「ドラッグ文化の功罪」シド・バレット 独りぼっちの狂気 MANUさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラッグ文化の功罪
映画が始まり、俳優を使ったイメージパートをブリッジに、彼の生い立ちに合わせて関係者の証言が続いていく
気になったのは、そのイメージパート
BGMが「Shine on you crazy diamond」なのだ
もちろん、PinkFloydから入った私はこの曲の意味は知っている
しかし、Pink Floydに頼りすぎだという偏向イメージをもたせるものだ
思えば映画の和訳タイトルも「一人ぼっちの狂気」としている
原題は「Have You Got It Yet?」であり、狂気のかけらも何もない
そう「狂気」はPink Floydの代名詞だ
(まぁ、アルバム「狂気」も原題のかなり無理やりな意訳になっているが)
しかし「Shine on」も「狂気」も音楽としてはシドは関わっていない
シドの半生を探るのには最初期のPink Floydは良いとしても、ヒット作にあやかるのは…
と、相変わらずのへそ曲がりぶりを感じながら映画を観ていく
学生時代のエピソードから、バンド初期の創作活動
ライブの様子などを貴重な動画で観ていると、彼の才能にしびれてくる
こんな感覚に浸れるならドラッグ文化も捨てたものじゃないとさえ感じる
(60年代に英国で育っていたら私も染まっていたかもしれないとさえ思える)
絶頂期から混迷期へ
そして破綻
やはりドラッグはダメだ、触れないでよかったと思える
残されたメンバーや知人たちが振り返る姿
もちろん、今になっての美化はあるだろうが、なんとかソロアルバムを完成させようとする仲間たちの姿や、ヒット作のあとにあえて自己の内面をつらつらとつづるロジャー。ウォータースの姿
ここでやっと「Shine on you crazy diamond」が活きてくる
ある意味、このインタビューまでこの曲を封印していたら、さらに劇的にこの曲が作られた「その時」を衝撃的に味わえたかもしれない
すでにそのストーリーは様々な文献で知っていたにせよ、シドの歴史をなぞったうえでのロジャーの想いに触れることは涙なしに居られない
シドが居たからこそのPink Floydだということを改めて感じる
それにしても、パパラッチはなんて残酷なんだ