「虚実のミルフィーユ」八犬伝 N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
虚実のミルフィーユ
「あんのこと」といい、キノフィルムズに縁のあった本年。
だから鑑賞したわけではないが、結果、面白そうと赴いたらキノだった。
相性がいいのか。
原作は未読も、南総里見八犬伝は粗筋を知る。
作者、馬琴の生涯と並行して、執筆物「八犬伝」が描かれる本作。このシーンをどういう状況で馬琴が書き上げていったのか、重ね合わせて見ることでエンタメファンタジーも面白可笑しいではすまなくなる作りだ。
そういう意味で溌剌、みやび、爽快な「八犬伝」パートと、
演技も確かなシブイ役者を揃えた馬琴パートの落差がいい。
中でも南北と戯作の存在意義を問答し合うシーンは印象的だった。
まるで現在のラノベ作家と純文作家の一騎打ちにも思えたり。
いや、あらゆる創作物のエンタメ派と社会派のつばぜり合いにも見えた。
そもそも本作の構成も虚と実のミルフィーユなら、本作のテーマはそこにあるとしか思えない。(インセプションぽい内容、構成だなとも思う)
ただやや残念なのは、虚実を同等の比率で丁寧に織り込みすぎたせいなのか
散漫な印象がある。虚実切り替えのきっかけにも、もうひと工夫あればもっと締まったように感じる。
CGバリバリの八犬伝パートは今のお子様にもうけそうだと思ったし、とりこにして時代劇の息を絶やさぬように洗脳しちまえ、と思った。
伏姫のくだり、美しい物語に書き換えられていたが、八犬士は伏姫と八房の子供のはずで、関係があいまいだとちょっとラストがもったいないな、と思った。
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