「美と言う呪い」国宝 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
美と言う呪い
ヤクザの祝儀の場で、二人の少年が床の間を舞台にして芝居を演じ、幕になると二人して座敷脇の廊下に威勢よく繰り出した。人生は芝居だ! この破天荒なプロローグで、まず軽く胸を掴まれました。
◉それでも舞台に立つ
田中泯が木賃宿の薄汚れた一室で、そこに訪れた喜久雄に呟く。綺麗な物が何一つないから、心が穏やかであると。喜久雄や俊介を駆り立てた「美しさ」は、やはり重荷だったのだ。
木賃宿と言う設定には正直驚いたが、田中泯は更に言う。「周りの人をどれほど苦しめようと悲しませようと、それでも舞台に立つの」と。それは鬼気迫る覚悟であって、知らず感動もするけれど、いたたまれない。生きることの原点は、自分勝手であり自己満足が、その全てなのだ。
◉越える吉沢亮、崩れ落ちる横浜流星
野で見出された「個」である喜久雄。演じた吉沢亮は芸への想いを瞳に湛えていたが、その眼差しは情熱を越えた狂気に手が届いていた。ドサ回りで若者に揶揄われた喜久雄が暴れて、屋上でウィスキーを喇叭呑みしながら咽び泣くように笑った後、俺何を見てるんだろうな…と呟いたシーン。必死だった人間が、何かを飛び越え損ねた時、こうなるのだろう。
どうやっても抗えない「血」を持っているはずだった俊介。しかし、そこまでのDNAは生得していなかった俊介を、横浜流星は崩れ落ちるように演じた。諦めや絶望に慣れてしまった瞳が凄いなと思いました。基本、流星君は立ち上がれないダークな姿が、一番よく似合っていると私は勝手に思っています。
極道の子と歌舞伎の子の二人のライバル心が、ギラギラした刃物ではなく、展開が進むほど爽やかな景色になってきて、そこは気持ち良く時が経ったと感じました。
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