劇場公開日 2025年6月6日

「発想が腐女子」国宝 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 発想が腐女子

2025年12月11日
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李相日×吉田修一が苦手でスルーしていたものの、今回プロ脚本家が参加した意味を信じて劇場へ。
その甲斐はあってか、渇いてユーモアのある関西弁のセリフは良かったと思うけど、肝心な部分が裏になっていたり、ドラマがよくわからない。
直近に観た「アマデウス」(リバイバル)もそれなりに上演パートがあったけど、だからって描写の過不足はなかったけどなー。

3時間あったらジャンル映画が2本観られるだろうし、少なくともその間はハラハラドキドキ、強制的に心を揺さぶってもらえたはず。そう思ってしまうせこい人間は、この映画に向いてないんでしょうねぇ。。
しかし観てる間じゅう登場人物に対してむごい、かわいそう、と思わされる瞬間がほとんどなかった。「覇王別姫」を狙ったんだとすれば、端的に追い込みが足りなくない?
あと主演は吉沢亮だと思うけど、横浜流星の方がおいしい役じゃないかこれ。

吉沢亮がなんやかんやあって久しぶりに舞台に立つところ、明確な契機となる場面はなくふわーと出てくる。それが「粋」だというなら逆に、瀧内公美の最後のセリフは野暮すぎる。こちとら「悪魔」のキーワードが出た時点で察するっつうの。
田中泯の言う「きれいな顔」云々の場面も印象的だが特に回収される気配もなく。血筋と芸っていうテーマにも関係ないし、ぜんぜん女形であることの足を引っ張らない。むしろ舞台でアップばっか映るからきれいでよかったねとしか言いようがない。悪魔に気に入られるわよおめでとうの意味?

「アデル・ブルー」の撮影監督による画面作りは、舞台パートなのに顔のアップが多かったりして、よくわからない。少なくとも役者が登場する場面では舞台中継のように全体を見せてほしかった。
私が日本の伝統芸能に期待する重心移動や身のこなしのキレみたいなものはあまり堪能できなかった。
時折、メインキャストの周辺でちらっと映るおそらく本職だろう人々の立ち姿にはハッとさせられた。

途中でまじで「落語心中」かな…?と感じ始めてからの「曽根崎心中」。あれ、この作者ってもしや腐女子…?となり、終盤になってやっと、この企画の意図を理解した。ははーん、太陽がいっぱいなのね。

「落語心中」と気づいてからは、歳とって円熟期を迎えた彼の去就にがぜん注目していたけど、「落語心中」ほどの境地には至らず拍子抜け。
正直、冒頭の新年会で渡辺謙を観た時からイヤな予感はしてたけど直感は正しかったんだぜ…うれしくないぜ。
なお落語心中は山寺宏一の落語も聴けるTVアニメ版がオススメです。

ipxqi
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