「「上達」を観客に腹落ちさせる表現にうたれた」国宝 めいこさんの映画レビュー(感想・評価)
「上達」を観客に腹落ちさせる表現にうたれた
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見終わったあとに残っていた喉に魚の小骨がひっかかっているような違和感は、劇中で、渡辺謙さん演じる花井半二郎の役が、『曽根崎心中』のお初なのですだったこと。
謙さんが、お初を?
が、『国宝』原作上巻を読んで納得。
花井半二郎は『河庄』の治兵衛や、『廓文章』の伊左衛門のような、つっころばしと呼ばれる商家の若旦那を当たり役としている役者だそう。
坂田藤十郎さんはじめ、つっころばしの役者が、お初や夕霧のような女形を演じることは少なくない。
つまり、その芸の系譜にある人物としての花井半二郎なら、お初を演じても違和感はない。
この「見えない補助線」をひくことで、映画の中での配役に対する納得感がぐっと深まった。
舞台の仕組み、演目の背景、役者の流儀、そして歌舞伎という文化の重層性。どこをとっても濃密で、一度観ただけでは処理しきれないほど。
だからこそ、もう一度観たいと思った。
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