劇場公開日 2024年10月25日

「山田風太郎の八犬伝に対するリスペクトを感じさせる。」八犬伝 じきょうさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0山田風太郎の八犬伝に対するリスペクトを感じさせる。

2024年11月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

原作は、かなり昔に「八犬伝」につられて読んだ本だった。
原作がある映像化は概ね悪い評価を得るが、この作品は成功していると思う。特に作中劇である「八犬伝」と、その作者曲亭馬琴を同時に描くわけだから、フィクションの中にフィクションを入れるという、アクロバットであるが、山田風太郎は日本初の長編伝奇小説の祖である曲亭馬琴を深くリスペクトしていることがよく分かる。

八犬伝のあらすじはこの映画を見る人なら誰でも知っているだろう。だから、そこは端折っているだけでなく、八犬伝の方は明るく派手な色味、衣装、しかし演技は?なんだけど、それがあえてそうしているように見える。主役は若くて美しい剣士でなくてはならないし、栗山千明の玉梓初め悪役は存分にその持てる力を発揮している。犬だけ残念。
一方、現実(フィクションだけど)のほうは、狭い部屋でジジイが2人で語るだけ、しかも、色味も地味、衣装はそれなりに売れるにつれ良くなるが、八犬伝のようには「正義は勝つ」にはならない。このパートは上手い役者が揃い、見応えがある。特に寺島しのぶ。息子が死ぬシーンの母親の慟哭や、嫁と二人で八犬伝を口述しているところに、這って現れる鬼気迫る表情はまるで玉梓。
2時間半の映画は全く飽きることがなく、終演が名残惜しかった。2.5次元舞台でもいいと思った。
ひとつ惜しかったのは犬塚信乃役の渡邊圭祐がメインなのは分かるが、他の剣士のことももう少し見たかった。特に過去に真田広之が演じた犬江親兵衛(藤岡真威人)はパカランパカランと颯爽と馬で現れるが、すぐに平伏してしまうので誰だかわからん。もう少し大切にして欲しかった。

過去の角川映画では犬江親兵衛(真田広之)と静姫(薬師丸ひろ子)が、犬山道節(千葉真一)や7剣士の墓からの声を受けて馬に乗って颯爽と荒野をかける印象的なシーンで終わる。
今回は、八犬士に抱えられながら曲亭馬琴が笑顔で天に召されるというシーンで終わる。これもまた印象的な良いシーンだった。

じきょう
bionさんのコメント
2024年11月6日

こんにちは

> 南北との対話のシーンは、馬琴と南北が逆さ絵のように対峙していて、
> 構図としてとても面白かったですね。
なるほど、構図で二人の立ち位置を暗喩していたのですね。
正義を信じる馬琴と人間の残忍さを詳らかにする南北。面白い絵です。

bion
トミーさんのコメント
2024年11月6日

共感ありがとうございます。
元々新聞小説なので、1日毎の展開、何処で虚から実に切り替えるか苦心した部分だと思い、ずっと続く映画で再現可能か? と思ってましたが、上手く料理していたと思います。

トミー