「美しく、グロテスク」国宝 パジャマさんの映画レビュー(感想・評価)
美しく、グロテスク
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冒頭から、どう話が展開していくんだろうと引き込まれました。まさか極道者が歌舞伎役者になる話とは露知らず。
歌舞伎のシーンはとても美しく、緊張感があり、それでいて夢心地で、役者さんたちの研鑽の賜物だと感激しました。舞台袖に捌けた瞬間に素に戻る描写で一緒に現実に帰ってきた心地がしました。
喜久雄と俊介。どちらも歌舞伎に、役者という人生に魅入られた二人ですが、他のすべてと引き換えにしても日本一の歌舞伎役者になりたいという喜久雄の狂気がこの作品の核であり、人間国宝にまでなる所以なのかと得心がいきました。それを象徴していたのが、喜久雄の周りの女性たちでしょうか。幸子や春江、藤駒や彰子のリアリティが、時にグロテスクに感じるほどで、なによりも歌舞伎を第一にしてしまう、その才能と実力のある喜久雄の狂気を引き立てていたように思います。
また、俊介との関係が最終的にはあの形で落ち着いたことがとても印象深く思います。互いに衝突しかけては茶化し、というシーンがありますが、隠しきれない本音と、感情的にはなりきれない大人らしい振る舞いが、子供の時分から大人に囲まれ大舞台に立つ歌舞伎の世界の特殊な環境で生きてきたことの証左に思えます。
決定的な衝突の後、ほぼ絶縁状態になりますが、その後時を経て曽根崎心中を二人で演じきる姿がとても心に残りました。
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