらかったのだが、それを補完して余りある熱量。大河ドラマにして一年間眺めていたい位の濃密さでしたねぇ。"虚"のターンも駆け足を除けば(致し方なし)、"虚"をゴリゴリに落とし込んで「動く錦絵」の様に作り上げていたのが好感触でした。役者陣もフレッシュ溌剌で良かったですしね。MVPは勿論、宗伯くん。刺さりすぎて嗚咽漏らしちゃいましたよ。
北斎の絵
じいさんとじいさんがわちゃわちゃしている
じいさん(天才)と、じいさん(天才)が、バカ話をしている。
その会話が妙に心地よい。
虚と実を織り交ぜて映像に落とし込む、そのテンポも良い、
100冊以上の大長編になった里見八犬伝はこう書かれたのであろう、という話で、
おそらく冗長な部分を極力削りに削ったであろう脚本家の努力が思われる。
ちょっと気になった点がありまして、
四谷怪談と忠臣蔵のシーンで「四谷怪談は忠臣蔵の裏返し、忠臣蔵という実を虚があざ笑う」というニュアンスの言葉が出てきます。
この言葉に、ものすごく引っかかっているのです。
実はこの映画そのものが曲亭馬琴の「実」を、里見八犬伝という虚があざ笑うという仕掛けを施されているのではないか、という疑惑です。
でなければ、鶴屋南北のシーンそのものがいらなかったのではというくらいです。
里見八犬伝という勧善懲悪が、悪事を働かない(でも偏屈)馬琴とその子の実をあざ笑っているという意味なのかなと思っていましたが、なんかもう一歩後ろにありそうな気がしています。なんだろう。
ともあれ、この映画そのものも2時間を大幅に超える大長編です。
じっくり腰を据えて見られる力作だと思います。
ラストのシーン。
あの演出にするのはべったべただと思いますが、それでも泣けてしまいました。
現実とファンタジーの交錯を楽しむ
今年映画館で見た映画の中で一番面白かった。
2時間半長すぎるとビビっていたけど、虚と実が交互に展開するから飽きることがなかった。
馬琴と北斎二人の掛け合いが印象に残る。役所広司、内野聖陽が役にぴったりはまっていた。
お百が「じじぃ二人が昼までおしゃべりかね」「駄弁も仕事のうちかね」とか嫌味を言うシーンが言いたくもなるよねと共感。
真飛聖のお歯黒の怪しい雰囲気よかった。ミッドナイトスワンに出てた人なんだ。
滝沢馬琴の伝記的作品
八犬伝パートを配信連ドラか再度映画化して欲しい!
虚実を交互に見せていく方法はどうなの?と思ったけれど、実パートはこれがうまく行っていた。善因善果・悪因悪果にならない世の中だからこそ、創作の世界くらい勧善懲悪を描きたい、堅物の馬琴(役所広司)の想いが伝わってくる。対照的な風来坊的天才の葛飾北斎(内野聖陽)ぬらりひょんかネズミ男のような鶴屋南北(立川談春)、幸薄く真面目な息子(磯村勇斗)、嫌味なババア演技が最高な妻(寺島しのぶ)がピタッとハマり、馬琴の思いが伝わってくる。28年もかかったこと、お路(黒木華)が口述筆記で刊行させたことも初めて知り、やはり凄い作品と再認識。
一方、虚パートの八犬伝。やっぱり八犬伝て面白いー!!いざとなったら玉を出せ🎵が頭の中で鳴り響いてます。
夏木マリがこれまでならやるであろう玉梓の栗山千秋の恐ろしさ、犬塚信乃(渡邊圭祐)が相変わらずかっこいいし、良き演技。そして、犬坂毛野(板垣李光人)!君はやばい!話し出すまで完全にめっちゃ妖艶な女性と思っていた…未来の絶大なるバイプレーヤーと思っているけれど、本気で凄い役者さんだ。敵の殿様じゃなくてもぼーっとするわ。
若手の良い役者さんが集結し魅力的なキャラクターに命を吹き込む良い演技、凄いCG、美麗な衣装、だからこそ、このダイジェスト版は勿体無い!!! もっと八犬士個人個人のバックグラウンドを知りたいし、1人、また1人と見つかっていくワクワク感を楽しみたい。彼らの活躍をバーンと見たい!この端折りダイジェストは勿体なさすぎるので、配信連ドラかもう一本映画をお願いします。
待つ間、山田風太郎を再度読もう。
現代パートは最高
とにかく現実パートの役所広司さんと内野聖陽さんの演技は最高でした。また他の役者さん達も素晴らしかったです!
何が残念って八犬伝パート、、、冒頭のわんこのCGからとてつもなく安っぽく感じてしまった、、、
殿様やら悪役の演技も微妙で伏姫だけ素晴らしかった!現実パートと八犬伝パートの区別をつけるためにわざとこのような作り物感を出したのかなーとも思いましたが、それを加味してもちょっと許せないレベルでした。かなり要所要所の場面しか撮影がなかったから役者さん達もあまり身が入らなかったのかな。
あと残念なのは馬琴さんがあんなに、虚も信じ続ければ実になる、と思っていたのに目が見えなくなったからといって執筆を諦めるのが納得できませんでした。原作ではそこらへんを丁寧に描いているのでしょうが映画ではあまりだったのでラストは安っぽく感じてしまいました。
全体的に長かった、、、
北斎の力を借りて完成した「八犬伝」。
滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」は、江戸時代の娯楽超大作の小説である。題名は知っていても、現代ではほとんど忘れられているのが残念である。この壮大な物語を現代のVFX技術を駆使して蘇らせた意義は大きい。衣装や風景などビジュアル的に美しく、戦闘シーンは迫力があった。八犬伝は論語の「徳」をモチーフにした波乱万丈の、「勧善懲悪」のドラマだと推察するのだが、見せ場の紹介だけであり、そこまで内容の面白さが伝わらないのは残念だ。
「虚」と「実」がテーマになっているが、虚はまさに八犬伝の虚構の世界であり、実は馬琴たちの現実の世界である。物語でいくら心躍る話や理想を描いたところで、現実はそれとは全く逆である。単調な毎日が続き、何事も思いのままにならず、正しい事が正しい事として通らないのが現実である。馬琴の人生はまさにそんな感じである。女房のお百の態度や息子宗伯の不幸が生きることの難儀さを良く表していると思う。戯作者南北との対話で、虚を描くことの空しさを突き付けられて、馬琴の心の内の葛藤は大きくなる。
そんな馬琴が八犬伝を書き続けられたのはなぜだろうと考えさせるのがこの映画であると言える。失明してもなお八犬伝を完成させた執念には感心するが、その原動力が何なのかは明らかにされていない。そこは、見た人個々人の解釈でいいのだろう。ただ希代の絵師北斎との創作を通した交流が大きな力になっているのは確かである。
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