「もっと長くても良かったかも?」国宝 satoshi hasegawaさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと長くても良かったかも?
各所で絶賛されているのには、納得の贅沢な映画でしたが、後半の駆け足感は、すでに何人かの方が指摘されている通りだと思います。主人公が人間国宝になるところを結末とするなら、もっと長くないと厳しいのかなぁ、もっとじっくり観たかったなぁと感じました。
今作の尺である2時間55分ならば、吉沢亮さんと横浜流星さんの(擬似)兄弟2人の人間関係にグッと絞り込んで描いてもすごく濃厚な作品になったのではないかなと… なんせお2人がとても素晴らしいので。
(以下、シーンのネタバレあり)
勿論素晴らしいシーンがたくさんありますが、特に、冒頭の料亭での襲撃〜父との別れのシーンが素晴らしいと思います。
父の組の敵対勢力の襲撃のさなか、少年喜久雄の才能を一瞬で見込んだ渡辺謙演じる半次郎が、少年ながら加勢しようと鉄火場に飛び出そうとする半次郎を宝物を抱えるかのように覆い被さって止める。ガラス戸越しの2人の視線の先は、雪の降っている料亭の中庭で、父がたった1人で大立ち回りを演じ、最後には敵の銃弾に倒れる。
永瀬正敏さん演じる組長である父親は、死を覚悟し喜久雄を一瞬見つめる。それはさながら一世一代の大芝居を演じる千両役者のようです。ガラス越しに目線が合う少年喜久雄は、その雪の中での父の最期を見るだけしかできない。のちの喜久雄の人生を決定づけてしまうこの情景は、悲しくもとても美しいシーンだと思いました。歌舞伎役者となり、舞台効果の花吹雪に執着することになる喜久雄の原風景は、まさにここに由来しているのだと思います。
のちに、茶屋デビューをした少年喜久雄が、見上愛さん演じる舞妓に故郷 長崎の事を聞かれ答えます。
「長崎には滅多に雪は降らない…」
それまでの喜久雄の壮絶な人生を思うと、こんな何気ないセリフも喜久雄にとって重いものだと分かります。次回は、雪と桜吹雪という重要なテーマが、映画の中でどう扱われているかに気をつけて観てみたいです。
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