国宝のレビュー・感想・評価
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吉沢亮をはじめとする俳優の演技、原摩利彦・井口理の音楽、圧巻
原作小説のファンです。本予告映像が良かったため期待して観ましたが……
期待を超えました。
あの長い小説を、映画として完成させたことに感激。
脚本、俳優、映像、音楽、どれも本当に素晴らしかったです。
主演の吉沢亮さんは、これまでにも出演ドラマや映画を観てなかなか良い俳優だなとは思っていましたが……こんなに素晴らしい俳優だったとは。喜久雄を演じる吉沢亮ではなく、喜久雄としてそこに在りました。
月光のような光を放つ喜久雄……圧巻の演技でした。
横浜流星さんら、他の俳優達の演技も非常に良かったです。
主題歌も、この映画を完成させる欠かせないピースとなっていました。
原さんの創る音、そして、King Gnuの井口理さんの歌声は、男でも女でもなく、時に美しい化け物ともいえる女形そのもののようで……畏怖の念を抱くほど。あの『国宝』を包み込む音楽が、歌舞伎の世界と一体になった喜久雄でした。
ひとつの道を究めようともがく人間の、美しさと恐ろしさ……あっという間の3時間です。たくさんの映画ファンに観てもらいたい作品になりました。
「バケモン」映画生まれる
ネタバレ注意
先に言うが、今回のレビューは3000字を超え
言わば大学のレポートのような感想となっている
それと同時にネタバレを語ってしまっている為、
見た人とこの作品にとてつもない衝撃を受けた人に
ぜひ読んでほしい。
自分がこの作品を一言で表すなら「バケモン」である。
それ以外にこの作品への表現が見当たらない。
ここ数年映画の表現の偉大さに取り込まれ、
衝撃を受けた作品は何本もある。「ヤクザと家族」「ある男」「正欲」「ラストマイル」これらは個性・特性が
とてつもない力が込められており、どの作品も素晴らしくその中でも1番を決めることができない。
私にとってそんな影響を受けた作品はここ数年で何本も出てきた訳であるが
「国宝」という存在を目の前にした以上他のことが考えられなくなったり、映画が終わって明るくなって数分間座席から立てなくなる程の虚無感を与えられた。
この表現が正しいかどうかは自分でも決める事ができないがただ、そう表現するのが適切かもしれない。
そんな感情になる程国宝という作品は主人公「立花喜久雄」の人生をバケモンのように描いていると私は考える。
何故「バケモン」と表現しているのか
それは喜久雄と俊介が初めて人間国宝 小野川万菊による
演目「鷺娘」を見た時に放ったセリフに
「バケモンや」、「バケモンでも美しいバケモンや」という
言葉を2人から出たのである。
そうしたように人間国宝の影響から2人の人生はとてつもない壮絶な時を過ごすのであった。
だからこそ私はそのフレーズを当てはめてこの作品への感想と賞賛を語りたい。
そして血の繋がらない兄弟以上の関係となっていく
「喜久雄」と「俊介」
この2人の織りなす生涯は観客の多くを魅了していき、かくいう私自身はとてつもない衝撃を与えたのだと感じる。
その上で私は吉沢亮と横浜流星にとてつもない賞賛を送りたいと思う。冗談抜きで2人の俳優にとっての代表作だと確信を得ただろう。
吉沢亮と横浜流星
横浜流星は以前から「ヴィレッジ」、「正体」など
藤井道人監督作品にエースのように活躍していき、
私自身も彼が大好きになった。
だからこそ「国宝」のメインキャストに横浜流星の名が見えた瞬間「あっ、これは間違いない作品だな」とキャスティング発表から期待がとてつもなかった。
だからこそ楽しみでしかなかった作品でもあったが、彼の表現や存在感は前評判の想像を遥かに絶していたと今になって考える。
上方歌舞伎の名門の御曹司として生まれた俊介にとっては喜久雄との出会いが壮絶な人生への歯車になっていった。次第に兄弟のような関係性として互いに歳を歩んでいったが、喜久雄の「バケモン」のような表現によって人生が目紛しく変わっていっただろう。そうした中で横浜流星という俳優は穏やかでありつつも怒涛のような演技をしていき、これからも敬愛せざるを得なくなっただろう。
そして吉沢亮
私が思うには彼の代表作に間違いなく名を連ねると確信し、彼の役者人生に大きな影響を与えたのではないかと考える。
私にとって吉沢亮のイメージとしては
「キングダム」や「なつぞら」など良くも悪くも「イケメン俳優」のような軽い印象しか持っていなかった。カッコいいのは間違い無いが、これまで彼の演技に心を打たれたことはあまり無かった。そして昨今でいえば彼自身のトラブルによって俳優生活に大きく影響を与えてしまっただろう。この後公開される「ババンババンバンパイア」も事件の当初で延期になる程「何やってるんだよ」としか思えなかった。ただ穏便に終息していったことによってこの作品も何とか公開にありつけたが、
だからこそ「国宝」という作品は間違いなく彼の名声を取り戻すチャンスであり、それ以上に彼の役者人生に影響を及ぼす作品でもあるだろう。
私がそう思える以上に彼の演技ないし表現は
タイトルの「バケモン」に当てはまることができ、この作品の圧倒的さを決定付けるものだったと感じている。
15歳半ばで父親を抗争で亡くし、母親を原爆の後遺症で亡くすという青年期から壮絶さを物語っていた喜久雄という主人公は次第に上方歌舞伎の名門に引き取られ、歌舞伎の世界に徐々にのめりこんでいく。最初は歌舞伎の素晴らしさに影響を受けながら表現のスキルが上達すると共に、人間国宝小野川万菊の出会いを契機に歌舞伎役者ないし自分自身の人生が目紛しく発展していく。いつしか兄弟のように歩んできた俊介の人生を狂わせる程の「バケモン」となっていっただろう。そうして彼は歌舞伎役者の血がないことをもがき苦しみ、いつしか悪魔と契約するほどの絶望の時期を迎えることになっていった。
再三言ってしまうが吉沢亮ないし立花喜久雄という人間の人生は「バケモン」であり、見る者の多くに衝撃を与え、飲み込んでいく。
そんな彼の生涯を描いた「国宝」という作品は
他にも「バケモン」と表現できる点がいくつも
あるだろう。
歌舞伎
本作の舞台でもある「歌舞伎」そして
「100年に1本の壮大な芸道映画」というキャッチフレーズはこの作品を表現する唯一無二の言葉であるが、私自身は歌舞伎を生で見たことがなく、数々の歌舞伎役者の活躍があるなどそんな軽いイメージしかなかった。そんなイメージしかなかったからこそ歌舞伎の表現ないし歴史は何百年、何万もの人によって作られていき、私も今日はじめて歌舞伎の世界を目の当たりにする運びとなっただろう。
「藤娘」「二人道成寺」「曽根崎心中」「鷺娘」
これらの演目は喜久雄にとっても俊介にとっても生涯に避けることのできない影響を与えたものである。2人の人生を壊していき、繋いでいき、そして国宝へと導いていった演目であるのだと心から思う。同時に歌舞伎を知らないからこそ私と同じように初めて触れる多くの観客がこの作品を通じて「歌舞伎」の壮大さや素晴らしさに魅了されたのだと間違いなく言える。
劇音楽
この作品を語る上で外せないのが、劇音楽であるだろう。端的に言ってしまえばこの作品の魅力を何よりも表現したのが劇音楽であり、この作品の壮大さを表現したのも劇音楽であるだろう。これらは作品自体を唯一無二の存在に仕上げてゆき、一つの芸術として作りあげていったのだろう。立花喜久雄と大垣俊介という2人の人間の壮絶な人生を完璧に表現していき、見る者多くの感情を乗っ取ったかのような音楽でもあったと何度も考えてしまう。
そうして「国宝」という作品を語る上で外せない劇音楽はエンディングテーマとして原摩利彦・井口理による「Luminance」で締めくくる形となった。
私自身の話になるが昔からking gnuが大好きで何度もライブに行くほどのファンであるがこれまでking gnuないしMILLENNIUMPARADEがエンディングを務める作品が何本も世に放たれていった。
昨今でいえば名探偵コナンや呪術廻戦などアニメ映画のテーマを担ってきたが、私にとって最も影響を与えたのは「ヤクザと家族」のEDのFAMILIAだった。冒頭にも名を載せたこの作品は「山本賢治」というヤクザの壮絶な人生を描いた内容でもあり、儚いエンディングと共にこのFAMILIAが流れた瞬間、2度と感じる事のできない感情に襲われたのだった。
だからこそ今回「国宝」という作品のエンディングに井口理が参加することで期待が更に上がったと共にエンディングに入るまでの約3時間の衝撃、そして井口理の唯一無二の歌声で作品が締めくくられることとなった。
だからこそこの作品の劇音楽ないしエンディングテーマは他の作品と似たようで似つかない
「バケモン」とも表現できるのだろう。
改めて音楽を担当した原摩利彦そして井口理に賞賛を送りたい。
映像
ここまでとてつもない長文でこの作品を可能な限り語ってきたが、最後に語りたいのは
「映像」である。これこそがこの作品を「バケモン」と語る1番の由縁であり見る者の多くを飲み込み、私自身もとてつもない衝撃を与えた要因の大部分にこの「映像」が当たるだろう。
「国宝」が織りなす映像美はどの作品と比べても唯一無二の存在であり、一つの芸術作と表現するような完備な仕上がりとなっていたと感じる。
映像美こそ本作の素晴らしさないし恐ろしさでもあり、「歌舞伎」「舞台」「背景」などと簡単には説明できないほどの圧倒さを持っていたと思う。だからこそこればかりは上手く表現できない感想でありつつ、それと同時に私自身の衝撃は見た人によって捉え方や感じ方は大きく異なっていくが、間違いなく感動や衝撃をこの映像によってもたらされるのだと何度も考えてしまう。最後に監督を務めた李相日、撮影のソフィアン・エル・ファニ、美術の下山奈緒をはじめとした「国宝」を作り上げた全ての関係者にとてつもない賞賛を送りたい。
「国宝」という作品は間違いなくこの数年での衝撃や影響を与えた作品に名を連ね、毎年良く私は1年間で映画館で見た作品ランキングでは今年の一本となっていくだろう。
現に見終えた数分後に翌日分のチケットを買ってしまったもしかしたらここまで語ったように捉え方や感じ方は明日になれば大きく変わるかもしれないが、この作品を見終わった数分間席を立つことができず、虚無感を与えられ、そして何よりもこのくらいの文量になる程の影響や衝撃を間違いなく受けた。
だからこそこの作品を私は改めて
「バケモン」のような作品が生まれたと感じる
美しく残酷で脆い芸事の世界で生きるということ
悪魔と取り引き
大作。演目は予習が吉。
大作。これはスクリーンで観てほしい。約3時間を短く感じることはなかったが、内容はずっしり。事前告知で窺い知れたあらすじのその先の人間ドラマが凄かった。
青年期の二人が思った以上に重責を担っており、吉沢亮・横浜流星へのバトンタッチが見事だった。私は黒川想矢の演技は怪物以来、越山敬達はぼくのお日さま・天狗の台所以来。着実に力をつけているタイプの違う若手で、選ぶ作品が良い。次が楽しみ。
キャストはご承知の通り脇もがっちり固まっていたが中でも田中泯の存在感は突出している。
歌舞伎を知らなくても楽しめるが、公式でも紹介してくれていた劇中の演目をさらっていった方がより理解が深まると思う。
メインの二人がこの映画のためにどれだけの準備を重ねたのか、終盤の鬼気迫る曽根崎心中は忘れられない。
この映画を背負って立つのはもちろん吉沢亮であり最後まで素晴らしかったが、血筋を背負ってしまったことによる俊ぼんの葛藤とクライマックスのあの演技を見て、横浜流星が支えなかったらこの話は成り立たなかったなと感じた。
歌舞伎のみならず日本の伝統芸能に潜む、血の滲むような努力と人間の業を垣間見たような気にさせられた作品。
無事世に出てきてくれて良かった。
歌舞伎って面白いんですね
うつくしさよりも生々しさが印象的
原作未読、歌舞伎はハマるの怖くて敬遠、だけどべらぼうの横浜流星さんと、PICUの吉沢亮さんのとりあわせに惹かれて鑑賞しました。
公開後初の土曜日朝一の上映回で、150席のシアターがほぼ満席。老若男女、偏りなく来てはる感じでした。
・ほぼ3時間な上映時間はやはり長い…久々に映画で腰が痛くなりました。
それでも尺が足りない大河ドラマなので眠くはなりませんでしたが、原作を端折ってるんだろうなーって脚本の飛躍具合にはところどころ混乱しちゃいました。
・子役で演じる時代の描写が長くて意外に思いましたが、「怪物」が大好きなので、黒川くんの活躍には、おお…!と内心で拍手喝采でした。
・吉沢さんのお顔はひたすら整ってる感がつよいので、黒川くんが育って吉沢さん、ってのがあまりしっくり来てなかったのが、どさ回り時代の喜久雄が屋上で酒瓶呷って踊るあの場面で、急にすとんと腑におちました。幼いころの面影が…!って。
・一番印象的だったのは、紆余曲折を経てからの二人道成寺。
二人揃って一度どん底を味わってからの、蓮の花みたいに絢爛で華やかな舞台が眩しくて。なのに引き映像での美しさよりも、多用される役者のアップでお白粉や口紅の下のなまなましさの方が前面に出てくるところの業の深さというか。
・自身の嗜好的には、悪魔に魂を売って芸を極めていく喜久雄に、名跡も家族も何もかもを奪われていく感のある俊介の悲哀の方がぐっときてしまったのですが。
御曹司のぼんぼんで周囲には愛されていて、それでも本物の役者になりたいと足掻いてしまって、一つの境地に辿りついたかと思ったら舞台に立つための脚も命も奪われていくのほんと残酷で。
横浜さんがインタビューとかでお話になってる重心の高さ、ノーブルな人品のよさが出ていて改めていい役者さんだなあ、と思いましたのこと。
・役者さんでいうと三上愛さん演じる芸妓・藤駒のうつくしさと業がツボ。高畑充希さん演じる春江との関係が昨年の大河での定子と彰子の関係も彷彿とさせられてしまいました。
・総じて、役者のみなさんの演技や衣装やセット、画面のうつくしさや生々しさが興味深かったですが、主題というかストーリー展開には???が多かったので、原作読んでみようかな、と思いました。
うつくしい。
まず出てくる感想は、「傑作だ!」。
本作品、1960年代の長崎から始まり、大阪に舞台を移して2014年のラストまでの約50年間を描く大作。もちろん上映時間も175分と長い。
観る前は、その長さがちょっと不安だったのだが、まったく問題なし。
あっという間の3時間だった。
****
とにかく映像がきれい。特に歌舞伎の舞台を撮った場面は素晴らしい。
この美しい映像がこの作品の肝でしょうね。
そしてその美しい映像に映える吉沢亮のきれいな「顔」。
この作品、吉沢亮でなければ撮れなかっただろうな……
横浜流星も超絶イケメンだけれど、女形の姿では、吉沢亮の存在感が圧倒的。
登場人物のキャラ的には、配役が逆でもよかったのかもしれないが、女形の姿の美しさを見たら納得。素晴らしかった。
そもそも、この作品のテーマの一つは「美しさ」だと思う。
「美しさ」に魅了された人々が紡ぎだす狂おしいまでの物語。
吉沢亮演じる主人公、喜久雄は、実は劇中ほとんど感情の動きを見せない。
彼の感情が大きく動くのは、その尊厳が脅かされるときに示す激しい「怒り」と、「美しさ」に対する強い憧憬だけだ。
それ以外の感情はほとんど描かれない。
彼を突き動かしているのは、「美しさ」に対する強い衝動だけだ。
その衝動が、彼自身と彼に関わる人々の運命を翻弄してしまう。
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物語の本筋は、吉沢亮と横浜流星が演じる2人の歌舞伎役者の人生をなぞるように進んでいく。
そこに横糸として織り込まれるのが、歌舞伎に関わる女性たちの物語だ。
寺島しのぶ演じる歌舞伎一家のおかみは、歌舞伎役者の妻であり母である立場で、運命の荒波に翻弄される。
この役も、寺島しのぶだからこそ、という快演だった。
おそらくは制作陣が歌舞伎一家の彼女を敢えてキャスティングしたのであろうが、見事に奏功していると思う。
妻であり母である彼女を襲う運命を見事に演じている。素晴らしい出来だ。
また、吉沢亮演じる喜久雄に関わる4人の女性たちも、歌舞伎役者である彼に関わったがゆえの運命の転変に翻弄されていく。
物語の終盤で、数十年ぶりに父である喜久雄に出会った娘のアヤノが口にした言葉がそれを象徴している。
「あなたはどれだけの人々の犠牲のうえに、今の地位に立っているのか」
しかしそれは、「美しさ」で人を魅了するためには避けられないことだった。
だからアヤノは言う。
「でも、歌舞伎役者花井半次郎(喜久雄)の演技を観ると、突き動かされるように全力で拍手を送ってしまう。……お父さん、本当に日本一の歌舞伎役者になったんやね」
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吉沢亮と横浜流星の少年時代を演じた2人の役者にも触れないわけにはいかない。
黒川想矢と越山敬達だ。
黒川くんは、「怪物」で主人公を演じ、その後も映画やドラマの出演が続く注目俳優。
この映画でも素晴らしい演技を見せていた。
女形の美しさでいえば、吉沢亮に引けを取らない。
末恐ろしい才能だ。
越山くんは、『ぼくのおひさま』で主演を務めた、こちらも注目俳優のひとり。
正直、背が高くなって感じも変わっていたから、同じ人物と気づかず、映画が終わってから調べて初めて分かった。
でも、後から納得。あの瑞々しい演技は得難い才能だ。
ちなみに『ぼくのおひさま』は、昨年観た映画のなかで僕の一押しの映画だ。
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間違いなく、今年の邦画の1,2を争う傑作だ。
映像美はもちろん、物語も秀逸。
一番のクライマックス、歌舞伎「曽根崎心中」のラストを描いた場面。
自然と涙がこぼれたし、劇中の歌舞伎の観客と一緒に、思わず拍手を送った。
映画を観ることの醍醐味を味わわせてくれる素晴らしい作品です。
見応えのある圧巻の映画だった
3時間の長い映画ではあるが、最後まで見応えのある映画だった。原作は読んでいないけれど、吉田修一と主演のイケメン2人につられて鑑賞。歌舞伎の女形を演じるのに吉沢亮は適役だ。綺麗な顔立ちが際立った。
まずはかなりの尺を歌舞伎の実際の演技に費やしている。それが歌舞伎には素人の私のレベルには、充分な見応えで、彼らがどれだけ修練したかが伺えた。
そして,テーマである血と才。梨園は血筋が全てと誰もが理解してるし、それゆえに、才能がない息子が産まれたらどうするのかなどと一般人は思ってしまう。とはいえ物心ついた時からずっと修行しているその年月と背負ってきた伝統の重みは簡単には裏切らない。ただ,圧倒的な才能の前には負けを認めざるを得なかった。映画は長い年月の2人の浮き沈みを描いていく。ヨメない展開に引き込まれる。全てを捨てて歌舞伎に向き合った男が手にするラストに涙が出た。
そして,この映画を1番支えたのは、田中泯の演技だったと思う。素晴らしかった。
歌舞伎の悪魔を憐れむ歌
李相日× 吉沢亮×横浜流星「国宝」血筋を重んじる歌舞伎の世界に人生の全てを賭けた男の物語。ロバート・ジョンソンはブルーズのためにクロスロードで悪魔に魂を売ったけど、吉沢亮演じる喜久雄は長崎の冬の夜に父の最期を見た時すでに芸の悪魔と契約していたのかもしれない。
終盤の壮絶な「曽根崎心中」のシーンである人物がつぷやく「こんな風には生きられないな」のつぶやきは映画を観ている人たちの代弁とも言えるけど、ひょっとしたら李相日の思いかもしれないなと考えたりしたな。
あと、吉沢亮と横浜流星は当然素晴らしくておそらく映画賞レースを席巻するんだろうが、この2人を喰う存在だったのが人間国宝を演じた田中泯で、その色気と悪魔性が混在する佇まいは圧巻でした。
傑作
「圧倒される」とはこのこと
至極の超最高傑作! これ以上の作品にはもう出逢えないかも知れない!
こんな日が来るとは思わなかった思いです。
総てに於いて本当に素晴らしい~ の一言。
圧巻のアッと言う間の175分でした。凄すぎましたわ。
今日は期待の一作「国宝」の鑑賞です。
感動の波動域がかなり高くずっと続いており、観ているこっちもアドレナリンが出っぱなし。見終わった後も感動域が深すぎて元に戻ってこないです。
観た後に車の運転したんだが、こんな運転ヤバく成るの初めてかも。
映画鑑賞直後は お茶でもして心情が落ち着くまで待った方が良いですネ。
興奮冷めやらずです。
また映画の評価指標は★5までなのに ★6枠いる事態になって
本日以降、評価基準を変えないとイケない事態に突入だわ。
という事で、ハシゴでまだ観る予定作全部キャンセルして
レビュ-書いてます。 (こんなの初めて (。・ω・。) )
原作:吉田修一氏 「国宝」
監督:李相日氏
脚本:奥寺佐渡子氏
主題歌:原摩利彦 feat. 井口理 「Luminance」
---------素晴らしい役者陣------------
・立花喜久雄/(花井東一郎)役:吉沢亮さん
・喜久雄(少年期)役:黒川想矢さん
・立花権五郎役(喜久雄の父、任侠組長で殺される):永瀬正敏さん
・立花マツ役(喜久雄の継母):宮澤エマさん
・彰子役(吾妻千五郎の娘、喜久雄の妻):森七菜さん
・吾妻千五郎役(彰子の父、大物上方歌舞伎役者):中村鴈治郎さん
・藤駒役(京都花街芸妓、喜久雄の愛人):見上愛さん
・綾乃(カメラマン、藤駒と喜久雄の娘)役:
・大垣俊介/(花井半弥)役:横浜流星さん
・俊介(少年期)役:越山敬達さん
・花井半二郎役(俊介の父):渡辺謙さん
・大垣幸子役(俊介の母):寺島しのぶさん
・福田春江役(喜久雄の幼馴染み、俊介の内縁の妻):高畑充希さん
・梅木役(歌舞伎の興行会社三友社長)嶋田久作さん
・竹野役(三友社員):三浦貴大さん
・小野川万菊役(人間国宝の歌舞伎役者):田中泯さん
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歌舞伎と言えば女形。
この女形を巡って行く 歌舞伎役者の舞台の表裏世界の話。
長崎の新年会の席で、立花喜久雄は出し物の女形を披露し 来ていた花井半二郎の目を惹いた。所がその席で任侠の父が抗争で目の前で殺される。復讐に行くが失敗する喜久雄。一年程は世間とご無沙汰だったが、父の死後行くところは無し。
世話役の人に連れられて来たのは大阪 歌舞伎役者・花井半次郎の家へ。
喜久雄が女形の才能を持っていた事が半次郎の記憶にあったからだった。
そこで半次郎の息子 俊介と共に必死に稽古に明け暮れて、やがて初舞台を踏む時が来る。人間国宝の小野川万菊にも出逢う事があり その事が後に彼を助ける事になるとは この時の喜久雄は思いもしない。
兄弟のように育つ二人だが、自分には俊介の様な名門歌舞伎役者としてのお家の血筋が無かった。この事がどんなに半次郎の亡き跡目を継ぎ三代目を世襲しようとも
周囲が許さなかった。そして週刊誌が彼の生い立ちを書き立てる。
歌舞伎役者として窮地に陥る彼は 役が欲しくて吾妻千五郎の娘に近づいて結婚するが激怒され梨園を去ってゆく羽目に。
二人は放浪しながら各地の宴会場で女形をして日銭を稼ぐ生活に。
片や俊介は 自分の幼馴染の春江と一緒になり息子がいる。
8年の放浪から家に戻り周囲からも認められていく俊介。
一方 自分には花街芸妓との間に娘の隠し子。
妻との間に子は無し。
梨園から遠ざかってゆく彼であったが、彼を救う手が やがてやって来る。
それが 死にゆく前の万菊である。
彼の一言で、喜久雄は梨園に戻って来た。俊介との再会し、
もう一度 あの歌舞伎の輝かしい舞台(二人道成寺)を 二人で演じる。
世間が二人の復活を待ちわびた日でもあった。
しかし、やがて俊介は糖尿病悪化で足を切断しないといけない羽目に。
苦悩する二人。 しかしその運命から逃げる事無く二人は舞台(曽根崎心中)をやってのけます。そして俊介の死。
あれから16年。白髪になった彼。俊介の息子も歌舞伎界で立派になり。
喜久雄は若くにして ”人間国宝 歌舞伎役者” に成る。
記者会見の日、そっと近づく一人の女性のカメラマン。
彼女は喜久雄の隠された娘であった。しかし出逢って直ぐに名前を当てる彼。
父としては憎む相手ではあったが、舞台を観る彼女は歌舞伎役者として彼を認める存在でもあった。
”悪魔と取引したけど 立派な歌舞伎役者に成れた”
それは一言では言い表せられない程の 犠牲と、後悔との引き換えの道であったであろうと思う。そこに 一筋に役者として生きて来た証があった。
人間国宝としての彼の舞台 (鷺娘)が最後に上演される。
そこに舞う沢山の紙吹雪。その中に 彼が観たかった景色があった。
それは 父の最後を見た時の景色と重なる。
きっと家族への忘れられない深い想いが
そこに在ったのだと感じます。
只今、絶賛公開中!
これは映画館で観るのお薦め。
是非 今の内に
劇場でご鑑賞下さいませ!!
ザ 歌舞伎
大きいことを描くのに必死で、小さなことを疎かにしがちな印象を受けた
大味な出来事の羅列であり、キャラクター主体の映画ではない。主人公が主体性なく状況に翻弄されて終始転がされてばかりいる印象を受けたけど、それも歌舞伎という由緒正しいしきたりや世襲から逃げられないでその道で生きていくしかない仕える身としての雁字搦めを体現しているのだろうか?つまり、"細部に魂は宿る"というように、本当に映画として大切なことが蔑ろにされているような。全て凄いクオリティなのに、どこか薄い。
撮影が凄いし、映画としてのクオリティは否定しようがなくて観ていられるのだけど、それに惑わされることなく観ると展開先行じゃないかみたいな印象。梨園を描くという大義のうえで、敢えてそういう選択をしたのかもしれない。人間そのものを描くというより梨園や象徴する伝統芸能の世界を描く。本作でしたかったこととしてそれで正解なのかもしれないけど、「人間ってこうだよね」的一般論みたいな、大文字・大枠な展開での転がし方ばかりで進んでいる気がして、"喜久雄だから(こそならでは)"みたいな個性となるものをあまり感じられなかった。
もちろん2人のキャラは青年期以降に見えてくるけど、少年期パートが総集編みたいに薄くて、その後も長い年月を描く伝記映画ありがち"濃いのに薄い"を地で行くような印象を受けた。
李相日✕吉田修一。代わる代わる豪華キャストが顔を出すけど結局のところ、吉沢亮も横浜流星2人による、役者の力。イメージングシステムなど巧さはあるものの、李監督のあの否定できない力強さみたいなものが、本作ではあまりに大きな外枠や形式に囚われすぎて希薄だったかも。
血と才、家と芸。美しい顔に自分が食われるさまをよう見とけ。本物の役者になりたい、日本一の歌舞伎役者に。いつも誰かがそこから見ている芸事を極めるうえで、悪魔と取引。つまり、綺麗事だけじゃやってられない。主人公2人の間で、『時計じかけのオレンジ』みたいに同じ展開が繰り返される構成。天国と地獄。嫌になっても、憎くてもやめられない、それでも舞台に上がるしかない愛憎渦巻く厄介な思い。好きや楽しいだけでは続けていけない、一筋縄では行かないもはや執念みたいな。守ってくれる血がほしい、お前の血をコップに入れて飲みたい。嫉妬と友情、というより戦友。そして、赤。見たかった景色に辿り着くまでに払った多くの犠牲、その上に成り立った成功("順風満帆"否定せず安牌「ひとえに皆様のおかげ」発言)。
女性の仕事。寺島しのぶであることに否が応でも感じてしまう必然性。そして、日本でもちゃんとインティマシーコーディネーター。
P.S. あと、糖尿病は遺伝するものだと初めて知った。
勿体ないと感じた。
注意点としては、結構ガッツリ目に濡れ場があるで家族や友人とは見ない方が良いと思います。個人としてはこの点がもっとも冷めました、歌舞伎には詳しくありません。だからこそ日本の文化を感じられると思って見たのですが、男女の関係を示すのに濡れ場で表現するのは勿体ないと感じました。歌舞伎のシーンや演者の葛藤シーンは本当に感動しましたが。登場人物の訳のわからない行動にも、は?とさせられて後半は感動も薄れてしまいました。まず、春江が急に喜久雄を裏切ったのか?俊介に惹かれていたとしてもクズ過ぎる。俊介も突然戻って来て「息子の為だ」仕方ないみたいな感じも癪に触るし、両足切っても同情出来なかった。春江が終始開き直ってる感じも胸くそ悪い。藤駒の娘も最後に父親と思った事はない、と言っていたのに喜久雄の芸に感動してお父さんって呼ぶシーンには?が止まらなかった。俊介が失踪した中、芸で支えていた喜久雄に対して幸子は泥棒呼ばわり。挙げ句の果てに喜久雄に役を演じさせない始末、情は無いんか?登場人物で良かったのは、竹野と彩子ぐらい。あとは、万菊の雰囲気で保てた情緒でした。人間性を生々しく表現したのは、良いと思いますが…年月も飛ぶしイマイチ最後は簡単に国宝になってて、ご都合主義が際立ってしまっていた気がします。吉沢亮や横浜流星の演技はとても素晴らしかったです。個人的な意見なので賛否両論あると思いますが、予告で期待値が上がり過ぎました。
気の遠くなるような紆余曲折を
「順風満帆」の一言で世間がまとめてしまえるようになるほどの時間を経て、追い求めた目標だけが達成される物語。
「国宝」というタイトルはそうやって他の全てを失い続けてたどり着いた場所の名だと思う。
純化された強い意志をもって突き進むスタイルは当作品そのもののあり方と同じで、近年あまり見なくなった(それが悪いとは思わない)演者と制作側の強烈な熱量というものを感じられる傑作。
※気になった点
〇吉沢くんと横浜くん、メイン2人のビジュをもう少しはっきり差別化してほしかった……。一瞬「これどっちや?」となる場面があまりにも多かった。
〇身も蓋もないけどドラマ尺で見たかった。一つ一つのイベントについてこちらが引きずったまま話が進んでしまうし、通しで見せられると「この辺でまたトラブル起こるやろなあ」とパターン読みしてしまう場面が出てくる。
〇一つ一つの演目に意味を持たせるなら、演目を実際に字幕で出してしまうんなら(カットの中で自然にポスターや看板を見せることは可能だったはず)その概要も書いてしまった方が良かった気がする。
当方歌舞伎についてほとんど無知なので申し訳ない。
〇「いい演技」の説得力は正直ない。ぶっちゃけ「これちゃんと詳しい人が見たらめっちゃ不評なんじゃ?」という不安が常に付きまとう。
血のつながり
濃い3時間
没入してしまって歌舞伎のシーンが終わると拍手しそうになってしまった。
実の子の方が可愛いに決まってる!
お互いに歌舞伎から逃げたけど、やはり芸しかないと言うこと。
若干人生を語るのには雑な部分はあったけど、
演技がカバーしていた。
吉沢亮が美しすぎました。
TCXで見れてよかったです。
美しいお姿のクリアファイルでもないのかなぁと探しましたが、売ってませんでした。
これは映画館で見るべき、家じゃ見れない。
ありがとう、国宝
長さを感じさせない力作
長崎のヤクザの家に生まれた喜久雄は15歳の時に新年会を襲われた抗争で組長の父を亡くし、組も解散し、天涯孤独となってしまった。その宴会で喜久雄の踊りを観て才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎は抗争の1年後、彼を引き取り、喜久雄は歌舞伎の世界へ身を置くことになった。喜久雄は半二郎の息子・俊介と同級生で、兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていった。そんなある日、交通事故で入院した半二郎が自分の代役に息子の俊介ではなく喜久雄を指名した。その舞台を見事に演じてた喜久雄を客席で観ていた俊介はその場を逃げ出してしまった。その後の2人はどうなる、という話。
まず、新年会にあんなに簡単に親分の所まで押し入られちゃいかんだろ、とは思ったが、刺青の歌舞伎役者というストーリーは面白かった。
舞台や衣装など美術は素晴らしかった。予算使ってるなぁ、と感じた。
歌舞伎って大阪にもあったんだと知れたし、曾根崎心中の中でお初の右足への頬擦りシーンは印象に残った。
喜久雄役の吉沢亮、俊介役の横浜流星とも歌舞伎の演技が素晴らしく、見入ってしまった。半二郎役の渡辺謙、半二郎の妻・幸子役の寺島しのぶもさすがだったし、喜久雄の元恋人で俊介の妻になる春江役の高畑充希は演技は良かったけど、歌も踊りも披露できず、なんかもったいない感じ。
見上愛も出てたし、森七菜は変わらず可愛かった。
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