「面白いけど今年一番だとかは思わない。」国宝 sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)
面白いけど今年一番だとかは思わない。
めちゃ気合いの入ったいい作品だと思いますが、少なくとも100年に一度の名作とか、そんなレベルではないですね。
世間の異常な盛り上がりようが逆に冷めます。
吉沢亮の演技は確かに鬼気迫るものがあって素晴らしいんだけど。
なんかところどころぼやけるんだよね。
主人公が中盤舞台を追われるところ、世襲制であるが故に冷遇されたのが間接的な原因だと思うけど、そのこと自体には主人公は全然憤ってる感じがない。
さらっと受け入れてしまってるというか。
これは作り手の中にもそういう感覚が全然ないんですよね、きっと。
自分はもっと怒って、抗ってほしいと思う。
現実とか、社会とか、何かしら歪んでいるものに自分の道を阻まれたとき、それを飲み込んで進まなければならないんだとしても、ただ受け入れるんでなくて、少なくとも心の中ではノーと言っていてほしい。
終盤で突然娘が出てきて、あなたは立派になられたみたいなこと言うんだけど、あそこもそう。
そんなわかったようなこと言うなと言って欲しかった。
わかりやすいやり方でなくてもいいけどとにかく否定して欲しかった。
・・・もしかして、あれは娘の言ってることが正解ってことなのか?
この映画の結論としても、なんだかんだあったけど、こうして人間国宝になって、立派になられました、良かった、なのか?
まさかね。
でもあの娘のセリフは、この映画としては肯定的な意味合いですよね。
その辺もどうも違和感がある。
様々な現実を飲み込んで、それでも芸を、その中にある美しさを追い求めた。
それはいい。
そういう話なんだから。
ただなんかそこに、なんというか、飲み込むことのネガティブさが足りない気がする。
なんか悪魔に魂売ったみたいなこと言ってたしなー。
日本の伝統芸能の話で、神社にお参りしてる場面なんだから、そこは悪魔じゃなくて鬼とかそういうのなんじゃない?
なんかいまいち、ピントが合ってないんだよなあ。
ピントがそこだけ完全にあってたのは田中泯さんですね。
この映画のテーマとして描くべきものを、一人で体現しまっていたように思います。
私はこの作品は良かったと感じたのですが1点だけ、あの娘さんの言葉は興醒めでした。おっしゃる通りわかりやすくしたかったがための言葉なのか。
原作にもあの言葉出てくるのか気になりました。
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