「遅れ馳せながら拝見した悪魔」国宝 noさんの映画レビュー(感想・評価)
遅れ馳せながら拝見した悪魔
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悪魔との取引という言葉には予告編から惹きつけられました。
父親の命と引き換えに歌舞伎の門を叩き、幼馴染の恋慕と引き換えに後継の座を得て、家庭と引き換えに人間国宝の座を戴きました。
主人公が真綿を吸うようで恐ろしいと例えられるシーンがありますが、悪魔は取引相手に資格を求め、願いの成就が見えるや否やさらに多くを捧げることを求めます。つまり他ならぬ己の命です。
興を削ぐ言い方をすれば望みを絶たれて尚、芸に縋り、痛めつけられ、魅入られ、人生の情動と悲哀の全てを芸に還元する時間をこそ、芸事の悪魔は求めます。
物語の構造を書き起こせば非常に明快ですが、やはり主役は役者の演技でしょうか。
吉沢亮、横浜流星、田中泯、渡辺謙。
特に吉沢亮は歌舞伎と現代ドラマの間にすっぽりと収まるような怪演だったと思います。
随所に見られる目や肌を追うカメラアングルのフェティシズム、正に映画を見る我々そのものが悪魔となり、登場人物を品定めするのです。
だからこそ物語の終わりに彼らの命を賭した芸に賞賛を贈るのです。
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