「吉田修一のスゴさとヌルさ」国宝 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
吉田修一のスゴさとヌルさ
面白いよね。
観てて「さすが芥川賞を獲ってからエンタメ路線に転向した作家の作品」と思ったもん。
でもグレてしまった横浜流星が戻ってきて、今度は吉沢亮が追放されてしまうあたりで「ん?」と思うのね。
なんとか吉沢亮も戻ってきて、そしたら横浜流星が足を切り落とさないといけないってとこで「んん?」と思うの。
しつこいんだよね。この作品、そこまで「こっちを苦しめます、はい、次はこっち、ついででもう一回こっち」ってやらなくても描けそうな気がすんだけど。
普通のエンタメ作家がやってるなら気にならないんだけど、吉田修一だからね。《パークライフ》で芥川賞とった。ちょっと一言いいたい。
同じことの繰り返しになっちゃってる気もするけど、みんな繰り返し好きだから、多分、いいんだろうな。
みんな、なんとなく収まるところへ収まっていくけど、森七菜が可哀想だね。
完全に利用されただけだもん。「お、森七菜でてきた」と思ったら利用されてるからね。
役者はみんな良かったけど、なかでも高畑充希よかったな。
横浜流星が逃げ出す前後の演技がすごかった。久しぶりに高畑充希を観た。
吉沢亮は、芸に精通するにつれて、色んなものを失うんだよね。
見上愛は最初から「二号さん、三号さんでいい」って吉沢亮と真剣に愛し合おうとしないし、高畑充希は結婚を申し込まれても身を引く形で断る。
この辺が不幸といえば不幸だけど、自ら望んだ不幸で、芸を手に入れたからいいんだってことだね。
最後に三浦貴大が「あんな風には、生きられねえよな」と我々を代表して言ってくれるね。
観てる間『こんなシビアな世界に身を置かなくて良かった』と思いながら観てたからね。
ラストで出てくる瀧内公美もさすが。
これだけの出番で、とても大事な台詞をビシッとやり切れるのは瀧内公美ならでは。
あと映像観てて、1970年代の日本はきれいだなと思った。
日本の勢いが衰えていない頃というのが大きそう。
それでファッションがいまとほとんど変わらないね。横浜流星や吉沢亮の衣装でそのまま令和に来ても違和感ないもん。二周回ってトレンドになってんの。
そして映画は大ヒットしてるけど、分かる。
令和の映画といったら《国宝》が挙がる作品になる気がする。
李相日監督の手腕も確かだね。
題材の歌舞伎は日本人のDNAに刻み込まれてると思うんだよね。ここを扱うと響きやすいんじゃ。
それに「芸のために全てをささげる」っていう、なんなら「芸道」の感じが、日本人はそもそも好きだった。
芸に身を捧げて舞台上で死ぬのも好き。
世襲のボンボンを叩き上げの実力者が倒す構図も大好き。
こういうのを集めて、きちんと捌く吉田修一は凄い!
でも、そういうのは直木賞作家に任せておいて、芥川賞作家はもっと文学っぽい作品を書いてくれないかなあ。なあ、修一!
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