「一つのことを極めるためには」国宝 メモリーさんの映画レビュー(感想・評価)
一つのことを極めるためには
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原作未読で尚且つ歌舞伎をよく知らない状態で鑑賞。
歌舞伎の演目のシーンは、観客席からのショットのみならず、役者の後ろ姿を捉えたショットなど様々な方向から演目を見ることができる。そのため、歌舞伎を平面的ではなく立体的、多角的に見ているという感覚に陥った。また、役者の顔や指先、足先などのクローズアップを多用することで、動き一つ一つのしなやかさや、美しさが強調され思わず見入ってしまうと同時にこんなにも歌舞伎は面白いのかと感動を覚えた。
そして物語においては、一つのこと(この映画で言えば歌舞伎)を極めるためには多くの犠牲が必要であり、その犠牲を顧みず、一つのことに全身全霊をかけて向き合った者だけが見ることのできる景色があるということを伝えたいのだろうと私は解釈した。そして私は一つのことを極めた経験がないため、あらゆる物を犠牲にする喜久雄に共感できなかった。しかしその共感しにくさが、喜久雄を孤高な存在へと押し上げると同時に彼に尊敬の念を感じざるを得ず、物語終盤の歌舞伎の演目では雲の上の存在を間近で見ている感覚に陥り、鑑賞後高い満足感と幸福感に包まれた。
非常に美しい作品だった。
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