劇場公開日 2025年6月6日

「血筋についての考察」国宝 kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 血筋についての考察

2025年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

公開4ヶ月、遅ればせながら鑑賞。
興行収入はついに150億円を突破し、邦画実写映画では「踊る大捜査線THE MOVIE2レインボーブリッジを閉鎖せよ!」に迫る勢い。とはいえ邦画のベスト10はすべてアニメーション映画で、アニメの幅広い世代のマーケットには敵わない。
これだけヒットしているということは誰が観ても面白い=大衆的な映画で、観るものによって評価が異なるエッジが効いた作品が好みなのが、遅ればせながらの理由。
また、上下巻の長編小説をいかに3時間にまとめたのかを確認したかったのも鑑賞理由の一つだ。
李相日監督は原作の登場人物をバッサリ省略し、喜久雄(吉沢亮)と俊介(横浜流星)を中心とした歌舞伎の世界と舞台シーンをじっくり観せることで大成功していた。
小説の欠点は歌舞伎の世界を描きながら実際の舞台の歌舞伎は見せられないこと。逆に映画の利点は映像として歌舞伎を見せられる事だ。この最大の利点を活かし映画化したことがこの映画が幅広い世代に受けた理由であろう。
任侠出身でありながらその才能を見出され歌舞伎スターに駆け上がる喜久雄と歌舞伎の血筋でスターになるのが当然であった俊介の一世代にわたる葛藤を3時間で描き切るのは相当難しかったはずだ。
実際、喜久雄の恋人であった春江が俊介と逃亡し戻ってきてからの後半は駆け足で、俊介がなぜ歌舞伎の世界に戻れたのか、春江がなぜ俊介と一緒になったのかは唐突で、疑問に感じるのではないか。
任侠出身の喜久雄が保守的な伝統芸能の世界でもがき苦しみながら国宝にまで上り詰める人生が物語のテーマであるはずだが、エンタメ作品としてそこが薄くなったのが、分かってはいるが残念。

kozuka
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