劇場公開日 2025年6月6日

「観る者を惹き込む圧倒的完成度:奇跡の作品」国宝 shingoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 観る者を惹き込む圧倒的完成度:奇跡の作品

2025年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

斬新

「素晴らしい作品だと噂に聞くけど、歌舞伎にまったく興味ないし、知らないしな…しかも3時間もあるし。」

自分もずっとそう思って敬遠していた。
もし同じような気持ちで観ることをためらっている人がいれば、その気持ちを乗り越えてぜひ観てほしい。
3時間という凝縮された時間の中で、壮絶な男の人生を擬似体験できる。

何も知らない自分の歌舞伎のイメージだと、おごそかで緊張感のある雰囲気、姿勢を正して静かに観る…みたいなものだと思っていて、映画自体の雰囲気もそういうテイストかなと思っていた。

だが、冒頭のシーンでそのイメージは崩された。

「え?いきなりそういう展開!?」

思わず身を乗り出さずにはいられなかったが、思い返せばそのシーンを境に物語に引き込まれていったのだと思う。

先ほど「擬似体験」できると言ったが、この作品、気づけばまるで文字通り自分がその場に居合わせているような感覚に陥るのだ。
BGMが流れ始めて、「あ、今自分は映画を観ているんだった」と我に返るシーンが多々あった。
そのくらい物語の中に引き込まれる、いや惹き込まれる、か。まるでスクリーンの向こう側の世界に行っていたかのように。(この不思議な感覚は「没入感」みたいな言葉では表しきれない)

ここまで惹き込まれる作品となっているのは、シナリオや出演者の演技、音楽、美術など、作品におけるすべてにおいて高い完成度を誇っているからに他ならない。

演技と言えば、主演の吉沢亮、横浜流星が役作りを完成しているのは言うまでもないが、人間国宝を演じる田中泯の演技には圧倒された。
これは歌舞伎を演じているシーンの話だけではない。
何でもない普通の会話のシーンがとてつもなく重みを持っているのだ。
その沈黙や間合いに、言葉以上のものが伝わってくる。まさに人間国宝。
観ている自分は唾を呑むことすらできなかった。

そして国宝のタイトルバックに合わせて流れてくるテーマ曲にも鳥肌が立った。

またシンメトリーな引きの映像が挟まる箇所も、まるで美しいスチール写真を見ているかのようだった。

登場人物それぞれの気持ちの揺れる様が、痛いほど伝わってきた。

これ以上はもうやめておこう。

本作を観終えた今、「歌舞伎を観に行こう」とまでは思わないものの、「歌舞伎についてもっと知りたい」という好奇心が自然と湧いてきた。歌舞伎に詳しい人はもちろん、まったく知らない人でも物語に引き込まれ、十分に楽しめるのは間違いない。むしろ、知らないからこそ新たな世界への扉が開かれる感覚を味わえるかもしれない。

圧倒的な完成度と深い余韻を残す、まさに“国宝”の名にふさわしい、奇跡の作品と呼ぶべき傑作。

shingo
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