「メッセージを撃ち込まれる映画――YOLO(You Only Live Once)「人生は一度きり」」YOLO 百元の恋 ピラルクさんの映画レビュー(感想・評価)
メッセージを撃ち込まれる映画――YOLO(You Only Live Once)「人生は一度きり」
「YOLO」は「You Only Live Once」の頭字語。辞書にも載っているそうです。上映最後の言葉です。
エンドロール以降の映像を蛇足と感じましたが、最後のこの言葉にあって『これも含めて作品ととらえないと』と考えなおしました。ひとまずドラマとして完成させておいて、さらに強いメッセージをこめた作品なんだなと。
メッセージを強めたのは、パワーある左のパンチ。
スタミナとメンタルは互角以上だったけど、テクニックがからっきしだったという試合シーンが、思いのほか作品を心にとどめる重い文鎮となりました。リアルさが重み。『あっ、現実はやっぱりそうだよね』と逆に教えられるほど。さらにはパワーある左を決めて『もしや、あしたのジョーのクロスカウンター?』と期待させるも『あ~、やっぱりそうだよね』と映画の筋書きを離れたリアルさを突き付けてくれます。
1年のあいだ鍛えて絞りあげたのは身体だけではなくストーリーや脚本もそうだったのでしょうか。パワーある左が撃ったのは観客のハート。すべてが冴えていきます。
いまどきの中国の様子がわかったのも収穫でした。
TVでは「貧しい中国」の切り口で報じられることが多いので、想像と大きく違いました。映画1回で中国旅行できた気分です。
勘違いでクスっととる中国的笑いのセンス。他国が真似る中国的イントネーションが脚色ではなく本場では一層だったこと。側面でもいろいろと楽しめました。
新鮮な展開が多くて、リメイクだそうでオリジナルは観てませんがストーリーが同じでもこれは違う映画だなと確信させるほどのオリジナリティにあふれている気がします。
不思議なのは上映しているシアターが少なかったこと。中国で記録的なヒットとなって名作なのが明らかなのに。おそらくそのあたりには複雑な事情がからんでいるのでしょう。事情通になりたいとも思いませんが、一般的な観客はよい作品をみたら「よかったよ」と言っておけばよいのだと思います。
ということで「よかったよ」。